筆者らは, CSCLシステムであるKnowledge Forumを小学校へ導入し, 遺伝子組換え食品問題に対する社会的意思決定をテーマとした, 小学生のための科学教育カリキュラムを開発・改善している.本研究では, 改善したカリキュラムの有効性を評価する一環として, 単元開始時, 中盤, 終了後の3時点で, 遺伝子組換え食品問題に対する個人的意見を記述させ, 学習の進行に伴う変化を検討した.その結果, 学習の進行に伴って賛否の立場の分布が変容したことに加え, その理由の記述が, イメージによるものから, エビデンスに基づくものや提案型のものへと変化したことが明らかになった.カリキュラムの目標である社会的意思決定の能力を獲得したことにより, 学習者は, 論争性の把握や対立の解消が明示的に要求されない場面においても, 賛否両論のエビデンスやそのバランスを考慮して, 建設的な意見を表明できるようになったといえる.
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