日本補助犬科学研究
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3 巻, 1 号
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総説
  • 東海林 克彦
    2009 年 3 巻 1 号 p. 2-8
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/02/10
    ジャーナル フリー
    本論は、補助犬のより一層の推進方策の検討に資することを目的として、動物愛護管理法における補助犬の制度的な位置づけを明らかにするとともに、抽出された制度上及び思想上の課題についての考察を行ったものである。
  • 鈴木 宏志
    2009 年 3 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/02/10
    ジャーナル フリー
    我が国における盲導犬の慢性的不足は、社会文化的背景を含め種々の要因が関与すると思われるが、育種・繁殖学的見地からは、その極めて特徴的な育成システムが盲導犬不足を助長する要因のひとつであると考えられる。すなわち、盲導犬は雌雄ともに避妊・去勢を受けた後に訓練を開始するために、優秀な盲導犬であってもその遺伝子を繁殖によって次世代に伝える術がない。この育成システムは、優秀な遺伝子を廃棄することに等しく、育種の概念に逆行するものと思われる。最近、この問題を克服すべく、生殖工学の応用による盲導犬の人工繁殖技術の開発、そして、その効果を最大限に発揮させるための、盲導犬のDNAレベルにおける適性評価系ならびに遺伝子資源バンクの構築が試みられている。
原著論文
  • 水越 美奈, 及川 友恵, 北口 めぐみ, 細井 淳子, 中村 有佳, 関口 歩, 中村 透
    2009 年 3 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/02/10
    ジャーナル フリー
    盲導犬では子犬期の約1 年間、子犬飼育ボランティア(以下、PW )の家庭で育てられる。PW に対してより適切な指導を行うことを目的に、経験あるPW と新規PW の間で子犬の飼育初期におこる問題の相違について調査を行った。対象はPW 経験がある76 家族と新規PW 102 家族、計178家族とし、3 ヶ月齢時に「排泄の失敗」、「飛びつき」、「吠え」、「拾い食い」、「散歩時の引っ張り」の有無について二者択一、その他の問題については自由記述でアンケートを行った。PW経験者が抱える平均問題数は3 . 0 件(中央値3、最頻値0)、PW 未経験者では4 . 2 件(中央値4、最頻値5)であった( p< 0 . 01 )。また「排泄の失敗」、「飛びつき」、「破壊行動」、「甘噛み」では明らかに未経験者での出現率が高い( p< 0 . 01 )ことがわかった。出現率に差が認められた項目では以前のPW 経験が役立ったことが示唆された。つまり、これらの項目では以前のしつけの方法が他の犬にも応用できたと考えられた。「吠え」や「拾い食い」などでは出現率の差はほとんど無く、これらの問題ではその個体に合った具体的な指導が必要であると考えられた。
  • 林 一彦, 渡邉 佳恵, 渡邉 巌, 森 大智, 浅沼 利映, 大内 希, 前田 剛, 松本 敬
    2009 年 3 巻 1 号 p. 23-26
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/02/10
    ジャーナル フリー
    1.5~2歳齢の盲導犬訓練中のラブラドール・レトリバー10 頭(雄6頭,雌4頭)の口腔内細胞像について、舌、頬、歯肉、硬口蓋の4 部位をサイトブラシを用いて擦過し、Papanicolaou 染色を施して検討を行った。その結果、舌、歯肉、硬口蓋の粘膜では角化扁平上皮細胞が多く観察され、また、頬粘膜では非角化扁平上皮細胞が多く認められた。その他の所見としては、好中球の出現数は頬粘膜が3 . 0 個ともっとも多く、つぎに歯肉、口蓋の順に多く認められ、舌粘膜が最少で0 . 8 個であった。細菌のコロニー(集塊)も種々な割合で観察され、頬粘膜が最多で13 個となっており、舌粘膜が4 . 0 個ともっとも少なかった。一方、カンジダはまったく観察されなかった。
事例研究
  • ─ 実験用ハーネスの試作と盲導犬訓練士による試用評価 ─
    飯島 浩, 児玉 真一, 田中 理, 高柳 友子, 中村 透, 福井 良太, 近藤 真乃, 児嶋 秀夫
    2009 年 3 巻 1 号 p. 27-30
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/02/10
    ジャーナル フリー
    現用盲導犬ハーネスの問題点を把握するため、訓練場面の観察、訓練士にヒヤリングとアンケート調査を実施した結果、上肢の違和感、改善の必要性があるなど、課題整理ができた。改善策として、実験用ハーネスの設計・試作を行い、実験用ハーネスで訓練士2名による基本的な訓練動作(直線歩行・角歩行・障害物歩行・段差歩行)の試用評価を実施した。結果、今回試作した実験用ハーネスのハンドルの長さ・角度調節機構は好評であり、人工皮革製の胴輪は好印象であった。一方、ハンドルと胴輪のジョイント部の軸構造は、動きがシャープに伝達する面と遊びがないと不自然であるという相反する要素となり、大きな課題となった。今後、良好な結果が得られたハンドル構造と胴輪を活かし、ハンドルと胴輪のジョイント部の構造についてさらに検討を重ね、利用者の検証も含め引き続き利用しやすい盲導犬ハーネスの開発を進めたい。
  • 山田 大, 多和田 悟, 益野 健平
    2009 年 3 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/02/10
    ジャーナル フリー
    盲導犬として多く活躍するラブラドール・レトリーバーは、食べる事が好きな犬種である。視覚障害者と生活する盲導犬は、スーパーやレストランなどの食べ物を扱う公共の施設に出入りする機会がある。そのような場所で、盲導犬は人の食べ物に反応してはならない。訓練の段階で、食べ物に反応する犬がどの程度いるか調査をした。その中でも特に食べ物に対する反応が強い犬に対して、拒食訓練を行った。そして拒食訓練終了後にスーパーやレストランを利用して、模擬試験的にその犬の食べ物に対しての反応の変化を検証した。特定の食べ物や状況で勝手に人の食べ物を食べない事を教える事は可能であると考えられた。しかし一度人の食べ物の味を知り、興味を持ってしまった犬に対して、食べ物に全くの興味を持たない事を教える事は難しいと考えられた。盲導犬の候補となる子犬の頃から、人の食べ物に対して反応しない事を教えておく必要性がある事が示唆される。
  • 平野 竜, 多和田 悟, 益野 健平
    2009 年 3 巻 1 号 p. 38-40
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/02/10
    ジャーナル フリー
    盲導犬使用者の多くが、盲導犬と歩行すると「風を切るようだ」と表現する。しかし、実際に盲導犬との歩行が風を切るように速いかどうかは、使用者の主観的な報告のみである。そこで本研究では、自然な歩行が出来ているかを知るための指標として使われている歩行比を用いて、盲導犬と白杖での歩行を比較した。歩行比とは歩幅÷歩行率( 1 分間の歩数)のことである。条件1(障害物がない道での歩行)における被験者9 名全員の歩行比の平均は、盲導犬より白杖の方が0 . 0060 m /(歩数/ 分)に近いが、著しい差が認められた者はいなかった。また、条件2(障害物がある道での歩行)における歩行比は、被験者2名ともに白杖より盲導犬の方が0 . 0060 m /(歩数/ 分)に近く、3 回の計測で盲導犬では歩数や所要時間に大きな差は出なかった。これより、「風を切る歩行」の要素のひとつは、障害物回避であることが示唆された。
現場報告
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