デザイン学研究
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69 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • ―スマートフォンアプリケーションを対象として
    土井 彩容子, 土井 俊央, 山岡 俊樹
    2022 年 69 巻 1 号 p. 1_1-1_6
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー

     本研究では任意のスマートフォンアプリを対象とし,回顧的に評価されるある一連のエピソード区間における時系列の満足度評価が総合満足度に与える影響を検討した。特に,行動経済学の分野で提唱されユーザ経験の検討においても利用されているピーク・エンドの法則が成り立つのか,またどういった要因が総合満足度に影響をあたえるのかを調査した。そのために回顧的なアンケート調査によって,満足・不満足に至った際のエピソードの各できごとにおける満足度を7段階で評価し,この評価結果に基づいて算出される様々な指標によって総合満足度を説明するための重回帰モデルを検討した。ピーク・エンドの法則に沿って作成した重回帰モデルをStep1,その他の指標を含めたモデルをStep2とした階層的重回帰分析を実施した。その結果,一連のエピソード中で最も満足度が低い点(ピーク値(最悪))とエピソード終了時の満足度(エンド値)によって,総合満足度を説明できる可能性が示された。

  • - 観客席種別に着目した分析
    伊藤 孝紀, 近藤 宏樹, 堀 裕和, 西田 智裕
    2022 年 69 巻 1 号 p. 1_7-1_16
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー

     本研究は,第1種公認陸上競技場の持続可能な管理運営を検討する上での基礎的研究と位置づけ,観客席種別毎にスタンド,立地条件および管理運営の特徴を把握し,所有者の意識を明らかにすることを目的とする。
     第1種公認陸上競技場を観客席種別によって2つに大別した。次に,スタンドや立地条件および管理運営のアイテム・カテゴリーを設定し,タイプ毎の特徴を把握した。すべて椅子席である施設は,観客を収容した利用が多いことがわかった。さらに,所有施設に対する満足度と今後におけるサービスを把握するため,所有者の意識調査をおこなった。芝生席を含む施設は大規模大会の開催に関心が低く,すべて椅子席である施設は多目的な利用に積極的な姿勢がみられた。

  • デン ナ, 阿部 眞理, 白石 照美, 森岡 大輔
    2022 年 69 巻 1 号 p. 1_17-1_26
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー

     本研究では、家具や内装用材料に用いられている樹脂材料を自然材料に置き換えることで、室内空間の質向上と樹脂削減が期待できると仮定した。家具および内装用材料としての使用が期待できるシート状自然材料を選択し、性質評価を行った結果、木糸・タケ・和紙を原料とした各生地が市販材料の性質に類似あるいは上回ることが明らかとなった。この結果をもとに、市販家具材料に類似点を持つ木糸生地、および市販家具材料にはない肌合い感、品質感を持つ和紙生地を用いた収納家具を提案した。また、市販壁材と類似した和紙生地とタケ生地、市販壁材にはない肌合い感と品質感を持つ和紙生地による内装用壁面パネルを提案した。その結果、家具材料および壁面材料ともに自然材料に置き換える方法を示すことができ、室内空間の樹脂量削減の可能性が示唆された。

  • ―先行する実証研究の再検討とその発展
    鈴木 公明
    2022 年 69 巻 1 号 p. 1_27-1_34
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー

     デザインが産業競争力の源泉として企業価値を増大させていることを実証するために,2001 年から2020 年までの,国際デザイン賞を受賞した旨の新聞報道に対するイベントスタディを実施した。
    全サンプルについて,平均累積異常収益率ACAR(0,1) =1.02%という結果を得たが,これは既存研究の結果よりも小さい値であった。受賞したデザイン賞別にACAR(0,1) を観測すると,Red Dot Award では1.53%で,過剰反応とその修正反応が観測され,iF Design Award では0.22%で,過小反応が観測された。
     全サンプルを対象とした累積異常収益率CAR(0,1) の経時的推移は漸増傾向であった。デザイン賞別に観測すると,Red Dot Awardの受賞については平均値が大きく漸減傾向,iF Design Award の受賞については平均値が小さく漸増傾向であった。
     国際デザイン賞の受賞は,適正化されてきた投資家による評価を通じて,企業価値を増大させると考えることができる。

  • 楊 鵬, 王 舜昌, 久保 光徳
    2022 年 69 巻 1 号 p. 1_35-1_44
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー

     本研究は,伝統的な道具である箕の形を構成する形態要素の抽出,その要素と箕形状の関係の定量的な解明,および箕の工学的特性をシミュレーションするための箕形の3DCAD モデルによる再現を研究目的としている。独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所に収蔵されている代表的な箕の三次元形状を取得し,その箕形の3DCAD モデル化を実施した。まず,箕の形態の観察データに対する主成分分析の結果と箕の専門家の助言のもと,国内の箕の造形様式を代表する「縫い合わせアジロ箕」,「編み上げアジロ箕」,「編み上げゴザ目箕」の3つの造形形式からそれぞれ1つずつを選択し,形態分析および再現の対象とした。取得された三次元形状より,箕の各部位の断面形状を示す特徴曲線群を取得し,この特徴曲線を基に再現されたCADモデルと箕の形状比較により,箕の主要な形態特徴が3DCAD モデルとして再現されていることを確認した。

  • ─ QOL 向上を目的としたサービスデザインの創出に向けて(2)
    佐藤 亮介, 田村 良一
    2022 年 69 巻 1 号 p. 1_45-1_52
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー

     本研究では生活習慣の改善の手法として生活時間記録に着目し,特に高齢者をターゲットとした生活時間記録ツールについて検討した。まず,国内外で政府や企業が実施している生活時間調査の事例を調査し,記録項目と記録方式を明らかにした。続いて,個人の健康管理向けの生活時間記録アプリからそれぞれが持つ機能を抽出した。さらに,実際に高齢者が生活上で気にしていることや日常で記録しているものをインタビュー調査し,高齢者向けの媒体や記録項目を明らかにした。以上の調査から要件を決定し,高齢者向けの生活時間記録ツールを試作した。それを高齢者に実際に使用してもらい,使用の前後で実施したアンケートから生活習慣への意識の変化を評価した。その結果,半数の高齢者に対して有意な向上がみられ,本ツールが高齢者における生活習慣の改善策の一つになり得ることが示唆された。

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