本研究では,オンライン上のワークショップによる家具の商品開発を事例として、オンライン議論システムにおける配色・素材・フェイズについて可視化することを提案し,その有効性および課題を明らかにすることを目的とする。可視化に向けて,参加者が配色・素材を選択しやすい表現について評価調査をおこない,投稿への添付機能を作成した。また,配色・素材・フェイズの可視化による有効性について評価調査した。これらを踏まえ,オンライン議論システムへ添付機能と可視化を実装し,議論実験をおこなった。議論実験より,配色・素材・フェイズの可視化は,議論内容の把握を支援するため,投稿を促したり,構造的な議論を促したりする効果があることを明らかにした。
大規模な自然災害が発生すると,電気,ガス,上下水道など,インフラが停止する。発災直後に最も困るのは食事ではなく排泄行為である。これは,使用できるトイレの数が被災者に対して圧倒的に不足するためである。
そこで,支援物資にある飲料水や清涼飲料水用として広く普及している「縦開き型(上面を開ける形式)」,「横開き型(側面を開ける形式)」の二種類の段ボールから,誰もが簡単に同程度の品質で製作できる簡易組立式災害用段ボールトイレを考案した。本論文では,まず,これらの災害用段ボールトイレの製作方法を示した。次に,それぞれのトイレに対して使用時を想定した負荷を加え,各部の変形量を計測した結果を示した。実験結果から,いずれも変形量が0.01mm程度以内であり,十分な強度を有していることを確認した。
本論文は,今日の少子高齢社会を踏まえ,元気な高齢者に焦点を当てて,生活の質(QOL:Quality of Life)の向上を目的とするサービスの創出に向けた端緒として,日常生活の意識について特徴を明らかにしたものである。
東京都および九州7県に在住する60 ~ 74 歳の男性の独居世帯603 名,同居世帯1074 名,女性の独居世帯330 名,同居世帯1108 名を対象として,日常生活における満足度,楽しさ,不安,生きがいなどの9設問から構成されるWeb アンケート調査を実施した。その結果,生活意識の課題という観点からは,楽しさ,生きがいにおいては男性独居,不安においては女性独居に注力する必要があると考えられた。また,生活意識の向上や改善という観点からは,性別の違いを基本としながら,男性では世帯構造の違いも考慮した上で,3種類の生活意識から抽出された因子やクラスタをもとに,新たなサービスのデザインの検討が可能であると考えられた。
本研究では,観光及び特産品に焦点を当て,観光入込客数,特産品検索件数,観光指数及び特産品指数という4つの評価指標を扱い,都市魅力のパフォーマンスの度合いを定量的かつ簡易的に評価する都市魅力評価指標の開発を試みた。この都市魅力評価指標をもとに,国内38 都市における平成22 年と平成27 年での[体力][生産性]の差異や推移の関係を分析し,その有用性を検証した。
また,都市魅力評価指標を用いて,松江市と津市,静岡市と青森市の2ケースを取り上げ,自然,歴史・文化,温泉・健康,スポーツ・レクリエーション,都市型観光−買物・食等−,行祭事・イベントといった観光地点別に応じた6分類の観光入込客数をもとに,都市空間と自然空間の空間軸,静的アクティビティと動的アクティビティの体感軸によるフレームワークで体系化し,6分類ごとの強みや弱みを示した。とりわけ,観光政策との対応関係が分析できるものについては,シティプロモーションがその成果に表れていることや対応関係がみられないなどの事実との関係を考察した。
柴田らは,他者の考えを触発し議論を起こすための思索的将来像の構成要素と構造についてまとめたが,それを用いた議論の方法を明らかにすることが課題となっていた。本論では,多様なステークホルダーから多くの意見を収集することに加え,将来像に示された内容の解釈を深め,その内容を発展させるための議論のフレームワークが必要であると考えた。そこで,問いの設定とストーリー構築に優れたジャーナリストとの将来像に関する議論を実施し,それを分析的に振り返ることで目的のフレームワークを考案した。フレームワークは,社会システムが生みだす市民の「新しい考え方・行動」に関する意味の発見と,その考え方や行動を「促進する施策」の提案について,施策の実施のしやすさと影響力の異なる「流行」「習慣」「文化」のレイヤーで分けて検討するものである。このフレームワークを既存の将来像に関する議論に適用し,上下左右の枠の整合を考えながら将来像に示された内容の意味を解釈し,新たな提案を加えることで,将来像の内容を発展させる議論を実施した。
本稿は、フルー・コウルズ(Fleur Cowles,1908.2009)が1950年に創刊したアメリカの女性ファッション雑誌『Flair』を、同時代の他の女性誌と比較分析し、『Flair』の独自性を導き出すことを目的とする。『Flair』のデザインは、豪奢で趣向を凝らした雑誌として高い評価を受けた。しかしそのためコストの増加から、わずか1年で廃刊に至った。本稿で比較分析するのは、装幀デザイン、編集デザイン、紙質、カラー率とモノクロ率、活字率(読み物率)の五つの項目からである。他誌と比較分析した結果として『Flair』独自の特徴は、装幀デザインと編集デザインと紙質に特に顕著に見られた。つまり他の女性誌と比較して『Flair』に顕著にみられる装幀デザインは、抜き型(ダイ、die)、二重の表紙、毎号異なるロゴ、特色印刷、エンボス加工であった。また、他の女性誌には用いられていない『Flair』に特徴的な編集デザインは、小冊子、アコーディオン折りの紙、半ページ、抜き型の使用であった。しかし、綴じ込みカードは『seventeen』にも用いられていた。本研究によって『Flair』は、戦後アメリカの女性ファッション誌のデザインにおいて、他誌と比べて、独自の趣向を持っていた雑誌のひとつであることが明らかになった。