日本科学教育学会研究会研究報告
Online ISSN : 1882-4684
ISSN-L : 1882-4684
30 巻, 6 号
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表紙・目次
発表
  • ~Example Space に焦点を当てて~
    朝山 誠, 牧野 智彦
    2015 年 30 巻 6 号 p. 1-4
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    数学学習において,例は必要不可欠である。例は,実践的な見地をもたらし,学習者の生成した例は学習者の理解度を測る指標となりうる。Watson & Mason (2005) は,何らかの数学的な対象が例として知覚されていき,内部に繋がりや関係性があり,個人毎に経験に即した特有の内部構造を持つ場所としてexample space を規定した。先行研究を参照しつつ,example space の特徴やその豊かさについて考察した結果,学習者に期待する example space の水準を詳細に規定することが肝要であることがわかった。
  • 石川 涼子, 牧野 智彦
    2015 年 30 巻 6 号 p. 5-8
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    算数・数学教育では算数・数学の楽しさへの関心度は高いものの、楽しさの捉え方は様々で、曖昧である。中学生に数学を楽しんでもらうためには、数学を楽しむこととはどのようなことかを明らかにする必要がある。そこで、本研究では、数学を楽しむことについて明らかにするために、楽しむことの辞書的な意味を調べるとともに、McLeod,D.B.(1992)による数学教育研究における情意(Affect)に関する研究、特に算数・数学学習や算数・数学的問題解決における 3 つの心的要因の観点から考察したまた、楽しむ対象としての「数学」の意味を特定した。その結果、生徒は数学学習において、数学的内容の機能的側面でのよさに対して、プラスの情動を抱き、それを繰り返すことで数学に対する高い好意性をもつという安定した態度を形成する。数学を楽しむことは、こうして形成されたプラスの態度を持続している状態のことである。今後は、中学生が数学を楽しむために有効な数学的活動について検討していきたい。
  • -一組のペアに焦点を当てて-
    牧野 智彦
    2015 年 30 巻 6 号 p. 9-12
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本稿の目的は,ペアによる問題解決過程の調査から,未完成な証明の生成過程における一人ひとりの生徒の調整の様相を捉えることである。そのために,ペアによる図形の証明問題の解決過程のプロトコルを「調整」の観点から分析した。その結果,一方は,調整を図ろうとし,他方は調整の必要性を感じていない様子がみえた。また,前者は,調整を保留した場合,代替案を探して調整しようとするが,他方は,自分が納得したこと以外は受け入れない様子がみえた。
  • 山本 高広, 片平 克弘
    2015 年 30 巻 6 号 p. 13-16
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本稿では, 実験活動時の子どもの目的意識の変容を探るための授業実践を行い, その効果を検証することを目的とした。特に, 実験活動時の子どもの目的意識を探る箇所に着目し, 本稿における授業実践では「実験活動中にみられる個々の活動における子どもの目的意識を探る方策を取り入れる」ことを重視した。その結果と分析から, 次の結論が得られた。1. 実験活動中にみられる個々の活動の種類によって, 子どもの目的意識は影響を受けている。2. 実験活動中にみられる個々の活動を経ることで, 子どもの目的意識は向上する。3. なんのために自分が活動しているのか「わかった」とする子どもの捉え方は多種多様である。
  • 加茂川 恵司
    2015 年 30 巻 6 号 p. 17-20
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    家庭にある酸アルカリ材料を用いて授業前学習に位置する学習構成のモデリングを行った。題材として小学校理科 6 年溶液の性質を取り上げ、どのような酸アルカリ概念を上位の概念や用語を直に用いることなく構成できるか検討した。素材を探して実験によりテストしたところ、重曹の発泡反応が酢を含めて感度良く酸性を判別できた。またアルカリは酸性を弱める物質として観察された。酸は物を溶かして変化させる働きを持つ物質として捉えた上で、その強弱を通して単元学習への接続を見出すことができた。目標とする知をどのような文で児童に渡すかは、21 世紀型のカリキュラム各論を理解するうえで手がかりとなった。
  • 人見 久城, 渡邊 翔太
    2015 年 30 巻 6 号 p. 23-28
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    理科におけるものづくり活動を多様な学習領域や場面で活用するためには,学習内容や場面に沿った展開を提案し,その効果を検討していくことが必要と考えられる。本研究では,大学生を対象として,花の観察場面におけるものづくり活動(模型製作)を導入した授業を実践した。その結果,ものづくり活動の効果として,次の3点が示唆された。(1)実物の花と模型の花の比較を行うことは,対象をより細かく見るきっかけとなり,観察力を質的に高めることに寄与する。(2)学習者が,学習者自身の観察力の向上を客観的に捉えられる。(3)模型製作は学習者にとって印象に残り,学習に意欲的に臨むことにつながる。
  • 因果関係のある問題に対する仮説検証型授業を事例として
    加藤 誉之, 栗原 淳一
    2015 年 30 巻 6 号 p. 29-32
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    中学校「金星の満ち欠け」の学習でモデル実験により仮説を検証する授業の発話プロトコルから,特に仮説形成場面の形成的アセスメントの構造と機能を質的に分析した。分析カテゴリには,Shepard(2000)の形成的アセスメントの7つの要素(Dynamic Assessment, Transfer, Prior Knowledge, Feedback, ExplicitCriteria, Self Assessment, Evaluation of Teaching)を用いた。分析の結果,以下の①~③の形成的アセスメントによって,生徒は仮説を形成していった。①「評価規準の子どもと教師との共有」によって,考える視点を明確にした。②「ダイナミックアセスメント」によって,明確にした視点に対して考えを深めさせ,関連付けて新しい考えを構築させた。③「教授活動の評価」によって,構築した考えを正しく認識させた。
  • -教具レゴとグラフ電卓を併用した実験・観察型アプローチによるモデリング・ワークショップ-
    松嵜 昭雄, 塚原 康介
    2015 年 30 巻 6 号 p. 33-38
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    コンピュータモデルに注目したモデリング・サイクルにもとづき,ワークショップを設計した。そこでは,レゴEV3 のデータロギング機能によって表示されるD-T グラフとA-T グラフというコンピュータ結果と,グラフ電卓のトレース機能によって表示されるA-D 散布図というコンピュータ結果を用いた,ICTs による表現変更型推論が必要となる。そして,数学的モデルであるA-D グラフからロボットの動作を予測するというモデリング評価問題において,これらICTs の諸機能を反映したコンピュータ結果が回答にどのように影響を及ぼすのか確認をおこなった。
  • 渡辺 信
    2015 年 30 巻 6 号 p. 39-42
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    学校教育と生涯学習とは接続がない。現在学校教育において、高大接続等の問題があるが、学校教育と生涯学習との接続もこれからの重要な問題である。生涯学習を数学という視点に限定し、学校教育における数学教育の在り方を問う。生涯学習を日本ではいまだに重要な教育とは捉えられず、教育は常に学校教育に限定されている。学校教育における数学教育を生涯学習の視点から眺めることによって、学校教育が変わることを問う。人生70年の時代、教育・学習は学校教育だけに限定することは時代性に合わない。生涯学習における数学の役割を定義し、問題解決・問題発見・創造性育成・数学をすることの意味に付いて考えるとともに、情報化社会の中でのTechnology活用を前提として、われわれが思考するということの「思考の補助としての技術」の重要性に付いて社会の変化が教育に及ぼすことの必要性を考える。現在のグローバル化に対して思考のローカル性を指摘する。
  • 飯塚 祐介, 片平 克弘
    2015 年 30 巻 6 号 p. 43-46
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究では,断片説の立場を取る diSessa の p-prims 論を理論的枠組みとする。p-prims 論で用いられている断片的要素 p-prims の特徴である「直観的」という点に着目し,物理学において用いられている p-prims 論を化学においても適用し,化学における p-prims の存在や,有効性について検討を行うことを本研究の目的とする。本稿では,高等学校物理において p-prims 論を用いている先行研究と,化学における p-primsの存在について論じている先行研究を基に,高等学校化学で扱う知識について p-prims を用いた分析,及び考察を行う。具体的には化学平衡における「ルシャトリエの原理」を扱う。
  • 鳥井 拓弥, 片平 克弘
    2015 年 30 巻 6 号 p. 47-50
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究は,ラーニング・プログレッションズ(以下,LPs)を活用することにより,生徒の学習到達度を多次元的に評価する方略を開発することを目的とする。本稿では,評価方略を開発する上で活用する LPs から抽出できる観点である「概念の多次元性」について示し,LPs を概念理解度の基準として作成された多肢選択式による評価方略の一事例を示した。また,多肢選択式の課題の中に自由記述式の回答欄を追加することにより,学習到達度をより多次元的に評価するという具体的な方略を提案した。なお,本稿で提案する評価方略を実施することにより,概念の理解度についての量的な検討が可能となる点も,その意義の 1 つであるといえる。
  • 柚木 翔一朗, 片平 克弘
    2015 年 30 巻 6 号 p. 51-54
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    現行学習指導要領では,子どもの直接体験の充実が重要とされ,各教科で「ものづくり」に関して記述されている。一方,これまで行われてきた理科における「ものづくり」活動の多くは,生徒自らが創意工夫を行うような活動になっていないという指摘がある。本研究では「ものづくり」という活動の多様性に着目し,「ものづくり」そのものを見直す必要性を指摘した。具体的には「ものづくり」の前提となる,設計を廃した「ものづくり」活動を構想し,これまでの我が国の理科の「ものづくり」において見受けられなかった「ティンカリング(tinkering)」が,我が国の理科の「ものづくり」において示唆に富む要素を持つことを述べた。
  • ―VASI アンケートを用いた調査から―
    福田 成穂, 中村 泰輔
    2015 年 30 巻 6 号 p. 55-60
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究は、高校生が有する NOSI の理解の実態を VASI アンケート調査によって明らかにすることを目的とした。結果、「研究の結論は集めたデータと一致しなければならない」ことについて理解している生徒の割合は顕著に高かった一方、「科学的 investigation はすべて問いから始まり、必ずしも仮説を検証するわけではない」、「全ての investigationがたどる単一の手順は存在しない」、「解釈は、集めたデータと既有知識とを組み合わせることによってなされる」ことについて理解している生徒の割合は著しく低かった。
  • 今成 直人, 柚木 翔一朗, 斎藤 正義, 片平 克弘
    2015 年 30 巻 6 号 p. 61-64
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究では、子供に理科を学ぶ意義を実感させるために、学習内容と日常生活の関連づけに着目するのではなく、学習内容と生徒自身の関連性に重視した。そこで、このような視点を持った概念である「レリバンス」に着目し、生徒のレリバンスを重視した理科授業を提案した。国内外におけるレリバンスに関する先行研究を踏まえ、本研究では生徒のレリバンスを重視する上で生徒自らに学習課題を選択させる授業を提案・実践し、その効果を分析した。その結果、生徒自らに学習課題を選択させる授業が生徒のレリバンスを重視する上で有効であることが明らかとなった。
  • 栃堀 亮, 片平 克弘
    2015 年 30 巻 6 号 p. 65-68
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本稿では,自然事象の「統合的な見方」を重視しているシンガポールの理科教育に着目し,そこから「統合的な見方」を促す上で必要となる観点を抽出するとともに指導法を開発した。その指導法を小学校及び中学校で実践し,子どもにもたらす効果を検証したところ,「子ども自身に『包括概念』を探させる」という観点及び「『包括概念』にかかわる事象が散りばめられた大判の絵や写真を用いる」という観点を取り入れた指導法は,子どもの「統合的な見方」を促す上で有効であることが示唆された。しかしながら,本研究で行った試行授業だけでは,「大判の絵」がもたらす効果について明らかにできなかったため,長期的に検証していく必要があるといえる。
  • 山本 容子
    2015 年 30 巻 6 号 p. 69-74
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    日本の 1980 年代から現在までの小学校における環境教育に見られる環境思想の変遷の特徴を,平成 4 年,平成 19 年,平成 26 年に発行された『環境教育指導資料』の小学校編をもとに調査・分析した。その結果,(1)3版共通して環境教育の理念として扱われている人間中心主義的な環境思想である「環境の保全」における「持続可能な開発」の内容に変遷が見られ,改訂ごとに持続可能な社会の構築のための視点が広がり,現在は特に環境主義的な環境思想である「環境的公正」が「持続可能な開発」と同義に扱われている,(2)環境主義的な環境思想である「地球の有限性」,および,「生物多様性」の視点が,H19 版以降,小学校における環境を捉える視点の一つとして扱われている,(3)日本的自然観である「自然との調和」という概念が,小学校理科,生活科,道徳における環境教育の指導の視点として3版ともに重視されているが,道徳においては,「自然との調和」を考える視点としての「倫理」の表記が,「環境倫理」から「自他の生命を尊重する視点」に変わったことが明らかとなった。
  • 伊藤 哲章, 小林 みゆき
    2015 年 30 巻 6 号 p. 75-78
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究では動物飼育における保育者の認識に注目し、質問紙調査を実施した。その結果、保育者は動物 を飼育する際に、「生物教育上の利点」よりも「飼育・入手のしやすさ」を優先していることがわかった。また、 動物飼育に関して年齢別、校種別に統計的な有意差はなかった。更に、虫を積極的に飼育している保育者 は、「生物教育上の利点」を重視しているのに対し、本調査の対象の保育者は、自然科学的な学びよりも「観 察のしやすさ」や「飼育のしやすさ」を重視している。
  • ―領域「環境」との関連に着目して―
    後藤 みな
    2015 年 30 巻 6 号 p. 79-84
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究は、次の二つの問題意識に基づいて行われた。すなわち第一に、ドイツの森の幼稚園教師にとって必要となる知識や知能、強調点は何か、第二に、その知識は『幼稚園教育要領』の領域「環境」とどのような関係にあるか、である。その際、ドイツにおける森の幼稚園に着目し、特にミクリッツが示している教師の知識を俯瞰した。そして領域「環境」を基に分析の観点を設定した上で、先の知識等を分析した。その結果、問題意識と対応して、次に続く二点の帰結を導いた。まず、森の幼稚園の教師には 20 領域に渡る知識や技能があり、生態系や気象に関するものの習得が強調されていた点。次に、それら知識等の中には「身近な動植物に親しみを持って接し、生命の尊さに気づきいたわったり大切にしたりする」といった観点からの記述が見られなかった点。
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