デザイン学研究
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62 巻 , 2 号
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  • 矢久保 空遥, 田内 隆利, 久保 光徳, 寺内 文雄
    2015 年 62 巻 2 号 p. 2_1-2_6
    発行日: 2015/07/31
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
    本論文では,口琴とよばれる楽器をサンプルとして用い,その音による印象と口琴のもつ形態的な特徴の関係を考察した.実験では,まず25 種の口琴が持つ形態的な特徴を抽出し,その特徴の有無を元として,これを数量化Ⅲ類によって構造化した. その後,各口琴の音に対する印象傾向を因子分析によって分析した. その結果,口琴の音による印象は「活発性因子」「評価性因子」「存在感因子」の3因子で説明できることが明らかとなった. その後,各口琴の数量化Ⅲ類によるサンプルスコアの値と因子分析によって得られた因子得点の相関係数を求めた.数量化Ⅲ類によって示されたⅠ軸は,「加工技術軸」であると読み取ることができ,数量化Ⅲ類で得られた「加工技術軸」と,因子分析で得られた「評価性因子」との間に正の相関があることを確認した. 結論として口琴の加工技術が高く,口琴を構成する細部の形状が緻密であるほど,その音は味わい深く,情緒性の高いものであると示唆された.
  • 渡辺 慎二
    2015 年 62 巻 2 号 p. 2_7-2_16
    発行日: 2015/07/31
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
    デザイン開発における創造性と効率性は,相反するものであるとよく言われるが,必ずしも対立の立場を取るものではない。デザイン開発が経営資源として位置付けられる企業のインハウス部門では,投資対効果を重視し,効率的に創造性を高める活動が求められている。しかし,デザイン開発において,創造性を高めるソリューションの研究や領域・役割の拡大に関係する企業の提言は多くみられるが,効率性または効率的に創造性を高めるためのデザイン開発プロセスは明らかにされていない。
    本研究では,社会のインフラストラクチャー分野のデザイン開発を対象として,効率的に創造性を高める方法を提案し,その有効性について考察した。
    結果,プロセス改善に有用な指針を得ると共に,リワークの削減が効率的に創造性を高め顧客満足度の向上に役立つことがわかった。加えて,改善効果が高い具体的なデザイン作業項目を特定した。 
  • -介護支援ボランティア制度導入直後の調査(その2)
    金 正和, 花里 俊廣
    2015 年 62 巻 2 号 p. 2_17-2_24
    発行日: 2015/07/31
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
    高齢者施設において健常な高齢者が行う介護ボランティアは,介護スタッフ不足問題の解決策の一つと考えられ,導入が検討されるべきである。そこで,スタッフ及び介護ボランティアが行う介護の種類や介護行為数,介護の場所などを通して介護の割合や介護活動の違いを探り,介護ボランティア導入による介護の効果を明らかにすることを目的とするマッピング調査を行った。その結果,以下のことが明らかとなった。①介護ボランティアが加わることで生活援助の割合が増加した。②介護は主に共用スペースで行われていた。③介護ボランティアはスタッフに比べてじっくり滞留しながら介護を行っていた。④介護ボランティアはスタッフの活動が少なくなる時間帯に、補完的に活動していた。このように,介護ボランティア導入による介護が,介護ボランティア自身が介護の専門家ではなく,その活動に疑問があったにもかかわらず,介護に効果があることをある程度示すことができた。
  • -シミズ、カワ、イケ、イネの調査を通して
    田中 靖子, 中村 仁美, 河西 立雄, 三橋 俊雄
    2015 年 62 巻 2 号 p. 2_25-2_30
    発行日: 2015/07/31
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
    京都府京丹後市袖志地区の調査により、採藻業の現状と、シミズ、カワ、イケ、イネの4つの水資源のあり方から、それぞれの特徴、また補完関係を読み取り、暮らしを支えた水と人との関係について、以下の5 つの特性を抽出した。
    1)海の採藻業における「適期」「平等性」としての「山の口開け」、棚田・イネの掃除や管理、カワの水場での洗い物の規範など、コモンズを支えた水に関わる共同体的意識、2)イケやシミズの水供給システム、農業用水路としてのイネなど、水資源を最大限に利用し自然と共生した水利用の技、3)採藻業で採集される海藻類の処理・製造工程において必要となる大量の水とその利用を支えた智恵と工夫、4)豆腐づくりや酒づくりに欠かせない西川の水、飲料水や果物などを冷やす水として親しまれた「カンダのイケ」など、食文化を支えたカワやシミズ、5)棚田と共に袖志における水場の原風景を醸し出し人々の心をとらえてきた文化的景観としての水。
  • 渡辺 慎二, 小野 健太
    2015 年 62 巻 2 号 p. 2_31-2_38
    発行日: 2015/07/31
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,いかにデザイン開発プロセスの効率化を行うべきかについて論じたものである。まず一般論として,創造的ワークにおける効率化の3つのパターン(①定量品質または定性品質を維持/コストは削減,②定量品質の向上を図る/コストは維持または削減,③定性品質の向上を図る/コストは維持または削減)を導出した。
    その中で,①定量品質または定性品質を維持/コストは削減のパターンに着目し,企業内デザイン部門で社会インフラストラクチャー分野を対象に実施した,データによる可視化を基本とするデザイン開発プロセスの効率化について説明する。
    具体的には,1)デザイン開発プロセスのデータによる可視化,2)効率化の方向性と対策すべきワークの特定,3)効率化のための施策決定,4)対策実施と効果測定,の4つのステップよりデザイン開発プロセスの効率化のあり方について示した。
  • 伴野 信彦, 堀越 哲美
    2015 年 62 巻 2 号 p. 2_39-2_46
    発行日: 2015/07/31
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
    椅子の形状は、製作材料、材料の加工方法および組立方法によって形成されていると考えられる。有名な椅子の形状が、椅子の構成要素とどのように関係しているかを数量的に明らすことを目的としている。上述の要素は、部材の大小や長短などの椅子の各種寸法に現れると考えられる。そこで一般的に評価が高いとされる椅子の中から31脚の椅子を選定し、それぞ組立三面図の正面・側面・平面の各投影図から直線長、曲線長、外接矩形面積、外接矩形周長、投影面積と投影周長を18種類の特徴量として計測した。また椅子の姿・形の外観上の主な特徴項目を設定し、各椅子について抽出した。18種類の特徴量から得られたデータを用いてクラスター分析した結果、31脚の椅子は8分類された。それぞれのグループにおいて形状の特徴がまとまって現れていることが示された。組立三面図から抽出した特徴量は、形状の特徴を表現することができる基礎的な指標であることを見いだしたと考えられる。
  • -フィラーを利用したプラスチックの質感向上の試み(2)
    須田 高史, 鴨居 明子, 上田 エジウソン, 寺内 文雄, 久保 光徳
    2015 年 62 巻 2 号 p. 2_47-2_54
    発行日: 2015/07/31
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,プラスチックの感性価値を高めるためにフィラー(充填材)として異素材を複合して質感を変化させることを検討した。具体的には,不飽和ポリエステルにさまざまな種類のフィラー(充填材)を複合することで質感を変化させることとした。曲面形状と卵型形状の2種類の形状サンプルを作成し,それらを用いて印象評価実験を行った。その結果,フィラーの特徴が印象評価に大きな影響を及ぼしていることが確認できた。曲面形状では重さや硬さがあり,粒子が緻密なサンプルが高く評価された。卵型形状では視覚情報から予想される重さや触り心地と一致するサンプルが評価されるという傾向が見られた。また被験者によって嗜好が異なり,被験者を概ね3つに大別できることが明らかとなった。
  • 金 民赫, 石橋 圭太, 岩永 光一
    2015 年 62 巻 2 号 p. 2_55-2_62
    発行日: 2015/07/31
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
    本研究の主な目的は、円滑性追跡眼球運動における速度知覚に動的視対象の視認性による周辺視野の感度が及ぼす影響を調べることであった。追跡タスクの難易度は、以下の刺激特性による視認性で調節された。背景的特性(格子パターンの色構成:白黒対白グレー)と曲線の太さ(0.06deg、0.18deg、0.36deg)が異なる6種類の比較刺激を用いて実験を行った。PC画面上を正弦波の軌跡を描きながら左から右へ移動する比較刺激の先端点の速度を標準刺激よりも「遅い」または「速い」と感じたかの二者択一による実験から、PSE(主観的等価点) を導出し、分析を行った。結果、円滑性追跡眼球運動の速度知覚は背景である格子パターンの色構成が白とグレーであるときと、正弦波曲線の太さが太いほど有意に速くなることが確認された。これらの結果から、円滑性追跡眼球運動における速度知覚への周辺視野の影響及び周辺視野の速度知覚の変容効果が難易度によって異なることが確認された。
  • -触覚感の重要性に関する考察に基づいて
    塚本 千晶, 佐藤 公信
    2015 年 62 巻 2 号 p. 2_63-2_72
    発行日: 2015/07/31
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
    本研究では、現代の親子をとりまくコミュニケーションと触覚との関係に着目し、発達に関わる触覚の役割を、心理学、教育学の領域から導き出した。結果に基づき、触覚をきっかけとする親子の読み聞かせに焦点をあてた空間を演出する諸々の器具である「環具」を提案した。モニター調査、及びアンケート調査を行ない「親子のやりとり」「絵本からの遊びへの発展」「ユニットによる五感の使われ方」「環具使用後の遊びへの発展」に焦点をあて考察を行なった。その結果、環具を介した遊びが行なわれると、親子は絵本から発展した共有のイメージの中でできる遊びに発展し、発話が増える傾向がみられた。特にユニットは遊びの継起、遊びの探索と2 つの効果を確認することができた。また環具使用後は、触覚をきっかけに外遊びへの発展に繋がる効果もみられた。以上のことから「環具」は、親子のコミュニケーションを誘発するのに有効であり、触覚による探索活動を促進するツールとしての可能性が示唆された。
  • -伝統的工芸文化の伝承過程の様態
    翁 群儀
    2015 年 62 巻 2 号 p. 2_73-2_80
    発行日: 2015/07/31
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
    台湾における錫工芸は中国大陸漢民族の台湾移住とともにもたらされたもので,品目としては伝統的祭事道具,茶缶,蝋燭台,香炉などの生活用具が主である。しかし,台湾錫工芸の実態については,今日までほとんど把握されてこなかった。本稿は,現存する錫工芸工房への実地調査を通して,台湾における錫工芸師匠の技術伝承系譜を明らかにしたものである。それにより,次のことが明らかになった。1.台湾における錫工芸は,約200年前に大陸の福州ならびに泉州で展開されていた錫工芸従事者の台湾への移住によってもたらされ,以来,福州派と泉州派の様式が台湾での錫工芸の主流となった。2.かつては台湾西部の北から南の各地域に錫工芸師匠が工房を構えていたが,今日の北部ではその姿が皆無になり,地域的には中南部にわずかの工房・師匠の存在が確認できる。3.生活様式の西洋化などに伴い伝統的錫工芸は衰退の一途を辿りつつあるものの,技術伝承脈絡が明らかになったいくつかの錫工芸工房においては旧弊から脱皮した錫工芸の展開が図られている。
  • 矢久保 空遥, 田内 隆利, 久保 光徳, 寺内 文雄
    2015 年 62 巻 2 号 p. 2_81-2_88
    発行日: 2015/07/31
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
    本論文では,ロシア連邦サハ共和国で演奏されている伝統的な口琴であるKhomusとイタリア共和国シチリア島で演奏されているMarranzanuと呼ばれる口琴の2つをサンプルとして,これらの形態的な特徴,音響的な特徴,社会的な特徴の3つの側面から比較を行った. 形態的な特徴において両者を比較すると,Khomusの弁には均一な角度でエッジ加工が施されており,Marranzanuの弁にはエッジができるような加工は施されていないことが確認された. 音響的な特徴の比較では,自己相関関数の違いからそれぞれの周波数構造に着目し,一方が奇数倍音を多く含む矩形波に近い構造,他方が整数倍音を多く含むノコギリ波に近い構造をしていることを明らかにした. これは,音による印象そのものに影響を与えうるファクターであり,音に対する印象評価を行った先の研究と照らし合わせて考えると,特に「活発性因子」において大きな差があることわかった. 社会的な扱われ方の違いについては,それぞれの国での演奏されるシーンや,催事などの有無といった点から民族的な意味合いを強く持ったKhomusと民俗的な意味合いを強く持ったMarranzanuであると解釈することができた.
  • -実地調査に基づく錫工芸の実態的観察・記録
    翁 群儀
    2015 年 62 巻 2 号 p. 2_89-2_98
    発行日: 2015/07/31
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
    台湾における錫工芸は中国大陸漢民族の台湾移住とともにもたらされたもので,伝統的祭事道具,婚礼用具などの品目を主としながらも,200年以上の歴史を刻んできた。しかしながら,制作過程,技術・技法,装飾紋様など,総じて台湾錫工芸の意匠特質はほとんど明らかにされてこなかった。その事由は,錫工芸師匠たちの技術伝承が父子ないしは親族の間でなされてきたことに象徴されるように,個々の師匠がそれらを秘匿することによって自らの錫工芸のアイデンティティを堅持したいと強固に観念していたからである。本稿では,今日の台湾における錫工芸を代表する師匠の協力を得て,制作現場での観察・記録のみならず,錫工芸作品の諸特質を把握することができた。本稿では,それに基づいて台湾錫工芸の意匠特質を整理するとともに,今後の錫工芸の進展を志向するには,①漢民族の伝統的価値観を反映する意匠,②非日常的生活領域に集中しすぎてきた錫工芸であるとの内省に基づき,③伝統錫工芸技術の再現と記録を行うことが大切であることを論じた。
  • 津坂 真有
    2015 年 62 巻 2 号 p. 2_99-2_106
    発行日: 2015/07/31
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
    「未来歴史学」は未来におけるテクノロジーと社会のあり方を考察する研究手法のひとつである。その中でも SF系メディア芸術作品を多様な評価軸によって分析し,そこに記されているテクノロジーと社会についての見解をアーカイブするものを示す。テクノロジーの問題をテクノロジーのみで解決することが困難な現代において,個人もリスクを背負わなければない事態が表面化してる。このような状況下で重要なものが, 社会の出来事を自分ごととして捉える「社会学的想像力」である。本稿ではまず,未来のテクノロジーのあり方に関する是非をデザインによって問うクリティカルデザインと日本における社会学的想像力=日本的想像力の分析を行う。そしてこの分析をもとに ,日本的想像力を用いたクリティカルデザインの一つの可能性である未来歴史学について述べる。未来歴史学は日本的想像力による当事者性と批評性を含んだ様々な視点から,これからのテクノロジーと社会に関する見解を生み出すことを目的としている。
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