日本科学教育学会研究会研究報告
Online ISSN : 1882-4684
ISSN-L : 1882-4684
26 巻, 5 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
表紙・プログラム
発表
  • 泉 直志
    2011 年 26 巻 5 号 p. 1-6
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究は,アーギュメント促進のための教授方略を考案し,それが学習者の理科授業に対する認識に与える影響について実証的に検討することを目的とした.教授方略に関しては,授業において学習者のアーギュメントを促進させることを指向した先行研究から,(1)アーギュメントのモデル化,(2)アーギュメントの構成要素の表出,(3)意見の分かれそうな学習課題の設定,の3点を教授方開発の指針として見いだし,この点を具現化する方法としてワークシートを作成することにした.このワークシートを用いて授業実践を行った結果,第一に,アーギュメントの構成要素である「根拠」の利用が有意に増加した.また,OECD-PISA2006において調査の行われた「対話を重視した理科の授業に関する生徒の認識」指標に含まれる4項目の質問の全てにおいて統計的に有意な変化が見られた.これらのことから,本ワークシートによる,適切な根拠を利用したアーギュメントの使用の促進に加え,生徒の認識の改善に対する有効性が示された.
  • ―KMK 化学教育スタンダードとの関連を中心として―
    遠藤 優介
    2011 年 26 巻 5 号 p. 7-10
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本稿では,2004年策定のドイツKMK化学教育スタンダードと2009年改訂のバイエルン州化学レールプランにおける化学教育の目的・目標を分析し,対比させることで,両者の関連性を探った。その結果,次の二点が明らかになった。(1)目的・目標の表現に関する視点から,コンピテンシーによる目的・目標の具体化という点で共通性が見られること。(2)目的・目標の内容に関する視点から,共通して多岐に渡る目的・目標が包括的に標榜されている一方,化学的知識や方法の伝達が重要視されている点にバイエルン州の独自性が見出されること。
  • 石﨑 友規
    2011 年 26 巻 5 号 p. 11-14
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本稿では,シュワブのいう安定的探究を科学授業で扱う場合,ややもすると,科学的探究はある決まった型に従って行うものであるとの誤解を子どもたちに与えるおそれがあることを指摘した。そして,安定的探究の特質を踏まえた上で,科学授業で安定的探究を扱う際には,(1)流動的探究を含めた科学的探究全体のダイナミクスを子どもたちに理解させ,その一側面として安定的探究を理解させる必要があること,(2)シュワブによって安定的探究の過程が示されてはいるものの,事物・現象に対する見方の違いによって,生成される問題やデータ解釈等々が異なることを理解させる必要があることを明らかにした。
  • -「わくわくチャレンジ!」の実践から-
    鈴木 宏昭
    2011 年 26 巻 5 号 p. 15-18
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究では,幼児教育における科学的体験活動のプログラムを開発し,その有効性を実証的に解明するため,「わくわくチャレンジ」プログラムを開発し,実践した。開発したプログラムは,幼稚園の年少から年長までを対象としたものであった。また,プログラムの内容は,虫メガネを用いた観察活動をはじめ,スライム作成など,幼稚園児の五感を刺激し,幼稚園児それぞれの活動を重視したものとした。このプログラムは,幼稚園児に科学的体験活動を提供することにとどまらず,幼稚園教員の研修として,さらには,幼稚園教諭の免許取得希望学生に対する教員養成の機会となった。
  • 山本 容子
    2011 年 26 巻 5 号 p. 19-24
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    BSCS シリーズの BIOLOGY: An Human Approach First Edition における生態学分野のカリキュラムについて,教科書,および,教師用ガイドを調査分析した。生態学分野の学習内容は,大きく2つに分けられており,前半は「生物間の相互作用」,後半は「人間の活動に伴う地球環境の変化」に焦点が絞られ,それぞれが特徴的な指導モデルである5Es の段階に即したプロセスを踏む学習内容となっており,人間と環境との間の相互関係,および,人間の活動により引き起こされた環境問題を解決するための個人の意思決定のプロセスを学ぶ構成となっていることが明らかになった。また,生態学分野の授業展開の特質として,環境に関する価値観,すなわち,環境倫理の視点を含んだエッセイを参照し,自身の考えをまとめる活動が導入されていることが明らかになった。
  • 牧野 智彦
    2011 年 26 巻 5 号 p. 25-30
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本稿の目的は,前提と結論を繋げる「架橋過程」における中学生の認知的困難点につい て報告することである.分析の結果,「架橋過程」の認知的困難点は次の通りであった.(1)前 提と結論から導かれる「中間の前提」と「中間の結論」の各群の中から「同じもの」を探すス トラテジーや後向き推論ストラテジーが欠落している,(2)「中間の条件」としてふさわしいか どうかを評価し,「選択する」,あるいは「選択しない」を判断できない.(3)数学的概念の「性質」と「条件」との共通点と相違点を把握できない.
  • -卓越性の視点設定-
    銀島 文
    2011 年 26 巻 5 号 p. 31-34
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究は,将来的な研究目的として,新時代に対応した科学の教育課程の構築を設定し ている。これまで,変化する時代の要請の吟味および教育課程の現状の検討を行ってきて おり,本稿では,卓越性の視点を設定することの意図およびその利点を整理した。科学教育研究において卓越性に着目することの背景には,人材育成・確保という社会的 課題の存在,個々の学習者の学びの実現というねらいの存在が挙げられる。一方,本研究 で卓越性の視点を設定することの利点として,For Excellence の教育課程に関する研究成 果が For All の研究に還元できる可能性があること,スーパーサイエンスハイスクールなどの For Excellence の豊富な取り組みの成果を活用できる可能性があること,が整理できる。
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