デザイン学研究
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65 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • ー中国・内モンゴル・シリンゴル盟チャハル地域の生活文化を事例として(1)
    吉日木図 , 植田 憲
    2018 年65 巻2 号 p. 2_1-2_10
    発行日: 2018/09/30
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
     今日,急速な定住化が進む中国・内モンゴルにおいて,長い遊牧生活の歴史のなかで構築されてきたモンゴルの人びとの独自の時間概念が消失する危機に直面している。本稿では,遊牧生活を営む人びとが,どのように時間を把握してきたのかを確認し記録するとともに,モンゴルの遊牧生活に培われてきた時間概念の特質を明らかにすることを目的とした。調査・考察の結果以下の知見を得た。(1)人びとは,太陽,月,星,気候の変化,植物,動物やその規則的な生態などを始めとした自然が直接与える現象・情報によって生活における時間の秩序の「節目」を設定し,自らが一日,一月,一年のどの時間にいるかを把握してきた。(2)周囲に起こる全ての自然現象や動植物の状態に目を向け,蓄積した「経験」が来たるべき時間がどのような状態であるかを予測可能にし,それらを生業に応用し共有してきた。(3)時間の把握の仕方には,当該地域の自然に適応しようとしてきた人びとの生き様が如実に反映されている。(4)遊牧生活の時間概念は,「過去」と「今」によって定められるがゆえに「未来」へとつながるものであった。
  • ー中国・内モンゴル・シリンゴル盟チャハル地域の生活文化を事例として(2)
    吉日木図 , 植田 憲
    2018 年65 巻2 号 p. 2_11-2_20
    発行日: 2018/09/30
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
     本稿は,モンゴルにおける遊牧生活の「一日」「ボグ・マルの出産期」「正月行事」において行われてきた伝統的な儀礼・営みを概観し,それらに表出する時間の意匠の特質を考察することを目的としたものである。調査・考察の結果,モンゴルの遊牧生活にみられる時間の意匠の特質を,まず,以下の3点にまとめることができた。(1)「始まり」を強調する時間の意匠,(2)「終わり」を強調する時間の意匠,(3)「継続」を強調する時間の意匠。われわれが認識する太陽が昇りまた沈むというリズムとしての「一日」と,周期的に繰り返す気候変化のリズムである「一年」は,止まることがなく繰り返される自然のリズムである。モンゴルの遊牧生活において,人びとは,自然から与えられる「受動的」な側面に対応しつつ,日常生活において繰り返される約束事や年中行事などのように,人間が積極的に行動し主体的に時間に区切りをつけ,意味ある時間を演出してきた。このように形成された「主体的」な側面こそが,時間を使ってつくられた秩序であり,モンゴルの遊牧生活にみられる時間の意匠の核心となるものである。
  • ─フォントデザイナーへのインタビュー調査を通じたフォント表現の考察
    関 博紀, 後藤 明里
    2018 年65 巻2 号 p. 2_21-2_29
    発行日: 2018/09/30
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
     フォントの種類は数万を超えると言われている。それぞれの違いは文字の形にある。したがって,フォントデザイナーは,文字の形に意識的であると考えられる。しかし,フォントデザイナーは,自らの仕事を語る際に,文字の雰囲気のような,形状とは異なる特徴に触れることが多い。このことから,フォント制作の現場では,文字の形とともに,それとは別の水準が意識されていると考えられる。本研究では,文字の形状とそれ以外のものに注目して,フォントデザイナーへインタビュー調査を行い,フォントデザイナーが制作中に何を意識しているのかを確かめた。調査では4つの項目にもとづく計35 の質問を行った。発言を分析した結果,フォントデザイナーは,文字の形状と同時に,文字の周辺をも含めた「全体性」を意識していること,その「全体性」には「余白」,「文字組」,「世界観」という3つの水準が包含されていることがわかった。以上の結果を先行する知見とあわせて考察した。
  • ─内発的地域活性化に向けた花瑶族の服飾文化の再認識(1)
    阮 将軍, 植田 憲
    2018 年65 巻2 号 p. 2_31-2_40
    発行日: 2018/09/30
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
     本研究は,中国湖南省隆回県における花瑶族の女性の平服を取り上げ,そこに内包された生活文化の特質を明らかにすることを目的としたものである。現地調査により収集した167点の実物資料の整理・分類ならびにそれらの制作・使用に関する諸相についての聞き取り調査に基づき考察を行った。その結果,以下の知見を得た。(1)花瑶族の人びとは,周囲の動植物の習性や特徴を観察し,健康・成長・長寿・裕福などの生活願望を込めて平服に刺繍によって紋様を施した。(2)自然から得られた素材を存分に活用し,最終的には,大地へ還元する資源循環型の生活をつくりあげてきた。(3)平服の制作と使用を通して,家族・集落だけではなく,地域社会において活発なコミュニケーションが行われていた。(4)平服の制作と使用のみならず,洗濯・乾燥・保管などの行為には,時間意識・空間意識と連動した生活リズムが反映されている。
  • ー内発的地域活性化に向けた花瑶族の服飾文化の再認識(2)
    阮 将軍, 植田 憲
    2018 年65 巻2 号 p. 2_41-2_50
    発行日: 2018/09/30
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
     本研究は,中国湖南省隆回県における花瑶族の婚礼衣装を取り上げ,その文化的な特質を明確化することを目的としたものである。現地調査により収集した179点の実物資料およびそれらの制作と使用に関する聞き取り調査に基づき考察を行い,次の知見を得た。(1)男女両家が協力し制作した婚礼衣装は,両家の連帯を促す契機となり,そこに施された紋様には,厳しい自然環境に適応した生活態度や幸福を追求する志が反映されている。(2)婚礼衣装の頭巾や鏡および銀鈴などは,不浄を祓い,花嫁の身を守るものとされ,聖と邪の境を示す役割を担った。また,2枚の頭巾を用いることで,花嫁の髪を隠し貞淑を表した。(3)既婚の女性は自身が用いた婚礼衣装を着用し同郷の花嫁を見送った。それを通して自身と同様な花嫁への幸福を願った。(4)死に際して身につけた婚礼衣装は本人のみならず,実家の存在を表し,家族関係を維持する役割を果たしてきた。これら婚礼衣装は,霊魂とともに先祖がいる世界に届けられると信じられ,現実の世界と異界とをつなぐ役割を担ってきた。
  • 3次元幾何模様の制作支援
    山田 香織, 伊藤 慎二郎, 田浦 俊春
    2018 年65 巻2 号 p. 2_51-2_56
    発行日: 2018/09/30
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
     筆者等は,デザインにおける人間の創造的思考に対する技術の役割に注目している.技術の手助けを受けることで人間の思考空間が広がり,その結果,人間がそれまでに自分が持ち合わせていなかったアイデアに気づく,ないし,人間の能力が高まると考えられる.本研究では,幾何模様に焦点をしぼり計算機の手助けを受けることで,複雑度が高いために人が容易には頭の中で作り出せないが,本人が興味を抱く形状を生成する可能性を探る.そのため,計算機上に一旦制作された形状のパラメータを複雑化する方向に操作して外挿することで,新たな形状をつくることを試みる.実験の結果から,自ら制作したものと同程度に興味を惹かれるものの,自らの力では頭の中でイメージできなかった幾何模様が本手法により新しく生成されたことが確認された.
  • ―名古屋市サカエチカの社会実験を対象として
    伊藤 孝紀, 田淵 隆一, 三宅 航平, 西田 智裕
    2018 年65 巻2 号 p. 2_57-2_66
    発行日: 2018/09/30
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
     本研究は名古屋市サカエチカの社会実験を対象として, 地下街における空間特性と収益を検証することを目的とする。
     サカエチカと栄地区の連携について議論するワークショップをおこない, その結果を反映した社会実験を開催した。来訪者のサカエチカに対する意識および空間特性を把握するために意識調査と滞留調査をおこなった。加えて, 社会実験のイベントにおいて来訪者が購買する収益の特徴を把握するために収益調査をおこなった。
     意識調査から, 社会実験の各イベントにおける来訪者属性, 社会実験の評価, 社会実験に対する要望の特徴を把握した。滞留調査から, イベント内容に加え, 設置物の配置や種類が来訪者の滞留位置や時間に影響を与えることがわかった。収益調査から社会実験によるオープンカフェへの来訪者属性と商品の特徴を把握した。
     以上より、名古屋市サカエチカの社会実験における空間特性と収益を把握し、地下街の活用における新たな指針を示した。
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