デザイン学研究
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64 巻, 3 号
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  • ─アムステルダムとベルリンを事例とする
    伊藤 孝紀, 三宅 航平, 田淵 隆一
    2017 年 64 巻 3 号 p. 3_1-3_10
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/02/01
    ジャーナル フリー
     本研究では, アムステルダムとベルリンを対象として, クリエイティブ産業における都市構造をソフト面とハード面に分類し, 段階的なスケールから明らかにすることを目的とする。
     クリエイティブ産業の指標を設定し, マクロスケールの特徴を把握するための報告書調査とヒアリング調査, メソスケールの特徴を把握するための報告書調査と現地踏査, ミクロスケールの特徴を把握するための現地踏査をおこなった。
     マクロスケールの特徴として, スタートアップ企業の推進やクリエイティブ産業のクラスター形成, コワーキングスペースと研究機関の集積を把握した。メソスケールの特徴として, 公共空間と建築を連続的に演出する「演出空間」と, 都市近郊に立地し, 小規模企業向けのリノベーションされたオフィス空間を把握した。ミクロスケールの特徴として, 演出空間の空間特性を公共空間に対して「活用型」と「隣接型」に分類した。
     以上より, アムステルダムとベルリンの特徴を明らかにし, クリエイティブ産業が集積する都市構造の一端を示した。
  • 酒匂 一世, 原田 利宣
    2017 年 64 巻 3 号 p. 3_11-3_20
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/02/01
    ジャーナル フリー
     データマイニングに利用される分析手法のひとつであるラフ集合は,決定ルールによってある結論に対する属性間の因果関係を簡潔に表現することが可能な一方で,複数の決定ルール間の概念構造(包含関係)を把握しづらいという欠点があった。そこで,本研究では決定ルール間の概念構造を可視化し,ラフ集合の欠点を補う方法論の提案を目的とした。具体的には,属性間の包含関係を主とした概念構造をハッセ図によって可視化することが可能な分析手法である形式概念分析をラフ集合と組み合わせ,双方の分析手法を同時に実行し,ハッセ図上に決定ルールを投影する概念構造可視化システムを開発した。加えて,既存の書籍や論文に掲載されているデータに対するラフ集合解析を用いた分析結果と本システムを用いた分析結果を比較し,システムの有用性を検証した。その結果,異なる決定クラスに属する複数の決定ルールに含まれる属性値や,属性値が有する決定クラスを確定させる影響力の大小など,各分析方法を独立に用いても発見しづらかった知見を得ることができた。
  • ─セリフ書体とサンセリフ書体を対象として
    中辻 七朗, 伊藤 浩史, 伊原 久裕
    2017 年 64 巻 3 号 p. 3_21-3_30
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/02/01
    ジャーナル フリー
     本研究は,タイプフェイスについて,専門家と非専門家の類似性判断の差異を実験的に検証した。刺激として用いたのは,セリフ書体およびサンセリフ書体である。実験手法としては,各書体が記載されているカードを各書体の形態の類似度に応じて2次元空間に配置するカード配置法を用いて,空間上の刺激間の距離から各書体の形態の類似度を計測した。専門家と非専門家の空間配置について,配置図間の類似性を評価する跡相関係数を算出したところ,5%水準で有意差が認められ,専門家と非専門家の類似性判断に差異があった。次に,取得された類似度と各書体の文字の太さの相関関係を調べた。サンセリフ書体については,専門家の判断は中程度の相関を示したのに対して,非専門家の判断は強い相関を示したことから,非専門家によるサンセリフ書体の類似性判断は,字体の太さに大きく影響されることがわかった。
  • 土井 俊央, 村田 厚生, 味間 智志
    2017 年 64 巻 3 号 p. 3_31-3_40
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/02/01
    ジャーナル フリー
     本研究では,メンタルモデルを構築しやすいグラフィカルユーザインタフェース(GUI)の画面構成を明らかにするために,4つの画面構成(階層型,タブ型,一覧型,順序型)の比較を行った.各画面構成におけるメンタルモデル構築度合として,ボタン機能の理解度(Functional model の観点)と画面階層構造の理解度(Structural model の観点)を測定した.またこれに加えて,エラーの指標である Lostness 得点の算出と主観的な総合的満足度評価として SUS を実施した.その結果,ボタン機能理解度については4つの画面構成の間に有意差はなく,Functional model の構築しやすさに違いはなかったものの,画面階層構造理解度では,一覧型および順序型が有意に優れており,Structural model の観点では,一覧型および順序型が望ましいことが明らかになった.また,一覧型および順序型は,Lostness 得点と SUS による主観評価でも評価が高く,その観点からも好ましいことが示唆された.
  • ─三峽地域におけるアイデンティティの礎としての藍染産業の歴史
    王 淑宜, 植田 憲
    2017 年 64 巻 3 号 p. 3_41-3_50
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/02/01
    ジャーナル フリー
     本研究は,台湾新北市に位置する三峽地域における内発的地域づくりの方向性を導出するための調査・研究の一環である。本稿においては,当該地域における藍染産業の歴史を概観・整理するとともに,藍染産業が三峽地域の社会に及ぼした影響を考察することを目的とした。文献調査ならびに古老らへの聞き取り調査に基づき,以下の各点を明らかにした。(1)当該地域の藍染産業の基礎は,中国福建省などから台湾に移住して来た人びとが故郷から持ち込んだものであった。(2)当該地域の人びとが良質な藍澱や藍染製品を製造する独特の技法を生み出し,台湾全土の他,中国や日本などへ輸出するまでに興隆した。(3)三峽地域の藍染産業が最も盛んになったのは1890年から1920年頃であったが,その後,化学染料の台頭や社会の変容を要因として急速に衰退した。(4)三峽地域の藍染産業の形成には,「互助精神」「結市」などの当該地域の人びとの結束が大きな影響を与えた。今後の地域づくりにあっては,上述した歴史を踏まえ,地域の展開を志向していくことが望まれる。
  • ─建築物の意匠の社会的・文化的意味の理解を中心に
    王 淑宜, 植田 憲
    2017 年 64 巻 3 号 p. 3_51-3_60
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/02/01
    ジャーナル フリー
     台湾新北市に位置する三峽地域は,かつて台湾のなかで最も藍染が盛んな地域であった。しかし,現在では産業としての藍染は姿を消し,当該地域のアイデンティティを維持しつつ地域活性を展開することが求められている。本稿では,「三峽民権老街」が建設された当時の街路空間の文化的特質を把握し,今後の三峽地域のあり方を追求することを目的としたものである。調査・考察の結果,以下の各点が明らかになった。(1)三峽民権老街は総督府の命によって再建が開始されたが,建物のファサードに付された装飾文様には,中国式,和式,洋式ならびにそれらの融合型がある。なかでも中国式が最も多く,これは,日本統治下でありながらも当該地域の人びとの主体性に基づいて装飾が施されたことを意味している。(2)建物のファサードに付された装飾文様には,当時の人びとの生活に対する願望が反映されている。(3)隣家同士で装飾文様の素材やモチーフが同じであるなど,何らかの形で協力して行われた様子がうかがえ,地域共同体としての連帯意識の強さがみて取れる。
  • 宮原 愛, 荒井 秀文, 河原 健太, 山崎 友賀, 中西 美和
    2017 年 64 巻 3 号 p. 3_61-3_70
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/02/01
    ジャーナル フリー
     ユーザエクスペリエンス(UX)は,ユーザとプロダクトとのインタラクションにおける諸体験について議論する概念であり,近年,プロダクトがユーザにもたらす満足を追求する上で注目が高まっている。特に,家電製品等,市場で成熟したプロダクトを扱うデザイン現場では,ユーザに新しい価値を提供しうるプロダクトの創出を狙いとして,このUXの概念の導入を模索している。このような背景に鑑み,本研究では,プロダクトのUXを,そのデザインプロセスにおいて予測的かつ定量的に評価する手法の開発に挑んだ。UXは,多様な要因の影響を受けるため,一定の不確実性を含むことを前提としなければならない。そこで,自作のスマートフォンアプリケーションを用いるなどして,20代~70代までの多様なユーザから11,698件のデータを収集し,確率論的アプローチによって,どのようなインタラクションがどのようなUXの側面を生み出すのかを推定するモデルを構築した。このモデルを用いて,家電製品のUX評価を実践するとともに,実務者及び実ユーザの参加による検証実験によって手法の妥当性を検討した。
  • ─中小企業協同組合によるユニバーサルデザインに基づいた整備基準の策定
    佐藤 剛, 浅井 貴也, 千里 政文, 佐藤 克之
    2017 年 64 巻 3 号 p. 3_71-3_78
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/02/01
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,中小企業のUDN協同組合により計画・建設された高齢者住宅を評価し,将来の可能性を明らかにすることにある。寒冷地北海道における高齢者住宅の質を向上させるための議論は,一連のUDN研修と整備基準の策定に基づき実施した。研究は,2006~2013年の間に企画から設計(第1段階),施工から竣工(第2段階),居住体験(第3段階)の3段階で行った。第1段階では,4テーマ16項目の基準を見直し,4テーマ19項目を得た。第2段階では,9テーマ33項目の新しい基準を策定し,UDの視点からの独自の計画を実現した。第3段階は,2人の高齢者に訪問面接調査を行った。その結果,将来の改善内容が見出され,80%の肯定的な評価が得られた。この実践的な方法は,高齢者住宅の環境改善に有効であることを示唆している。
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