物理の学習に興味を抱かせるため, 科学史を利用した試みを紹介する。「コペルニクス革命」の本質を探ることを一貫したテーマとし, 近代物理の成立過程と物理学的な考え方や科学的精神についての理解を深めることを主要な目的として, 講義全体が構成されている。学生への動機付けとして, 最初の講義が重視される。これは, 教師が天動説の信奉者のふりをして, 学生に地動脱論争をいどむものてある。これによって学生達は, ガリレオ時代とは全く逆の認織論的な追体験を持つ。すなわち彼等は, 自らが信じる地動説が徹底的に論破されても, その認識を変えようとはしないが, これはガリレオ時代の天動説者達の立場に通じるものである。この体験をすることによってこそ, ガリレオらの苦難を実感することになる。さらに, 地動説の直接的な証拠は19世紀にいたるまて発見されなかったことを紹介し, それにもかかわらず何故「コペルニクス革命」の遂行者達が, 地動説に確信を持ちえたのかというテーマを提出する。以後の講義は, この理由を探る試みとなる。この講義に強い興味を抱くかどうかは, 最初の「科学史的認織」の追体験がうまくできるかどうかが決定的である。
抄録全体を表示