デザイン学研究
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63 巻, 2 号
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  • -クオリティカルテ評価・診断システム構築に関する研究(6)
    石橋 伸介, 曽我部 春香, 森田 昌嗣
    2016 年 63 巻 2 号 p. 2_1-2_8
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー
     人々の価値観が多様化し変化の激しい現代においては,潜在的な価値を掘り起し,可視化することのできるデザイン手法が求められている。本研究では,パーソナルモビリティの価値構造を把握し,新たな価値を提供するためのデザイン評価・診断システムの構築を目的としている。本稿では,まず,雑誌調査によって抽出したデザインの価値要素を整理し,約600項目のデザイン評価指標を構築することができた。次に,評価手法について検討を行い,実際に開発中のパーソナルモビリティを対象に評価実験を実施した。さらに,評価実験の分析結果をもとにデザインを学ぶ学生数名に次世代のパーソナルモビリティについてデザイン提案をしてもらい,評価データの有用性について検証した。その結果,異なる立場のユーザーグループ間の評価のズレといった新たな視点から商品開発におけるアイディア展開やコンセプトの立案などで活用されていることがわかった。以上により,実用化に向けた課題は多いものの,パーソナルモビリティに特化したデザイン評価・診断システムを構築し,一定の効果を確認することができた。
  • 諸葛 正
    2016 年 63 巻 2 号 p. 2_9-2_18
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー
     台湾の木工芸製品は、日本による50年余りの統治の中で、台湾は本来の漢文化中心指向から転換し、一般住民層で生産、使用されてきた。だが、台湾の木工芸製品に対する印象の認知と変化は過去の学者と専門家の立場や認識に大きく影響され、賛否両論が存在すると一般的に認識されていた。本論で設定した研究目的は、この賛否両方の変化の軌跡とその差異、特徴を説明することである。結論から言うと、清朝統治の末期まで、中国漢人風の木工芸製品の様式は台湾本島の住民に認知された唯一の木工芸製品スタイルと言われていたが、日本の台湾統治を経て、日本式、西洋風の木工芸製品と様式が多く導入されたため、台湾の木工芸製品経の評価や方向性に分岐が生じ始め、更にナショナリズムに沿った評価に影響され、本島中国式の製品は日本人と本島人の認識が更なるズレが生じ、様々な論議と観点が生み出された。
  • 小林 茂雄
    2016 年 63 巻 2 号 p. 2_19-2_24
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー
     本研究は,都市空間に心地よく吹く風や,紅葉などの季節の変化への意識を高めることを目的として,環境体感を促す装置を空間の装飾として組み込むことを試みた.風を皮膚感覚ではなく視覚で感じるなど,他の感覚へと置き換えることで体感しやすくするものである.東急プラザ表参道原宿の屋上緑化空間である「おもはらの森」を対象として,383個の環境体感装置を緑と一体となるように設置し,2014年10月の7日間に渡って一般開放した.環境体感装置を設置しない通常時と,設置した実験時において,利用者の環境体感の程度を把握するアンケートを行った結果,実験時には「緑」と「季節」をより強く感じることに対して,昼夜を問わず有意な結果が得られた.またその場所に吹く「風」をより強く感じることに対して,昼のみ有意な結果が得られた.環境体感装置自体を意識しなくても,装置を介して周辺環境を体感する効果があったことが確認できた.
  • ―ヘドニックトーンと認知的美の評価に着目して
    宮下 達哉, 木村 敦, 岡 隆
    2016 年 63 巻 2 号 p. 2_25-2_32
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,美的評価におけるヘドニックトーン(美しさ,快さ)と認知的美(良さ,好ましさ)の区別,およびそれら美的評価の個人差要因を明らかにすることであった。個人差要因としてとくに審美的価値観に着目し,審美的価値観と認知的美との関連を実験的に検討した。実験では,89名の大学生を対象として6枚(美しい対象が描かれた絵画3枚と醜い対象が描かれた絵画3枚)の絵画の美的評価をヘドニックトーンと認知的美の評定項目(美しさ,快さ,良さ,好ましさ)で評定させた後,審美的価値観を測定した。その結果,ヘドニックトーンによる評価は実験参加者の審美的価値観と関連がみられず,一方で認知的美による評価では審美的価値観と関連することが示された。
  • -名古屋駅地区・栄地区・名古屋城地区を対象として
    伊藤 孝紀, 木暮 優斗, 大矢知 良
    2016 年 63 巻 2 号 p. 2_33-2_42
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー
     本研究では,名古屋市が管理する歩行者系サインを対象とし,設置環境による利用実態や表示面のデザインに対する評価の違いを把握することを目的とする。
     対象地区は名古屋駅地区,栄地区,名古屋城地区の3地区とし,対象地区内の歩行者系サインの類型化および後の調査箇所の選定を目的とした設置環境調査,歩行者系サインの利用者数および通過者数を明らかにすることを目的とした目視観測調査,表示面のデザインに対する評価および利用目的を把握することを目的とした利用者の評価調査をおこなった。
     目視観測調査から,利用者数が多い歩行者系サインの設置環境を把握した。利用者の評価調査により,地区により年代,居住地区,来訪目的など利用者の属性が異なるということを明らかにした。表示面のデザインに対する評価は市でデザインが統一されていた方が良いとされ,地図の文字サイズは小さいと評価された。また,地区内の設置環境および平日・休日の違いにより,利用目的が異なることを明らかにした。
  • 川端 彬子, 金 尚泰
    2016 年 63 巻 2 号 p. 2_43-2_48
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー
     従来の料理レシピ検索では、検索結果がリスト形式で表示されることが多い。しかし、「冷蔵庫の中にある食材を使った料理」という、漠然とした検索欲求下においては、ユーザーは適切なクエリ作成を行うことが難しいため、検索結果の絞り込みが困難である、と言われている。また、料理レシピ検索におけるユーザーのコンテクストは多様で、絞り込みきれていない膨大な結果の上位数件で満足する可能性は低い。そこで、料理レシピデータの持つ複数レシピ属性値をユーザーが比較できる数値とし、検索結果を「ざっと」見て、「一目で」複数レシピ属性を比較できる料理レシピ検索UIの開発を行った。各料理レシピをオブジェクトとして表現して、3次元空間に配置し、マウスで操作できるようにすることで、料理レシピ検索結果の俯瞰視を可能にし、新たな料理レシピの検索体験を生み出した。
  • 山田 香織, 工口 陽平, 田浦 俊春
    2016 年 63 巻 2 号 p. 2_49-2_54
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー
     動くロゴマークなどに見られるように,身の回りの様々な場面で動きを伴ったデザインがなされるようになってきている.本研究では,作りたい動きのイメージが曖昧である際に,計算機と対話しながら動きをデザインする方法を提案することを目的としている.これまでに,自然物の動きを誇張しそれを合成することで新しい動きを生成する方法を提案し,システムを構築した.本論文では,曖昧で漠然としている動きのイメージを表現するための方法として擬態語に注目する.また,これまでに存在していない新しいイメージを表現するために,既存の擬態語を超えて,全く新しい擬態語が造られることもある.本論文では,動きのアイデアを表現するために新しく造られた擬態語を創作擬態語と呼び,これに基づいて創造的な動きを生成する方法を提案する.そのために,まず,創作擬態語を計算機が理解する(処理する)手法を構築した.そして,これまでに構築した動作生成システムおよび動きのデータベースに,本論文で構築した手法を組み込み,本方法の有効性を検証した.
  • 前川 正実
    2016 年 63 巻 2 号 p. 2_55-2_64
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー
     本稿は消防団に配備される小型動力ポンプ付積載車(以降,積載車)の放水操作のデザインに資する知見を得ることを目的とし,積載車の調査・消防団活動の実態調査・消防団員(以降,団員)を実験協力者とする放水操作タスクの実施におけるプロトコル分析の結果と考察を述べ,その操作のデザイン要点を示す.調査では積載車における放水操作仕様の不統一や団員活動における問題が明らかとなった.実験では団員にとって意識化された記憶と,意識せずに実施できるようになるまでに無意識化された記憶,ほぼ記憶されていなかった事柄,一般的なステレオタイプが適用されない事柄,誤ったメンタルモデルの形成が推測された事柄などが把握された.最後に,放水操作のデザイン要点として,消防団員のエピソード記憶や手続き記憶の形成,放水作業におけるトラブルへ対処可能なメンタルモデル形成を提案する.
  • -家電製品のエコロジカルな使用を促す表示手法の研究(4)
    杉本 美貴
    2016 年 63 巻 2 号 p. 2_65-2_70
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー
     現在行われているゲーミフィケーションが用いられている様々な分野の成功事例について調査を行った結果、家庭電化製品のエコ表示にゲーミフィケーションを効果的に用いるためには、ユーザの行為を「行為の変換」「行為の共感」「行為の承認」の3要素に含まれるゲーム性を使って表現した表示内容にすることの重要性を導出した。しかし、これはまだ実証実験による検証はなされていないため、本研究では、家電製品の中でもエネルギー消費量の多い冷蔵庫を事例に継続使用による検証を行い、導出した仮説の有効性を確認した。一方、家電製品のように長期間使用する機器の場合、ゲーム性をユーザに適合させ、表示に飽きさせず、ストレスを感じさせないことで表示への高い意識を継続させる必要性が示唆された。また、エコ表示でのゲーミフィケーションの利用では、必要なことを我慢する、抑止するという効果ではなく、不必要なドア開閉を減らすなどの省エネ意識を促進し、ユーザのエコロジカルな機器の使用を誘発することに有効であることが明らかとなった。
  • 落合 太郎, 大嶺 茉未
    2016 年 63 巻 2 号 p. 2_71-2_80
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー
     直接情緒に働きかける音楽は,人の時間経過の感覚に影響を及ぼすと考えられ,モーツアルトのK.265/K.300eキラキラ星変奏曲が同じメロディで12の異なる様式に演奏されている点に注目して感覚時間比の測定を行った。予想と異なり,静かで緩やかな曲が時間の経過が短くむしろダイナミックでアップテンポの曲の方が長く感じるという結果であった。この実験過程で曲ごとに異なる色彩イメージを連想するという副次的結果を得たため「和音」に着目し,派生する色彩感覚を追加実験によって検証した。追加実験ではC(ド)のmajor,minor,sus4,diminishを代表和音としてデザイン学科学生を対象に聞かせた。色彩トーンや色相の連想イメージを聞くと一定の傾向が見られ,先行研究で報告された色聴保持者と共通する結果が得られた。和音は色彩イメージを誘発し,さらに当該色彩を介して環境デザインで指定された機能イメージと連動させることが理論的に可能となるため,和音が「言語」に替わるサインとして空間に機能するということが示唆された。
  • -医薬品情報コミュニケーションデザインのための基礎研究
    河瀬 絢子, 崔 庭瑞, 李 志炯, 泉澤 恵, 日比野 治雄, 小山 慎一
    2016 年 63 巻 2 号 p. 2_81-2_88
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー
     本研究では,専門家・非専門家のOTC医薬品記載情報への注視方法とリスク評価の相違点を明らかにするため,一般消費者(一般学生),専門家(薬学生,薬剤師)に対してOTC医薬品に関する眼球運動計測実験と質問紙調査を行った。眼球運動計測実験では、被験者は,3種類のOTC医薬品の中から最も購入したいとおもった1品を選択した。課題遂行中,「製品名」,「キャッチコピー」,「成分」,「使用上の注意」等の12の外箱記載項目に対する視点の停留時間が計測された。眼球運動計測実験の結果,専門家は一般消費者よりも「成分」,「使用上の注意」,「薬効分類」を長時間注視する傾向がみられた。質問紙調査では専門家が一般消費者よりもOTC医薬品の副作用リスクを高く評価した。以上の結果から専門家はOTC医薬品の副作用リスクを高く評価するとともに「成分」,「使用上の注意」,「薬効分類」等の詳細情報をよく読んでいることが示唆された。専門家による高いリスク評価を一般消費者に伝えるためには,リスク情報を強調した外箱情報デザインが有効である可能性がある。
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