デザイン学研究
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68 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • ―街づくり協議会の社会実験を対象として
    伊藤 孝紀, 杉戸 亮介, 吉田 夏稀, 伊藤 誉, 西田 智裕
    2021 年 68 巻 2 号 p. 2_1-2_10
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル フリー

     本研究では,有効空地において開催された社会実験に着目し,有効空地の利用実態を明らかにすることを目的とする。
     社会実験について評価と要望を把握するため,意識調査をおこなった。また,来訪者の滞留時間と位置および行為を把握するため,滞留調査をおこなった。さらに,クーポンによる回遊の促しを把握するための回遊調査と,既存店舗との連携および告知場所の選定に向けた知見を得るために,歩行経路調査をおこなった。
     意識調査から,有効空地において3年間に連続で開催された社会実験における来訪者属性や社会実験に対する評価と要望を比較した。滞留調査から,社会実験における来訪者の滞留行為が滞留時間毎に異なり,滞留位置も各会場で異なることを把握した。回遊調査から,クーポンが複数会場の来訪を促すことを明らかにした。歩行経路調査から,会場への来訪者が多い経路を把握した。

  • 小川 直茂
    2021 年 68 巻 2 号 p. 2_11-2_18
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル フリー

     薬剤服用にまつわる種々の問題を改善するため、文部科学省は 2012 年に新しい学習指導要領を施行し、医薬品リテラシー教育体制の強化をはかった。本研究では、中学校および高等学校で医薬品リテラシー教育を受けた若年層を対象にアンケート調査を行い、医薬品リテラシーに関する実態を確認した。また、医薬品リテラシー教育および教育ツールのあり方を検討するための要件抽出を目的に調査結果の分析と考察を行った。調査の結果、医薬品情報について一定水準の理解度はあるものの、その知識が薬剤服用時の適切な行動に必ずしも結びついていない可能性が示唆された。また階層型クラスター分析を行った結果、回答者の傾向を6つのグループに類型化できることが分かった。最終的に、今後の医薬品リテラシー教育および教育ツールのあり方を検討する上で重要と考えられる4つの要件を抽出した。

  • 長岡市役所職員向け「デザイン思考体験研修」の事後アンケートをもとにした混合分析法によるデザイン思考の評価
    板垣 順平, 大坪 牧人
    2021 年 68 巻 2 号 p. 2_19-2_28
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル フリー

     イノベーションの創出や問題発見・解決を目指す方法の一つとしてデザイン思考が様々な分野で活用されるようになった。とりわけ,大学の教育プログラムや企業活動においてデザイン思考が導入されるとともに,その教育効果や能力向上についての議論も活発になっている。
     一方で,こうしたデザイン思考を導入した取り組みは,大学の教育プログラムや一部の企業活動に止まっている。とりわけ,自治体の行政サービスや施策の企画立案にデザイン思考が導入された事例や既往研究は見られない。その理由として,公共性や全体の奉仕者であることが義務付けられている行政職員にとって,エスノグラフィーのように特定の人びとを対象とした問題発見や課題設定との相性が良くないことや異分野協創の取り組みが困難であることがある。一方で,新潟県中部に位置する長岡市では,2018年からデザイン思考を行政サービスや施策の企画立案に取り入れるために,庁内の職員を対象とした「デザイン思考体験研修」が実施されている。
     本研究では,「デザイン思考体験研修」の事後アンケートの自由記述の結果から混合分析を行い,デザイン思考の有用性を示す要因を抽出する。それらの要因と既存のデザイン思考を導入した教育プログラムの教育効果を比較し,デザイン思考が行政サービスや行政施策の一助となり得ることを明らかにする。

  • 李 芊芊, 北 徹朗, 小林 昭世, 中原 俊三郎, 一川 大輔
    2021 年 68 巻 2 号 p. 2_29-2_34
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル フリー

     本研究は、高齢者の杖を利用した立ち上がり動作の特徴を検証することを目的とし、杖の本数 (なし:0本,1本,2本)、長さ (長,短)、位置 (後,中,前)の3要因を考慮した場合に足圧荷重や重心動揺がどのような差異を示すのかを調査した。被験者 (男女5名) は全て歩行非自立群に属しており、座位から立ち上がり動作と連続する立位動作について5秒間計測を行った。その結果、足圧荷重は杖の本数と突く位置に関わらず、長い条件において体重あたりの足圧荷重を相対的に減弱できることが明らかとなった。一方で、重心の総軌跡長は、杖が長い条件で有意に大きくなっていたため、杖が長い条件を利用することで身体をより楽に立ち上げることは可能となるが、立位後は重心動揺の安定性維持に注意が必要であることが示唆された。以上のことから高齢者が使用する杖は、体格に応じた適切な長さに設定することは重要であり、様々な個人の動作特徴に応じた杖をデザインし、使用条件を正しく選定していく必要性が示唆された。

  • 森 絵美, 松本 正富
    2021 年 68 巻 2 号 p. 2_35-2_42
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル フリー

     本研究は,病院で広報や行事の企画運営に従事するデザイン技能を有した事務職員である院内デザイナーの配置に対する経営者評価について,利用者サービス向上に向けた業務支援の視点からみた有用性と課題を明らかにすることを目的とした.医療機関経営者を対象とした半構造化インタビューを実施し,M-GTA(修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ)を用いて分析した結果,1)広報が充実し医療機関の特色が明確化すること,2)情報共有と業務の効率化につながること,3)内製物の質向上と継続的な維持管理に貢献すること,4)利用者に寄り添ったサービス提供ができることが,有用性として認められた.これに対し,1)人材育成の環境が整っていないこと,2)人材配置に関わる費用対効果の検証が難しいこと,3)その職域自体が未だ確立されていないことが課題として指摘された.

  • ─公共イノベーションラボを起点とした行政デザインに関する文献レビュー─
    中山 郁英, 水野 大二郎
    2021 年 68 巻 2 号 p. 2_43-2_50
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル フリー

     本稿では行政とデザインについて議論するための共通の土台をつくることを目的とし,行政とデザイン双方から歩み寄ってきた背景を,行政とデザインの統合の場としての「公共イノベーションラボ」を起点とし,文献レビューを中心に解説した。行政側では,1)行政課題の複雑化や,2)行政サービスのデジタル化,3)多様な主体が参画する形への行政改革の進展といった変化が起きており,それを解決推進する手段としてデザイン,特にサービスデザインが注目を浴びるようになった。また,デザイン側では,プロダクトなどの伝統的分野から,サービスやシステム分野への関心の広がり,また社会的課題をテーマとするソーシャルイノベーションのためのデザイン分野の活発な活動が,行政組織でのデザイン実践へと繋がっていったことを整理した。最後に,行政組織においてデザインを実践する際の論点として,1)政策過程のどの部分にデザインが介入するか,また2)行政組織とデザイナーがどのような関係性で協働するのか,という2点について展望を述べる。

  • 中島 瑞季, 松永 皐希, 横井 聖宏, 齊藤 剛
    2021 年 68 巻 2 号 p. 2_51-2_58
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル フリー

     電子書籍での読解における物語世界への没入感に着目し,レイアウトデザインに注意の集中を促すマスクをかけると読解時の注視点と没入感にどのような影響を与えるのか検討した.実験は輝度勾配を用いたマスク 2 種とマスク無しの計 3 種類に対して視線計測を行いながら読書をしてもらったのち,没入感評価とレイアウト評価を行うものである.その結果,マスクをかけると一定の場所に注視点が集まり,没入感の向上に繋がることが明らかとなった.しかし,マスクと文字色が近い場合はスクロール時に文字がちらつくことで気が散るため,読解に集中できず没入感の向上を望めない.そのため,マスク色と文字色の関係がスクロール動作によってどのように変わるのか考慮することがデザインを決定する上で必要となることがわかった.

  • ―デザイン概念とプロセスに関する分野統合的テキスト分析
    坂場 寛子
    2021 年 68 巻 2 号 p. 2_59-2_68
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル フリー

     インフォグラフィックスはさまざまな科目を教授するために活用され始めており, 新たな指導方法の 1 つとして注目されている。しかし現時点でのインフォグラフィックスは発展途上にあり,特に教育の分野において効果的なインフォグラフィックス制作のための方法論が確立していない。本論は,教育用インフォグラフィックスを制作するためのガイドラインの作成を目的として,インフォグラフィックスの方法論をデザイン概念とプロセスの観点から整理・集約した。4つの関連分野の代表的な文献を対象としたテキスト分析の結果,教育用インフォグラフィックス制作に関わるデザイン概念は「簡明」や「情報のまとまり」などの 20 項目に集約できることが明らかとなった。本稿で提案するガイドラインは,計画,データ処理,そしてインフォグラフィックスデザインの一連の工程に関して指針を示すものとなった。さらに実践応用の例として「英語基本動詞学習指導用インフォグラフィックス」のプロトタイプをガイドラインに準じて制作した結果,一定の有用性が確認された。

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