デザイン学研究
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65 巻, 4 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • ―ユニバーサルデザインフォントの評価に関する研究−2―
    楊 寧, 須長 正治, 藤 紀里子, 伊原 久裕
    2019 年 65 巻 4 号 p. 4_1-4_8
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/06/20
    ジャーナル フリー
     本論文は,ユニバーサルデザインフォントの評価を中心に総合的に検証し,望ましいUDフォントのデザインに関する指針を得ることを目的とした研究の第2報であり,可読性の実験結果について分析を行い,計測したフォントの形態属性との相関性を探った。その結果,見出しフォントの場合には,若年者,経験者,高齢者3群ともに,同じ基準で可読性を判断していたことがわかった。属性に関しては,見出し丸ゴシック体のみ,フォントの形態属性との相関関係が見られた。本文フォントの場合には,高齢者群と若年−経験者群との評価結果の間に顕著な差異が示された。属性については,フォントカテゴリーごとに異なっていた。また,前報で報告した美感性の評価結果と比較した結果,実験参加者は「美しい」と「読みやすい」を同じ判断基準で評価していた傾向が見られた。ただし,属性に関してフォントごとに異なる結果となった。
  • ―ポートランドとシアトルを事例とする
    伊藤 孝紀, 田淵 隆一, 西田 智裕
    2019 年 65 巻 4 号 p. 4_9-4_18
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/06/20
    ジャーナル フリー
     本研究では, アメリカ合衆国のポートランドとシアトルを対象に, クリエイティブ産業における都市構造をソフト面とハード面に分類し, マクロ, メソ, ミクロスケールから, クリエイティブクラスが集積する要因を明らかにすることを目的とする。
     クリエイティブ産業の指標を設定し, マクロスケールの特徴を把握するための報告書調査とヒアリング調査, メソスケールの特徴を把握するための報告書調査と現地踏査, ミクロスケールの特徴を把握するための現地踏査をおこなった。
     マクロスケールの特徴として, クリエイティブクラスの割合の高さ, 日本企業の集積, コワーキングスペースの集積, 大企業の支援を把握した。メソスケールの特徴として, 公共空間と建築を連続的に演出する「演出空間」と, 小規模企業向けの新築とリノベーションされたオフィス空間を把握した。ミクロスケールの特徴として, 演出空間の空間特性を公共空間に対して「活用型」と「隣接型」に分類した。
     以上より, ポートランドとシアトルの特徴を明らかにし, クリエイティブクラスが作り出す都市構造の一端を示した。
  • 工藤 芳彰
    2019 年 65 巻 4 号 p. 4_19-4_28
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/06/20
    ジャーナル フリー
     『とんとんならべ』は中・高学年の「総合」科目を対象としたボードゲーム型の学習ツールである。ゲームプレイは東京都八王子市に伝わる昔話「とんとんむかし」に関する補助教材となる。添付キットによる同構造のオリジナルゲーム制作は主として高学年向けの調べ学習用の教材となる。本稿は2017 年度の2学期末から3学期にかけて実施した市内公立小学校における授業内検証をもとに,1)円滑な利用,2)学習意欲の刺激,3)グループワーク(協働)の充実,の3つに関する有効性について考察した。中学年(3年生3クラス)では,地域学習に関する単元の追加授業として1コマ(45分)のゲームプレイを実施した。高学年(5年生3クラス)では,同ツール使用を前提とした地域学習の単元(8コマ・計360分)をとおして,計24個のオリジナルゲームが完成した。事後アンケート調査の結果,両学年とも,同ツールが授業に対する児童の高い満足度や期待度の形成に寄与したことが明らかとなり,上記の3つの有効性を確認できたと考える。
  • 田代 雄大, 青木 幹太, 西薗 秀嗣, 榊 泰輔
    2019 年 65 巻 4 号 p. 4_29-4_36
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/06/20
    ジャーナル フリー

     本研究は、筆者らが研究・開発をしている介助用装着型補助具(以下、補助具)を要介護高齢者等の介助に使用した際の介助者の生理的負担の軽減について、人間工学の手法を用いた実験を通して検証することを目的している。実験は、①補助具を使用しない方法、②既製の介助ベルトを使う方法、③補助具を使う方法の3条件で行った。動作は、椅子に着座した被験者を抱え上げて立位姿勢にし、90°旋回して、他の椅子に抱え降ろすまでの移乗介助を行った。生理的負担の測定では、表面筋電図により、動作中の筋放電量を測定した。また、デジタルビデオカメラの記録データの動作解析により、姿勢や動作の分析を行った。その結果、表面筋電図では、補助具で背筋群の筋放電量が有意に小さいことが分かった。動作解析では、抱え上げ、抱え降ろす際の上体の前傾角度が補助具で有意に小さいことが分かった。このことから補助具を使うことにより腰部に集中していた生理的な負担が軽減することが明らかになった。

  • 徳久 悟
    2019 年 65 巻 4 号 p. 4_37-4_46
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/06/20
    ジャーナル フリー

     本論文は,シリコンバレー・モデルとしてのデザイン・シンキング(以下,DT)に着目し,日本の大企業を対象として,どのようにDTが活用されているかという点を明らかにした上で,今後,未採用の日本企業がDTを新たに導入するためのモデルを構築することを目的とする。DTに関連した文献調査を実施した結果,先行事例はコンセプト,ツール・メソッド・フレームワーク,ケース・スタディの3カテゴリに分類された。これらの結果を踏まえ,半構造化インタビューの設問の3つのパラメータ,理解度,導入レベル,発展性を設定した。10名のインタビュイーを対象としたインタビューを通じて得られたテキストデータをテキスト分析手法であるM-GTAを用いて分析し,5つの概念を発見した。本論文の貢献は,これら5つの概念を踏まえて構築された,日本の大企業がDTを新規導入する際に参照可能なモデルの提案にある。

  • ―デザイン経営の研究に向けて―トークイベントにおける集客不振解決の事例を通して
    下總 良則
    2019 年 65 巻 4 号 p. 4_47-4_54
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/06/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,非営利団体のトークイベントにおける集客不振に対して,デザイン戦略の見直しを試みた。この過程でインサイトに気付くことは,それまでに気づけなかった新たな改善の視点が得られることから,デザイン戦略を検討する際に有効であると考える。この実証が本研究の狙いである。イベント企画時に設定したSTP4Pからプロモーションを展開したが,イベント開催3週間前の時点で事前申込者数は0人であった。これを受け,消費者行動をSIPSモデルで考えた上で,デプスインタビューを実施した。ここで,イベント企画時には気づけなかったネガティブなインサイトを得ることができ,SIPSモデルとSTP4Pを再設計してイベントのコンセプトとデザイン表現を改訂した。その後,参加申込者数をモニタリングし,改善の要因を検討した。

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