日本科学教育学会研究会研究報告
Online ISSN : 1882-4684
ISSN-L : 1882-4684
20 巻, 2 号
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表紙・目次
第1部 研究発表
  • 坂本 美紀, 藤本 雅司, 稲垣 成哲, 山口 悦司, 竹中 真希子, 大島 純, 大島 律子, 村山 功, 中山 迅, 近江戸 伸子, 橘 ...
    原稿種別: 本文
    2005 年 20 巻 2 号 p. 1-6
    発行日: 2005/09/09
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    筆者らは, CSCLシステムであるKnowledge Forumを小学校へ導入し, 遺伝子組換え食品問題に対する社会的意思決定をテーマとした, 小学生のための科学教育カリキュラムを開発・改善している.本研究では, 改善したカリキュラムの有効性を評価する一環として, 単元開始時, 中盤, 終了後の3時点で, 遺伝子組換え食品問題に対する個人的意見を記述させ, 学習の進行に伴う変化を検討した.その結果, 学習の進行に伴って賛否の立場の分布が変容したことに加え, その理由の記述が, イメージによるものから, エビデンスに基づくものや提案型のものへと変化したことが明らかになった.カリキュラムの目標である社会的意思決定の能力を獲得したことにより, 学習者は, 論争性の把握や対立の解消が明示的に要求されない場面においても, 賛否両論のエビデンスやそのバランスを考慮して, 建設的な意見を表明できるようになったといえる.
  • 吉川 厚
    原稿種別: 本文
    2005 年 20 巻 2 号 p. 7-10
    発行日: 2005/09/09
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    教育機関や企業内では、様々な学習手段を使って知識の獲得がおこなわれている。しかし、せっかく得た知識を"いつ"、"どのように"使うのかを学ぶことは大変難しい。従来、企業内では、知識の獲得のためにOJTが利用されてきた。しかしOJTにおいても、学ぶべき手がかりがないことが多く、かなり長い年月をかけてやっと必要とされる知識が習得できる。このような状況を踏まえ、新たな知識獲得の学習手段として、ナラティブアプローチを使った教材の開発を行った。これは、マンガを使ってリアルな一つの物語を描写し、加えてストーリーや場面の中に埋め込まれたビューポイントを見つけながら読むものである。これを読んだ後に、グループ形式の討議でおこなうことで、知識を"いつ"、"どのように"使うかを含めた効果的な学習を促進することができた。
  • 銀島 文, 中村 順吉, 福田 信正, 山崎 一政
    原稿種別: 本文
    2005 年 20 巻 2 号 p. 11-14
    発行日: 2005/09/09
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    子どもの理数離れや学力低下などの話題が注目を集める昨今, この問題を解決すべく, 学校内外での様々な取り組みがなされている。石川県金沢市においても, 子どもの科学に対する興味関心を高めるための学校外の取り組みがなされており, その中で重要な役割を果たしているのが金沢子ども科学財団である。本稿では本財団の役割を概観し, その成果を検討する。このことにより, 科学教育における地域の人材や諸機関の連携のあり方を考えるための示唆を得られると考える。財団の取り組みの成果は, 下記のとおり整理できる。①子どもや保護者の科学や科学教育に対する関心の高まり。②科学教育に携わる指導者の育成。③同種コミュニティ間のネットワークの活性化, および異種コミュニティ間のネットワークの構築。
  • 稲垣 成哲, 舟生 日出男, 山口 悦司, 出口 明子
    原稿種別: 本文
    2005 年 20 巻 2 号 p. 15-18
    発行日: 2005/09/09
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究は, 科学教育研究における研究者と実践者, ないしは, 社会との連携の問題を考察するための事例研究である.取り上げる事例は, 稲垣ら(2005)と同様に「再構成型コンセプトマップ作成ソフトウェア(あんどう君)」にかかわる学習コミュニティとする.当該コミュニティの発展に寄与した第4層グループ(アクティブ・グループ)のメンバーを対象にして, 電子メールによる聞き取り調査と面接調査を実施し, その特徴と役割について記述した.その結果, アクティブ・グループのメンバーは, 第1層から第3層までの研究開発グループとソフトウェアの意義や価値を共有しつつも, その普及においては, 研究開発グループとは異なるスタンスに立ち, より教育実践の側からのアプローチをしていることがわかった.
  • 米田 麻美
    原稿種別: 本文
    2005 年 20 巻 2 号 p. 19-24
    発行日: 2005/09/09
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本稿では、米田・浅田(2000)が行なった園内・校内研究についての事例研究を取り上げ、実践者の協働の場として園内・校内研究を新たな観点から再検討することによって、学校改善の場として活用していくための示唆を得ることを目的とした。その結果、実践者の相互作用体としての学校組織という、より統合的な観点から、学校改善に役立つ園内・校内研究に関する事例研究の蓄積が必要であることが明らかになった。
  • 三浦 宗介, 杉本 雅則
    原稿種別: 本文
    2005 年 20 巻 2 号 p. 25-30
    発行日: 2005/09/09
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    合奏や合唱において, 複数の学習者に対し, 触覚フィードバックを用いてリズムを伝えることで, 他者のパートに惑わされることなく, 自分のパートを正しく演奏できるよう支援するシステムT-RHYTHMを提案する.T-RHYTHMは, 伴奏者の演奏からテンポを抽出し, それを元にリズムを無線通信で伝える.
  • 山口 尚子, 楠 房子
    原稿種別: 本文
    2005 年 20 巻 2 号 p. 31-34
    発行日: 2005/09/09
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    携帯端末PDA(Personal Digital Assistant)を使用し、博物館での静的な展示への学習支援を行い、展示物の特徴を加えることで子供達の注意をより引き付けるデジタルコンテンツを提案している。その中で、博物館展示に対し、展示物である動物や魚の特徴や生息場所などの情報を図解によって視覚的にデザインした展示解説を開発した。展示の特徴や名称など展示にある情報に関するクイズを出題し、解説を図解で直感的にわかるようデザインした。展示に+αの遊びの要素を加えることで展示への抵抗感をなくし、来館者と展示物の距離を縮めることを目的としている。展示内容を低年齢層にも理解しやすい形で提供し、展示への興味を促すきっかけづくりを行った。
  • 竹中 真希子, 黒田 秀子, 出口 明子, 大久保 正彦, 稲垣 成哲
    原稿種別: 本文
    2005 年 20 巻 2 号 p. 35-40
    発行日: 2005/09/09
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    筆者らのプロジェクトチームは, ケータイを利用したフィールドワーク支援システムを開発し, 2002年度から小学校の授業に導入してきている.こうした実証実験を始めて, 約4年が経過してきたが, その重要な成果の一つは, ケータイを媒介にして授業と保護者との連携が緊密に形成されてきたことである.その連携の仕方は, 主にWebを通して授業を参観する遠隔参加タイプと自宅での取材活動を展開する直接参加タイプがある.本稿では, 保護者との連携という視点から, 筆者らが2002年度から展開してきた実証実験を振り返り, 授業へのケータイの導入が学習コミュニティの拡張をもたらす可能性を例証する.
  • 難波 裕貴, 三宅 志穂, 稲垣 成哲, 野上 智行
    原稿種別: 本文
    2005 年 20 巻 2 号 p. 41-46
    発行日: 2005/09/09
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究は, 現在, 環境省に支援されている「こどもエコクラブ」の基本モデルとなった事業「2001年・地球ウォッチングクラブ・西宮(Earth Watching Club : EWC)」を起ち上げた兵庫県西宮市に着目し, 1985年-2001年に同市が環境教育事業を成立させてきた過程について探求した.同市において, 行政の立場から環境教育事業推進に寄与してきた人物へのインタビュー調査, 及び文献資料を中心として検討した結果, 西宮市の環境教育事業成立過程について次の4期があることを見いだした.(1)市民参加による環境教育の創始期(1985年-1990年), (2)行政と学校間の連携開始期(1990年-1992年), (3)行政主導型から市民主導型への環境教育システム転換期(1992年-1994年), (4)環境教育システムのネットワーク構築期(1994年-2001年).
  • 伊藤 真之, 小川 正賢, 武田 義明, 丑丸 敦史, 田結庄 良昭, 蛯名 邦禎, 近江戸 伸子, 白杉 直子, 長坂 耕作, 田中 成典 ...
    原稿種別: 本文
    2005 年 20 巻 2 号 p. 47-51
    発行日: 2005/09/09
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    科学・技術が高度に発達した社会において、(a)環境問題等の解決手段として、(b)知的探求活動として、市民の科学・技術にかかわる問題の調査・研究能力を高めてゆくこと(エンパワーメント)が大きな意味を持つ。我々は、神戸大学大学院総合人間科学研究科に設置された発達支援インスティテュート/ヒューマン・コミュニティ創成研究センターの研究プロジェクトとして「市民科学に対する大学の支援に関する実践的研究」の取り組みを始めた。本プロジェクトは、神戸を主なフィールドとして、幅広い年齢や素養をもつ市民が、大学の支援のもとに、科学リテラシーを高めるとともに、自らが調査・研究能力を獲得してゆく持続可能なシステムとそれを担う組織、人材のあり方を実践的に探り、日本の社会に適したモデルを構築することを目指す。
  • 鈴木 真理子, 永田 智子, 中原 淳, 西森 年寿, 笠井 俊信, 鈴木 秀之
    原稿種別: 本文
    2005 年 20 巻 2 号 p. 53-56
    発行日: 2005/09/09
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    教員養成課程の自然科学系に所属する大学生が実験活動をデザインして実施し, その結果をリフレクションするという, CSCL環境を伴う「思考と活動の循環」を組み込んだ授業に, 自然科学者が専門家として参加した.ここでは, 専門家の参加が受講生の学習にどのような影響を与えたかについて論じる.
  • 辻 宏子, 渋谷 久
    原稿種別: 本文
    2005 年 20 巻 2 号 p. 57-60
    発行日: 2005/09/09
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究は, これまでの研究活動を, 教育学研究における学校現場と研究者の間のコラボレーションという点から捉えなおす。これより得られるこれからの教育学研究における新しい視点に対して, 筆者らの現在の活動をもとに考察・検討する。本研究では特に数学教育学研究における取り組みを考え, 対象とする学校段階は中学校とする。これまでの学校と教育学研究とのかかわりは, 研究対象として協力を得るなどの形態が主であった。これに対して本研究では, 研究者を学校とともに子どものための学習環境を構築するデザイナーとしての役割と学習環境を構成する要因の一つとしても位置づけられるものとして捉える。これによって, 研究者は学習者である子どもへ影響を直接的にも間接的にも与えるものとなる。
第2部 特別講演
  • 小川 正賢
    原稿種別: 本文
    2005 年 20 巻 2 号 p. 61-66
    発行日: 2005/09/09
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本講演は, 日本科学教育学会が創設30周年の記念事業スローガンとして採用した「社会に提案し社会と協働する科学教育研究をめざして-社会と対話する科学教育研究-」の一つの実現形態である「社会・実践者・研究者の真の協働による新しい科学教育研究」の姿を構想してみるという試みである.ここでは, 新しいタイプの科学教育研究の姿を, 研究活動と教育実践活動という本来異なる性質をもつ二つの相互独立的な活動の相互関係と相互作用の姿とみる見方を批判的に乗り越えて, 両活動が統合された新しい活動としての「協働型研究実践活動」という見方を展望するという方向で考察を試みる.その検討過程を通して, このような協働型研究実践活動には, そこに集う各種ステイクホルダー間に新しい役割分担や機能分化の創生が求められ, また, 新しいタイプの活動マネジメント, 評価や成果公開の方法の発明が求められることを主張する.
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