デザイン学研究
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66 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • ―和菓子生産者のための帯紙のプロポーションの基礎実験
    孔 鎭烈, 田中 隆充
    2020 年 66 巻 3 号 p. 3_1-3_10
    発行日: 2020/01/31
    公開日: 2020/02/25
    ジャーナル フリー

    本稿は,菓子等のパッケージに多く用いられる「帯紙」のプロポーションの好みについて,実験を行いその結果を検証し評価した.上述の帯紙は掛け紙とも呼ばれ,商品(箱)全体を包むことができる大きいサイズから紐のような小さいサイズまで様々であり,視覚的概念表現の規定はない.多くは,作り手,売り手が買い手の好みを体験的,感覚的に決めており,上述の帯紙に関して買い手の好みを学術的な側面からアプローチしている研究はない.
    本研究では,10 種類のアスペクト比のサイズの箱に帯紙を貼付しそのアスペクト比を用いて実験し,検証の結果,被験者の感覚的反応による視覚的対象の数的規則性を求めることができた.多くの被験者はパッケージの箱と見立てた平面状の長方形(以後設定条件と言う)に対して帯紙の割合が60%〜70%を占めるプロポーションが最も好むプロポーションであることが分かった.その反面,設定条件に対して帯紙の幅が細いプロポーションには好みが低くい結果になった.
    菓子等のパッケージで用いられる帯紙は買い手に対し視覚的効果が大きいため,そのサイズの効果を応用することで,今後のパッケージングデザインの考え方の一助になると考える.

  • ―グラウンデッドセオリーアプローチによる生活者インタビューの分析と支払いに関するサービスデザインの要件提案
    伊藤 晶子, 畔柳 加奈子, 櫛 勝彦
    2020 年 66 巻 3 号 p. 3_11-3_20
    発行日: 2020/01/31
    公開日: 2020/02/25
    ジャーナル フリー

    クレジットカードや電子マネー、デビットカード、QR コード、スマートフォン・アプリ(以下アプリ)を介しての送金など、現金以外のさまざまな支払い手段が利用され始めているが、日本においては、未だ現金での支払いが優勢である。その理由としてさまざまな社会的な要因が指摘されているが、生活者自身がどのような理由で支払い方法を選択しているか、という生活者の心理については明らかになっていない。
    そこで、本研究では10 名の生活者へインタビューを行い、グラウンデッドセオリーアプローチを援用し分析した。その結果、生活者が支払い方法を決定するためには共通のプロセスが存在していること、さらに、支払い行動については4パターンの行動原理があることを明らかにした。最後に、キャッシュレス社会に進展していくためのサービスデザインの要件提案を行なった。

  • ―名古屋市南大津通を対象として―
    伊藤 孝紀, 佐藤 拓海, 伊藤 誉, 西田 智裕
    2020 年 66 巻 3 号 p. 3_21-3_30
    発行日: 2020/01/31
    公開日: 2020/02/25
    ジャーナル フリー

    本研究は, 街路空間の利活用と再整備において歩行者天国および可動式防護柵の移動に着目し, 歩行者の数, 方向, 位置,経路, 意識の変化を把握することを目的とする。
    歩行者天国における, 歩行者の数, 方向, 位置を明らかにするため, 観測調査をおこなった。調査結果から歩道における歩行者の数が, 平常に比べ, 撮影箇所毎に増減し, 方向は, 南北の構成比の差が平常に比べて小さくなることが明らかになった。また, 位置は, 撮影箇所ごとの特徴を把握した。
    可動式防護柵の移動における, 歩行者の数, 方向, 位置, 経路, 意識を明らかにするため, 観測調査に加え, 歩行者の経路をみる経路調査, 可動式防護柵の移動への評価および街路空間の評価をみる意識調査をおこなった。調査結果から, 歩行者の経路は,1 つに集約し, 短い経路をとることが明らかになった。意識は, 可動式防護柵の移動と街路空間の評価における相関関係を把握した。また, 位置は, 防護柵の移動により歩行者が街路空間に広く分布することが明らかになった。

  • ―理工系人材のための創造性教育「コンセプト・デザイニング」ワークショップにみる物理的環境の使われ方を事例として
    川野 江里子, 野原 佳代子, ノートン マイケル, 那須 聖
    2020 年 66 巻 3 号 p. 3_31-3_40
    発行日: 2020/01/31
    公開日: 2020/02/25
    ジャーナル フリー

    本研究は理工系大生と美大生の異分野間で協働するイノベーション・ワークショップを対象とし,ワークショップの空間を,参加者が実際にどのように捉え使いこなしているのか,その実態を明らかにすることを目的としたものである。会場のしつらえとアンケートから得られた参加者の印象・評価との関係を考察することでワークショップの物理的環境と議論の進んだ場所についての仮説を構築し,その上で,行動・会話観察をもとに会場における参加者の動きとコミュニケーション出現及び議論の内容との関係を考察した。議論時に思考の外在化を促す仕掛けとして準備したホワイトボード等の活用は,議論の活性化につながるコミュニケーション出現の起点となっており,議論中に思考が拡がるにつれ,使用する空間が面的に広がり,壁や窓,柱などの広い空間を利用しているケースが見られた。また,議論中の場所移動の様子からは,全てのケースに共通していることは見られなかったものの,一部のケースで,ワークショップ空間や空間移動を思考のためのツールやコミュニケーションのきっかけとしている事が確認された。

  • ―ジェニー人形のキモノの形態学的特徴を通して
    丸山 萌, 田内 隆利, 久保 光徳
    2020 年 66 巻 3 号 p. 3_41-3_50
    発行日: 2020/01/31
    公開日: 2020/02/25
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,人形用キモノの形態学的特徴から衣服のデザイン要素としての「キモノらしさ」を明らかにすることである。人形用のキモノは,和裁の理論にとらわれない方法で,人のキモノをより特徴が際立つように簡略化し,再構成したものであると考えられる。人形用キモノの特徴を調査するため,1/6 スケールの着せ替え人形「ジェニー」用に作られた 17 点のキモノ作品例を収集し,分類した。実際にそれらの人形用キモノを再現し,制作過程の検証と形の観察を行った。各作品の特徴を人のキモノと比較し,材料と各パーツの構成の関係,制作の難易度,各部の幅の比率,人形の身体の形との関係に着目した。考察の結果,キモノらしさのデザイン要素は,人形用キモノ全体に共通する特徴としての一定の形の要素に加え,布幅に由来する各部の幅の比率,材料を無駄なく生かす使い方にあると結論づけた。また人形のキモノがこれらの要素を踏まえつつ,自由な解釈により制作された様子を示した。

  • ―発達性ディスレクシアを持つ読者を対象として
    朱 心茹, 高田 裕美, 影浦 峡
    2020 年 66 巻 3 号 p. 3_51-3_60
    発行日: 2020/01/31
    公開日: 2020/02/25
    ジャーナル フリー
    本研究では、発達性ディスレクシア等の学習障害に由来する読み書き困難にも配慮した書体として開発されたUD デジタル教科書体の新しい付属欧文書体が読みに与える影響を明らかにすることを目的に、読みやすさの客観的指標に関する実証実験と主観的指標に関する調査を行った。発達性ディスレクシアを持つ読者16名と発達性ディスレクシアを持たない読者19 名が研究に参加した。
    実証実験と調査の結果、発達性ディスレクシアを持つ読者にとってUD デジタル教科書体の新しい付属欧文書体が他の教科書体付属欧文書体及び一般的に使用されている欧文書体と比較してより読みやすいことが明らかになった。また、書体は読みやすさの客観的指標と主観的指標の双方に一定の影響を与えることが明らかになった。これらの結果から、発達性ディスレクシアに特化した書体の有用性が示された。
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