昨今,様々な資質・能力を統合化し,汎用的な資質・能力として身に付けさせるための取組みや,それを評価する方法が求められている。そこで汎用的な資質・能力を「基礎力」「思考力」「実践力」の3つに整理し,その育成を図る授業実践を化学変化とイオン「酸・アルカリと塩」で行った。その内容は,探究の過程で身に付けるべき力を,教師と生徒が見通すための文脈の設定と,その力の高まりを評価するために必要な OPP シートとルーブリックについて研究を行った。
本研究では,「様々なもののスケールを把握し,それをもとにして,他のもののスケールを推定することができるような概念」をスケール概念として定義づけ,これらのスケール概念に含まれる絶対的スケール概念と相対的スケール概念について整理し,小・中・高等学校理科を学んできた者がこれらのスケール概念をどの程度構築できているのかの調査を行うことによって,小・中・高等学校理科の生物領域における学習内容の系統性について検討していった。その結果,小・中・高等学校の理科学習を通じて,生物学におけるスケール概念を自然と獲得していくのは困難を極めることが明らかとなった。一方で,「肉眼で見ることのできる最小の長さは 0.2mm である」という情報や微生物の肉眼での観察経験などを結びつけたり,細胞小器官は細胞の構成物であるため,葉緑体よりも赤血球の方が大きいというような大きさの順序性について認識させたりすることは,スケール概念の構築に有効であることも明らかとなった。このようなスケール概念の構築という観点で,学習内容の系統性を図ることができれば,高分子としての DNA に対するイメージを定着させたり,顕微鏡で観察しているものの倍率感覚を養わせたりすることにも寄与すると考えられる。