日本科学教育学会研究会研究報告
Online ISSN : 1882-4684
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3 巻, 6 号
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表紙・目次
〔一般研究発表〕
  • 朝井 英清
    原稿種別: 本文
    1989 年 3 巻 6 号 p. 1-6
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    現行の科学教育が学習者の関心を促す効果をあげていないことは永く問題視されてきたところである。科学教育に関する学習意欲の向上は、現行の教育体系のもとでの教育・学習方法の手直しや、個々の教材の改善ないしは開発研究だけで解決できるものとは思われない。学習者から見て、"科学" は依然として科学者のための学問であり、たとえば人文・社会系の生活を指向する一般市民には、およそ無縁のもの見られている。生物の観察や栽培・育成程度の科学学習のみを選択履修して自然科学系の必要単位を充たし、現代の科学的教養を備えた人間形成を自任するごとき感覚では、科学技術革新の現世に処する人格とは言いがたい情勢になっている。現行の科学教育の学習意欲向上の問題に水をさす意図は毛頭無いが、一層現実を見直して、科学教育の指向するべき方向についての提言を供したい。
  • 池田 俊夫, 松森 弘治
    原稿種別: 本文
    1989 年 3 巻 6 号 p. 7-10
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    当科学センターでは, 博物館相当施設として展示室を広く公開している。筆者らは高等学校生徒の学習時を機に「高校生各自が課題学習ノートにより自ら自主的に展示品に学び, 自らのカで課題を解決する能力を育成すること」を調査研究するために, 展示室利用の「個別課題解決学習」(仮称) を試行した。その結果として, ○学習者の能力, 意欲に準じ, 個々に応じた「個別課題解決学習」の実施から, 学習者個人個人の自ら積極的に学ぶ学習態度の育成と, 自発性・豊かな個性の高まりが得られた。○課題を携えての学習であるだけに, じっくりと展示品を観察したり, 直接展示品に触れたり実験したりすることから, 学習者は大きな感動とおおいなる驚異をおぽえると同時に, 自然科学教育に必要な豊かな感性の陶冶か得られた。
  • 岡本 正志
    原稿種別: 本文
    1989 年 3 巻 6 号 p. 11-14
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    物理の学習に興味を抱かせるため, 科学史を利用した試みを紹介する。「コペルニクス革命」の本質を探ることを一貫したテーマとし, 近代物理の成立過程と物理学的な考え方や科学的精神についての理解を深めることを主要な目的として, 講義全体が構成されている。学生への動機付けとして, 最初の講義が重視される。これは, 教師が天動説の信奉者のふりをして, 学生に地動脱論争をいどむものてある。これによって学生達は, ガリレオ時代とは全く逆の認織論的な追体験を持つ。すなわち彼等は, 自らが信じる地動説が徹底的に論破されても, その認識を変えようとはしないが, これはガリレオ時代の天動説者達の立場に通じるものである。この体験をすることによってこそ, ガリレオらの苦難を実感することになる。さらに, 地動説の直接的な証拠は19世紀にいたるまて発見されなかったことを紹介し, それにもかかわらず何故「コペルニクス革命」の遂行者達が, 地動説に確信を持ちえたのかというテーマを提出する。以後の講義は, この理由を探る試みとなる。この講義に強い興味を抱くかどうかは, 最初の「科学史的認織」の追体験がうまくできるかどうかが決定的である。
  • 西川 喜良
    原稿種別: 本文
    1989 年 3 巻 6 号 p. 15-18
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    理科教育、特に創造力の養成の重要性は減じていない。一方現実は理科嫌いが増加している。公教育の制度上では、理科嫌いに対して、その内容を減じ、従って時間をも減じている。いくら内容を減じても理解困難は変らず、従って学習意欲は上がらない、意欲向上には、教師が学習者をよく理解し、そのレディネスに合うようなぺースで、又内容や方法で行うことが重要である。自然に対する感動や興味、学習意欲を延ばし、理科好きになって楽しく、自分から、学習が進むよう導くことが重要である。その為には教師が教育について研究することが必要である。教育目的の分析、重要概念についての分析が必要。又内容の構造化は、原発見の構造に近い追発見の形が望ましい。更に授業には実験を多く取りいれ、学習者と共に作業することが必要である。授業後、学習効果、結果を評価し、次の授業ヘフィードバックすることが重要である。学習態度としてSachalichな態度が大切である。
  • 石野 久美子, 西川 喜良
    原稿種別: 本文
    1989 年 3 巻 6 号 p. 19-24
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    わかりやすい授業を考える上で重要なことは, 教育目的 (生徒の発達目標), 内容 (内容の構造化)、授業展開, 評価がお互いに矛盾しないことである. そこでこの教育の全体像を概観した上で, 電磁気分野を例として授業の内容について考察する. 教育目的としては, 総合的な能力, 創造性の育成をめざし, その方法として科学的思考力を養うための問題解決の過程をとおる学習方法をとるが, 内容を希簿なものにせず発展性をもたせるため, 個人の発見や認識の過程と類似しており, 既存の学習体系の基礎になっている科学史を分析することにより, 骨格となる基礎概念の発達を概念チャー卜図を用いて明らかにし, 最低限獲得すべき基礎概念を分析するとともに, 生徒の問題意識の位置を明らかにするための大判の概念チャート図を作成した. また, 生徒の認識の発達に役立つ教材構成についても考察する.
〔パネルディスカッション〕:『学習意欲を高める科学教育はいかにあるべきか』
  • 原稿種別: 付録等
    1989 年 3 巻 6 号 p. App2-
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
  • 仲 信一
    原稿種別: 本文
    1989 年 3 巻 6 号 p. 25-26
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    高校化学教育を担当している立場からの実践を要釣しますと、それは各高校における生徒の実態に応じた方策を、担当者が個性に応じた研究と工夫により対応することが最良と思われます。多様化した生徒に対しては、理科 (化学) 教育の目標や方法を重視し, 基礎・基本事項を, 生徒に適した実験等を用いて探究的に展開することが大切であり、また、同時に理解をねらった作業的な一斉学習が効果的ではないかと思われます。なお、そのためには提出したレポーの指導や、学習の評価問題等を工夫して作成する必要があります。新設高校の生徒に対する化学教育の現状の具体的な例や、担当者としての現実的な喜びや感想を述べます。ご批判を賜りたいと思います。
  • 橋本 康二
    原稿種別: 本文
    1989 年 3 巻 6 号 p. 27-28
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    理科教育において、学習意欲を高めるということは、生徒たちをエネルギー的に高めるのである。このエネルギーは運動のエネルギーというよりもむしろ位置エネルギーの一種であると考えるべきであり、この位置エネルギーは、単なる知識の詰め込みによって与えられるものでなく、実験を見たり、行ったりという経験によって高められるものといえよう。しからば、どのようにして生徒にこのエネルギーを与えるかを論じるのでなく、どのような教師が理科嫌いの生徒を作るかを私達の陥りがちな欠点を例に挙げて考えてみるものである。
  • 奥田 義和
    原稿種別: 本文
    1989 年 3 巻 6 号 p. 29-32
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    高等学校への進学率が90%を超えたころからの大きな教育問題に、基礎概念を理解しないいまま入学した生徒、いわゆるスロー・ラーナーの問題がある。この問題について、いろいろと研究報告や実践報告があるが、今日もなお続いている問題である。今年の3月に新学習指導要領が示されたが、高等学校数学科のねらいの一つとして、「基礎的・基本的な内容の徹底」がある。ここでは、このような生徒の実際の一部を示し、彼らの学習意欲が高校に入学して、果たして高められているか。また、学習意欲を阻害する要因を述べて、それを高めるための一つの方策などを提案したい。
  • 森 一夫
    原稿種別: 本文
    1989 年 3 巻 6 号 p. 33-
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    子どもの自己実現を図る科学教育にするには、「よくわかる理科 (数学)」という言葉でしめされるような認知的側面 (学習内容面) での指導と、子どもに成就感を与えるような問題解決活動的側面 (学習方式面)での指導のあり方を検討する必要がある。前者の場合を例にとれば、現象的世界から本質的世界へと子どもに透視させることなく、彼らの眼を現象的世界にとどめておいたり、逆に本質的世界で使っている難解な用語や記述を子どもに強要したりして、混乱させている。山を登るに従って下界が広がり、すばらしい展望が見えてくるはずなのに、山に迷いこみ、視界のきかない授業も少なくない。また、科学の内容理解に追われ、「科学とは何か」という科学の性格理解が十分でないのも、子どもの学習意欲を減じる一要因であろう。さらに、問題解決といっても、子どもにとって真の問題意識になり得てない場合も多い。助け合い、支え合う学習集団づくりを通して、互いに「わかり合う」授業づくりが、学習を高めるのにつながるのではあるまいか。
  • 菅井 勝雄
    原稿種別: 本文
    1989 年 3 巻 6 号 p. 35-36
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2017/11/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    学習意欲を高める科学教育のあり方に関して、話題提供本人が、これまで関わってきた研究を中心に、提案を行っている。近年の認知心理学にみられる能動的・主体的な学習者観に立って、① リフレクション (Reflection) 概念の導入に基づく新たな指導法の提案であり、② コンピュータ利用による探索的・発見的な方法の提案である。
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