デザイン学研究
Online ISSN : 2186-5221
Print ISSN : 0910-8173
ISSN-L : 0910-8173
最新号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • ―市原歴史博物館のフィールドミュージアム構想に基づいて(1)
    陳 娟志, 高木 友貴, 青木 宏展, 植田 憲
    2026 年73 巻1 号 p. 1_1-1_10
    発行日: 2026/07/31
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

     本稿は、地域博物館における3Dデジタル技術の導入・活用の意義を明確化し、その導入・活用に向けた指針を提示することを目的としたものである。千葉県市原市に位置する市原歴史博物館を対象とし、同館の構想段階から3Dデジタル技術を導入し、文化財の取得・保存を行うとともに、3Dデータを活用したワークショップの実施を試みた。調査・考察の結果、地域博物館の構想段階における3Dデジタル技術の導入・活用の意義として以下を明確化した。(1)3Dデータ取得による文化財の再確認・再認識の機会の創出、(2)文化財をより直接的に体感する体験の実現、(3)3Dデータの取得・保存・活用による地域活性化の可能性。これらの意義を踏まえ、導入・活用の指針を提示した。(1)地域の代表的な文化財の3Dデータを取得することによって活用可能なデジタルデータとして保存する、(2)文化財の3Dデータの取得作業を地域住民に周知する、(3)ワークショップなどを通じて保存と活用を連動させる。

  • ―市原歴史博物館のフィールドミュージアム構想に基づいて(2)
    陳 娟志, 高木 友貴, 青木 宏展, 植田 憲
    2026 年73 巻1 号 p. 1_11-1_20
    発行日: 2026/07/31
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

     本稿は、千葉県市原市に位置する市原歴史博物館を対象に、文化財の3Dデータの取得・保存・活用の実践を行い、地域博物館を核とした文化財の3Dデータ取得・保存・活用の自律化の指針を導出することを目的としたものである。調査・考察の結果、博物館を拠点に縮減模型を用いたワークショップは、文化財の観察・理解を深めるとともに、文化財の顕在化に資する有効な手段であることが確認された。また、参加者の鑑賞傾向を①探求志向型、②文化財保護志向型、③体験志向型、④保守志向型の類型化を行った。さらに、学芸員・職員・サポーターを巻き込み、段階的技術習得・運営により協働体制の構築を試みた。これらの成果から、地域博物館を核とした文化財の3Dデータの取得・保存・活用のあり方を明確化した。(1)発信による文化財の顕在化、(2)縮減模型を介した文化財の再確認・再認識。それらを踏まえ、自律化指針として以下の3つを導出した。(1)各時代を代表する文化財・保存記録が急務な文化財を優先し取得する、(2)館内でのデータ管理・出力体制の整備を構築する、(3)日常業務として組み込み、長期間で運用する。

  • 串田 賢一, 丸尾 依子, 小畑 茂雄, 中野 賢治, 松田 美沙子
    2026 年73 巻1 号 p. 1_21-1_30
    発行日: 2026/07/31
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

     歴史・民俗・美術史の事例から,山梨の基層にある「らしさ」を導出した。あわせて,山梨博物館が収集した現代の小・中学生の絵画からも,現代における「山梨の自己像」を抽出し,その内容から,これを表層的な「らしさ」と位置付けた。
     歴史・民俗・美術史から導出した「山梨らしさ」には共通項が見られた。古代から道の結節点であった甲斐国(山梨)では,共同体の外部にある新しく優れたものに対する関心とその積極的習得の気風や,取得した技術を集団内で共有し地域になじませていく力が文化的特徴を形づくってきた。ただし,そのような特徴は歴史・文化の基層には存在するものの,表層的な「らしさ」(自己像)に覆われて認識しづらくなっている。また,表層にある自己像は,「山梨県」の形成とその概念の定着,その過程における行政施策と文化変容によって形成された可能性がある。
     本研究により導出した「山梨らしさ」を,「交流」「資源共有」「集団的上昇志向」「立体性」「複層性」の五つのキーワードにまとめた。

  • ―生徒らが真に求めている制服の解明
    小林 綾香, 村山 祐子
    2026 年73 巻1 号 p. 1_31-1_40
    発行日: 2026/07/31
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

     本研究は,ジェンダーレス制服の導入が生徒の利便性や満足度に与える影響を明らかにし,生徒と教員のニーズを把握することで,今後の制服デザインへの貢献を目的とする。兵庫県の一公立中学校が行ったアンケート調査をもとに,現行制服への満足度調査,試作デザインへのフィードバック収集,最終案の評価という3段階のプロセスを経て検討を行う。分析方法にはクロス集計を用い,性別や立場による意見の違いを分析し,生徒の真のニーズを反映した制服像を探る。ジェンダーレス制服は,多様な性への対応策として年々増加している。しかし,調査の結果,生徒がジェンダーレス制服を着用する主因は,性に対する違和感よりも,機能性や自己表現のひとつであることが明らかとなった。このことから,多様なニーズに応え,利便性や心理的快適さ(Well-being)を両立させる“ダイバーシティ制服”の必要性を提唱し,生徒の着用体験の向上を目指す。

  • ―あいちトリエンナーレ2019名古屋市内のまちなかを事例として
    鈴木 結加里, 鈴木 篤也, 西田 智裕, 伊藤 孝紀
    2026 年73 巻1 号 p. 1_41-1_50
    発行日: 2026/07/31
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

     本研究では,あいちトリエンナーレ2019名古屋市内のまちなかにおける,キュレーターによる企画(意図,照度環境)がアート作品と展示空間を通して,鑑賞者にどのように伝わるのかを把握することにより,アート作品と展示空間の関係や特徴を明らかにすることを目的とする。はじめに,キュレーターの意図を把握するために意図調査をおこない,鑑賞者の作品に対する意識と理解度を把握するために意図評価調査をおこなった。さらに,展示空間の照度の度合いを把握するために照度分布調査をおこなった。まちなかにおけるアート作品の展示空間は, キュレーターによる展示の手法が, 地域の文化・歴史を踏まえ, 建物の用途・構造・特徴を生かした照度環境を創出していることを明らかにした。以上より,まちなかの展示空間は,アートの専門知識の有無に関わらず,あらゆる属性の鑑賞者が等しく作品を鑑賞できる可能性があることを示していた。

  • ―『1000ピクトリアル・シンボル』に見るルドルフ・モドレイの1930-40年代ピクトグラムのデザイン原理
    伊原 久裕
    2026 年73 巻1 号 p. 1_51-1_60
    発行日: 2026/07/31
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

    ルドルフ・モドレイの著書『Handbook of Pictorial Symbols』(1976)には、1970年代の公共案内用ピクトグラムの便覧の他に、1930-40年代に制作された無数のヴァリエーションを有するピクトグラムが掲載されていた。後者のピクトグラムへの評価には批判的なものが多いが、そのデザイン原理については未検討である。そこで本研究は特に人型ピクトグラムを対象に、そのデザイン原理を考察した。まず標準的ピクトグラムを特定し、他組織との共同作業で確立したことをあきらかにした。次にチャートでの用法の比較分析を通して、ピクトグラムのヴァリエーション創出の要因を探り、それを説明する概念として「劇化」に注目した。劇化はさらに連続コミックなどへの展開を基礎づける概念としても用いられ、モドレイは標準的ピクトグラムの形態を担保しつつ、そうした領域へのピクトグラムの応用を図っていた。本研究は以上の標準化と劇化の両立がモドレイのピクトグラムの特徴的なデザイン原理であると結論づけた。

  • 田中 遵, 山﨑 明史
    2026 年73 巻1 号 p. 1_61-1_70
    発行日: 2026/07/31
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

     自然環境,資源,エネルギーなど,地球や人間に関する問題は相互作用の関係にある。例えば,地球温暖化や人口増加により水資源が不足すれば,淡水を確保するためのエネルギーが必要となる。エネルギーの一つである原子力発電は,温暖化の原因となる化石燃料を排出しないメリットがある反面,放射性物質の厳しい管理を必要とするデメリットが存在する。フィンランドでは,100,000年間安全管理をする高レベル放射性廃棄物の最終処分場を設置しているが,日本においても同じ課題がある。2013年に開始したエコデザインの授業内容を基に,2017年より授業内容を検証し,2019年から授業名をサスティナブルデザインに変更した。本研究では,授業期間である 2013年から 2024 年までのレポートと演習課題のデータを集計・分析し,2025年に授業を受けていない学生に行ったアンケートをもとに授業の優位性を比較・分析し,今後の環境問題を取り扱った授業のあり方を探求した。

  • ―透析装置デザインの歴史と将来の透析装置デザイン(2)
    谷口 武司, 小野 健太, 渡邉 誠
    2026 年73 巻1 号 p. 1_71-1_80
    発行日: 2026/07/31
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

     本研究は,透析装置を複数のモジュールの集合体として捉え,医療従事者のユーザーエクスペリエンスに基づき,装置デザイン改善を試みたものである。近年,透析装置は自動化や高性能化が進んでいるが,操作の複雑さや装置外観の煩雑さといった課題が依然として存在している。本研究ではまず,透析技士の操作状況を観察・分析し,技士のタスクおよびアクセスするモジュールを抽出した。そして,各モジュールにアクセスする際のユーザビリティ分析で血液回路装着時の身体的負担,チューブ配置による視覚的煩雑さ,モニタへのアクセス性の課題を明らかにした。特に血液回路の構成と配置に着目し,対応するモジュールの再設計として,血液回路のプリカセット化,体外循環部の一体カバー化,モニタの配置を検討したプロトタイプを2案制作した。透析技士5名による検証の結果,一つの構成案は,モニタの最適な高さ設定と圧力ポート位置にいまだ課題があるものの,総じて高く評価され,操作性の向上や視覚的煩雑さの軽減などの効果が確認された。ユーザーエクスペリエンスに基づいて透析装置をモジュール単位で再構成する本アプローチは,透析装置デザインにおける医療従事者の作業性と,治療環境の改善に有効であることを示している。

feedback
Top