デザイン学研究
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  • 金 正和, 高窪 友樹, 和田 浩一, 畠山 雄豪
    2019 年 66 巻 2 号 p. 2_1-2_8
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/12/25
    ジャーナル フリー

     内閣府は小規模多機能型居宅介護事業所(以下,小多機)と地域密着型通所介護事業所(以下,地域通所)を推進し,共に「通い」,いわゆるデイサービスを提供している。しかしながら,「通い」についてほぼ同様の基準にもかかわらず,介護職員の比率が大きく異なっている。そこで本研究では両施設にて実施している介護サービス等に特性があると仮説を立てた。その結果,以下のことが明らかになった。①小多機と地域通所では,空間利用及び介護職員・利用者の行動に軽微な違いはあるものの,概ね同様であった。②小多機と地域通所では,実施している介護サービス等のデザインにほとんど違いがなく,同様の介護を行っていた。③介護職員の比率は,地域通所は基準が1:15のところ,介護現場では小多機と同様1:3に近い比率で介護が行われていた。④基準である介護職員の比率は大きく差があるが,ほぼ同様の比率で介護が行われていたため,空間利用及び介護職員・利用者の行動においてほとんど違いがなかった。

  • 敷根 伸光, 山中 敏正, 星野 准一
    2019 年 66 巻 2 号 p. 2_9-2_18
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/12/25
    ジャーナル フリー

     e-Learningシステムにおける教育メディアの時間構造のデザインは重要である。その中でも動画は学習者の事前知識に合わせて適した長さに分割することにより効率的に学習することができることが知られており、これはセグメンテーション効果(segmentation effect)と呼ばれる。早送り,巻き戻し,停止の操作で学習者は個々の理解や認知的な負荷に応じて学習のセグメントサイズの調節をしていると考えることができる。本稿では,学習者が学習メディアの途中で巻き戻し等の操作を行う際の心理メカニズムをセグメンテーション効果と認知負荷理論(Cognitive Load Theory)の観点から考察し,メディアのスライスの大きさと位置がシーン探索操作時の認知負荷に影響を及ぼすという仮説を立てた。そして,大学生以上の男女30名に対し数学の微分積分を学べる学習アプリを用いて3種類の異なるスライス条件でシーン探索課題の結果と印象評価を比較したところ,1発話単位(3秒程度)でメディアをスライスすることでシーン探索操作時のパフォーマンスが向上し,効率的に学習できることを明らかにした。

  • 楊 寧, 須長 正治, 藤 紀里子, 伊原 久裕
    2019 年 66 巻 2 号 p. 2_19-2_28
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/12/25
    ジャーナル フリー

     本研究では,小画面ディスプレイ,特にApple Watchを想定し,その画面表示環境下にて,日本語フォントの可読性と判別性を測定した。さらに,フォントの形態属性および差分についても調査を行い,小画面表示に適した読みやすく見やすいフォントの属性を探った。可読性に関しては,短文,連続文(大),連続文(小)の3つの提示条件ともに,濃度と字面面積の大きさから影響を受けていることがわかった。ただし,白背景か黒背景かによって,字面面積と濃度の直接影響の有無はまちまちであった。判別性に関しては,混同しやすい文字対を選定し,文字対を特定できる実験方法を用いて実験を行った。その結果,各フォントの特定の文字対の判別性を確認できた。また,差分分析を行った結果,ひらがなより,カタカナや英数字のような単純な文字対については,差分からの影響が明確であり,特定の文字対の字形の特徴も確認できた。

  • 下村 萌, 森田 昌嗣, 平井 康之
    2019 年 66 巻 2 号 p. 2_29-2_38
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/12/25
    ジャーナル フリー

     厚生労働省が取り組む子育て世代包括支援センターの活性化に向け,本研究はサービスデザインの視点から福岡市が行う子育て支援サービスと子育てユーザーニーズを比較し,現状の課題を明らかにすることを目的とする。まず,子育て支援サービスを把握するために文献調査及び子育て支援サービスを提供する保健師へのヒアリング調査を行なった。次に,子育てユーザーニーズを把握するために,子育て支援利用者へインタビュー調査を行なった。
     これらの調査から,福岡市の子育て支援サービスとして94項目が確認できた。また,福岡市子育てユーザーニーズの評価として118項目が抽出された。このうち45項目については満足である,73項目については不満・改善が必要であるという結果が出た。
     これらの結果を比較し,(1)経済的支援,(2)知識の蓄積,(3)頼られる祖父母,(4)仕事と育児の4つの観点で課題を抽出した。これらの課題から社会的子育てモデルへ変革する解決策として,経済的支援のニーズ把握,知識蓄積の仕組みづくり,仕事との両立支援ライフサポーターについて考察した。

  • 張 夏, 植田 憲
    2019 年 66 巻 2 号 p. 2_39-2_48
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/12/25
    ジャーナル フリー

     本稿は,中国四川省羌族居住地域における服飾を対象として,その特質を,文字資料ならびに図像資料,なかでも絵画資料に基づき抽出することを目的としたものである。絵画資料としては,南北朝時代(439~589年)と清時代中葉(1736~1850年)に編纂された巻子本である『蕭繹職貢圖』ならびに『皇清職貢圖』を取り上げた。文字資料に基づき羌人の変遷をまとめるとともに,両図に描かれた計17人の当該地域の人びとの服飾の分析を軸として,現地における聞き取り調査を踏まえ,以下の諸点を明らかにした。(1)羌族居住地域の服飾は,多様な民俗が混成しつつ形成されたものである。(2)今日,当該地域の服飾の特質は刺繍にあるとされているが,古くは,刺繍はむしろ少なく,当該地域において入手される大麻や羊毛,毛皮などの素材の利活用を通して独自の服飾文化が形成されていた。(3)農耕を生業とする地域であるか狩猟や牧畜を生業とする地域であるかによって服飾が異なっており,当該地域の服飾は,自然環境や生産方式の影響によって形成されてきた。

  • 杉本 美貴, 城川 真実, 大久保 爽一郎
    2019 年 66 巻 2 号 p. 2_49-2_56
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/12/25
    ジャーナル フリー

     本研究は,現代の工業製品の外観デザインにおいて「侘び」の美意識を表現する造形手法を導出することを目的に研究を行なった。そのために,侘び茶の完成者である千利休が茶事において重視した作為と,彼が好んだとされる茶道具の造形特徴に着目した。はじめに,千利休の作為を記した144件の逸話から作為の目的を5つに分類した。次に,彼が好んだとされる54点の茶道具の造形特徴と分類した5つの作為の目的とを照らし合わせることで,それぞれの作為を表現するための造形手法を導出した。
     その結果,『実用の作為』の造形手法が「使用性への配慮」「適材適所」,『未完の作為』の造形手法が「簡潔な表現」「余地を残す」「ネガティブをポジティブに転換」,『調和の作為』の造形手法が「形や素材のリズム感」「物,人,時間,空間への配慮と取り合わせ」「端正で安定感のある表現」,『隠伏の作為』の造形手法が「技巧を隠す」「最小限の変化量」,『婉曲の作為』の造形手法が「間接的な表現」「見立て」であることを導出し,事例となる工業製品の試作により,導出した造形手法の有用性が示唆された。

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