身体障害者補助犬法では公共施設などの不特定多数の人が利用する場所への補助犬の受け入れが義務付けられているが、法律成立後も補助犬同伴の受け入れ拒否事例は報告されている。2012年 4月に補助犬法成立 10年を記念して盲導犬受け入れ拒否ゼロを目指した『渋谷ハチ公盲導犬パレード』が飲食店が立ち並ぶ渋谷駅周辺で行われた。このような啓発が飲食店に対して実際に効果があったのかどうかについて、渋谷駅前の飲食店と、啓発活動が行われていない池袋駅前の飲食店、各 50店舗に対して、比較調査を行った。調査の結果、パレード自体の認知も少なく、啓発が行われていない地域との差はほとんどなかった。また飲食店の補助犬法に対する認知は一般成人に対するものとほぼ変わりがなかった。飲食店に対して受け入れを啓発するには、盲導犬と共に街頭を歩き、受け入れを呼びかけるのみでは不十分であり、飲食店に焦点を絞った啓発を行うことが必要であると考えられた。
盲導犬増加に向けての課題は育成頭数だけでなく、視覚障がいを有する当事者の意識も大きい。盲導犬使用を希望しない視覚障がい者がいる中、盲導犬使用の動機を明らかにすることは、盲導犬使用希望者の増加へと導く手掛かりになると推測できる。そこで本調査では、現役盲導犬使用者 9名に、盲導犬使用の動機について半構造化聞き取りを実施し、使用を決めた理由についての分析を実施した。その結果、動機を「接近理解(納得)型」、「目標達成型」、「混合型」の 3種に大きく分類することができた。このうち最も多かったのが「接近理解(納得)型」であり、身近なところで直に盲導犬使用者と接し、盲導犬への理解を深めていくことが、使用を決める大きなきっかけとなっていたことが判明した。今後このような機会をいかに広げていくかが、盲導犬使用希望者を増加させる一つの鍵と考えられる。
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