デザイン学研究
Online ISSN : 2186-5221
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65 巻 , 1 号
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  • 永山 雅大, 原田 一, 永山 広樹
    2018 年 65 巻 1 号 p. 1_1-1_8
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2018/08/30
    ジャーナル フリー
     本研究では、広域災害における避難時において必要とされる条件を探求し、より有効的な避難誘導方法の提案へとつなげることを目的とした。広域災害における避難誘導の条件を明確にするため、東日本大震災の被災地を対象とした調査、同震災避難者を対象にしたアンケート調査およびシナリオ調査、使用されていた避難誘導サインやその設置基準等を調査し、大規模な災害後の分析を行った。また、東日本大震災で被害をうけた地域以外の調査として、南海トラフ地震対象地域において、避難誘導サインおよび津波避難施設の設置状況調査を行った。
     これらの調査から、広域災害において避難誘導サインに求められる条件は「直感的に認識可能な避難誘導」であることが明らかとなった。
  • 永山 雅大, 原田 一, 永山 広樹
    2018 年 65 巻 1 号 p. 1_9-1_18
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2018/08/30
    ジャーナル フリー
     本研究では、我々の先行研究から得られた広域災害における避難誘導サインに対する条件およびデザイン要件を基に、避難誘導サインユニットを製作、検証実験から改良を行い、より実用に近づけることを目的とした。
     道路鋲を参考にサインユニットを製作、視認性の検証実験および避難誘導サインの設置位置について検証実験を行った。実験結果から得られた改良条件を基に改良型サインユニットを製作、避難経路を想定した実験経路を用いて検証実験を実施した。検証結果から、避難誘導サインユニットは、LED 光源を用い避難誘導情報を発光で表すことにより視認性が高まることが認められ、連続した設置により避難経路の明確化が図れた。
     本研究で提案した避難誘導サインユニットは、従来の避難サイン等と相互補完がなされる組合せ方により、避難行動の情報を有効的に避難者へ伝えることができ、迅速な避難が期待できると思われる。
  • 張 英裕, 宮崎 清
    2018 年 65 巻 1 号 p. 1_19-1_26
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2018/08/30
    ジャーナル フリー
     摘星山荘は、清時代の武将・林其中によって1871年から1879年の間に築かれた古民家で、台中市潭子区に現存している。
     「憨番」は、一般的に、台湾の伝統的寺廟に多用される装飾題材である。それは、外来統治者に対する台湾人の不満・怒りの気持ちを表すものと伝えられてきた。しかし、寺廟ではない摘星山荘にも「憨番」に似た外国軍人像の装飾題材が見られ、それは「憨番」題材の一つである「憨番擔樑」と解釈されている。はたして、このような解釈は正しいのだろうか。
     本研究は、詳細な考察を行った結果、これらの軍人像は清時代後期の「太平天国の乱」の常勝軍・常捷軍に由来する可能性が極めて大きく、内包されている意味も「吉祥如意」「勝利」であると判断できる。この考察結果は、「憨番」と考えられてきた既存の認識を覆すものである。また、建造者・林其中の人間関係のみならず、太平天国の乱と無関係であったかに見える当時の台湾の国際関係をも顕現してくれる。
  • 熊澤 貴之, 高田 大稀
    2018 年 65 巻 1 号 p. 1_27-1_34
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2018/08/30
    ジャーナル フリー

     まちなかにおける居心地の良い施設として,茨城県日立市の交流センターを取り上げ,冬季平日の施設利用が「地域愛着形成」「公共空間利用」「地域交流」で構成される「地域生活行動」に与える影響を定量的に検討した.その結果,施設の常時利用型の人とイベント利用型の人がおり,共通して居心地の良さが「地域愛着形成」へ影響を与え,さらに「地域愛着形成」が「地域交流」に影響を与えることが把握された.「地域愛着形成」の大きい人ほど地域を大切にし,積極的に地域の活動へと参加する傾向があった.また,イベント利用型の人は「地域交流」を強めると,さらに,「公共空間利用」を強める効果が確認された.常時利用型とイベント利用型の人が持つ因果構造モデルを重ね合わせることで,心地よい拠点施設の利用が地域の愛着を醸成し,次に,「地域交流」を強め,さらには近隣の「公共空間利用」に波及するという地域生活行動デザインが示された.

  • 吉岡 聖美
    2018 年 65 巻 1 号 p. 1_35-1_40
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2018/08/30
    ジャーナル フリー

     インタラクティブな画像の変化によってリハビリテーション動作を促し,リハビリテーション動作の運動量における達成度をアート作品の完成度としてフィードバックする「立ち上がって空に描こう!」のプログラムを開発した。本プログラムを実行するVRヘッドマウントディスプレイを装着して上下運動を行うことによって,視界の画像が変化して風景画像を制作することができる。学生を実験協力者としてスクワット運動を実施した際の心理評価では,プログラムを用いたスクワットは,用いないスクワットに比べて,「活性度」「快適度」が有意に大きい結果が得られた。また,回復期リハビリテーション病院の入院患者が本プログラムを用いて立ち座り動作のリハビリテーションを実施したところ,運動の前後でリハビリテーションに対する「楽しさ」の評価が大きくなり,加えて,長期間楽しく取り組むことができると考えられる結果が得られた。

  • 趙 麗華, 山本 早里, 五十嵐 浩也
    2018 年 65 巻 1 号 p. 1_41-1_50
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2018/08/30
    ジャーナル フリー

     本研究は,延辺朝鮮族自治州の3つの民俗村における現地調査を通して,それらの変遷過程と現状の考察を行い,文化的観光デザインの特質を明らかにすることを目的としたものである。民俗村の形成に至るまでの背景とそこで行われている観光活動について整理した結果,以下の知見を得た。
    (1)自発的移住に基づいて形成された伝統村は共同意識が比較的高く,管理型・政治型移住に基づいて形成された伝統村は共同意識が比較的低いことが確認できた。(2)民俗村の形成に影響する要素として,村の共同意識と周辺の有名観光地の開発があげられる。(3)民俗村における文化的観光デザインの特質を4つの要素にまとめた。それぞれ,伝統文化,民俗芸能,商業型観光活動,村民の参画である。(4)民俗村の形成初期は伝統文化と民俗芸能を中心としていたが,近年,商業型観光活動が増加している。特に,企業による商業型観光活動の増加は村民の参画の減少につながることが明らかになった。

  • 楊 寧, 須長 正治, 藤 紀里子, 伊原 久裕
    2018 年 65 巻 1 号 p. 1_51-1_60
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2018/08/30
    ジャーナル フリー

     本研究は,「ユニバーサルデザインフォント(以下「UD フォント」と表記)」として開発されたフォントの評価を中心に総合的に検証し,合わせてフォントの形態的属性についても調査を行い,これらの相関性を分析考察することで,望ましいUDフォントのデザインに関する指針を得ることを目的とした。
     UDフォントの評価は,従来の視認性,判別性,可読性の3つの評価項目に、積極的な評価項目とされていなかった美感性を加え、計4つの項目で行った。若年者,デザイン関連業務経験者,高齢者の合計90名を被験者とした。また,角ゴシック体,丸ゴシック体,明朝体から,合計60フォントを実験用フォントとして選定した。
     本稿では,実験のうち,美感性を取り上げて分析を行い,合わせて計測したフォントの形態属性との間の相関性を探った。その結果,濃度,字面面積,英数字の形態が,いずれのカテゴリーにおいても,見出しと本文フォントともに,美感性評価に強く影響していることがわかった。

  • 王 甯, 植田 憲
    2018 年 65 巻 1 号 p. 1_61-1_70
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2018/08/30
    ジャーナル フリー

     本稿は,中国河南省楊玘屯における伝統的工芸「泥咕咕」の制作技術とその特質の把握を目的としたものである。以下が調査・考察の結果である。(1)泥咕咕の制作技術は単に生産性の向上を目指した結果ではなく,土や鉱物,動植物,時間・空間,温度などの身の回りのさまざまなもの・ことに利活用の可能性を認め,それらの使用の経験を蓄積しつつ創出・継承されてきたものである。(2)泥咕咕のモチーフ・サイズが多様である他,同じ人によってつくられた同じモチーフにもいくつかの種類があり,こうした多様性には農耕生活における自由な創作活動の発露として,この文化の創造にいかに人びとが主体的に関わってきたかが表出されている。(3)天日あるいは竃の余熱だけで乾燥がなされる泥咕咕は,その役割を終えた後,やがて再び土に還る性質を有しており,泥咕咕の文化が当該地域における資源循環型のものづくりとして成立してきたことが分かる。(4)泥咕咕が黒を地色とするのは,日常生活にある資源を利活用したことが主な要因の一つであり,泥咕咕の道具や資源の調達を含む一連の制作過程には地域資源の全体活用の優れた知恵が確認された。

  • 王 甯, 植田 憲
    2018 年 65 巻 1 号 p. 1_71-1_80
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2018/08/30
    ジャーナル フリー

     本稿は,中国楊玘屯における土の概念,土の種類に応じたものづくりの分布,家屋における土の利活用,ならびに泥遊びから,それぞれ泥咕咕との関わりを読み取り,また日常生活という視点からみた土の活用を明らかにしたものである。得られた知見は,概ね以下の通りである。(1)楊玘屯の人びとは,当該地域で入手可能な土に関する知識体系を共有している。村の境界,地区別の呼び方,土の採集場所,さらには土に付与されたさまざまな名称からは,人びとが土が有する諸特性に綿密な注意を払い,泥咕咕に導入し得る弁別に対する関心をもってきたことが分かる。(2)土の特性は地区によって異なるが,人びとは自らが居住する地区の土の特質を活かす工夫を展開してきた。西部においては豊富な膠泥を用い泥咕咕がつくられ,膠泥の少ない東部においては,土を他の多様な素材と組み合わせた手工芸が創出されてきた。(3)人びとは,土という資源の利活用の知恵を創出し日々の生活に巧みに取り入れてきた。土の多様な変化・応用を通して,人と自然と共生し,人と人の関係がつながり,さらに人びとの心が結びつけて緩やかな住み心地のよい生活空間が構築されてきた。

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