日本科学教育学会研究会研究報告
Online ISSN : 1882-4684
ISSN-L : 1882-4684
31 巻, 2 号
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表紙・目次
発表
  • 山田 真子
    2016 年 31 巻 2 号 p. 1-4
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究は,広島高等師範学校附属小学校の低学年における玩具による理科教育の特色を分析した。その結果,広島高等師範学校附属小学校の低学年における玩具による理科教育の特色として,玩具に対する興味や探究心の喚起,工作意欲の喚起,理科の原理や原則についての知識の習得及び理解などのために,児童にとって身近で理解しやすい,且つ安価な玩具が理科の教材として用いられていたことを指摘した。また,教材としての玩具の選択と配列において系統性や発展性が重視されていたこと,授業において児童を主体とし,児童の発達段階を考慮して,児童相応に学習を進めることが重視されていたことなども指摘した。
  • —化学変化とイオン「酸・アルカリと塩」—
    中嶋 康尋, 中山 迅
    2016 年 31 巻 2 号 p. 5-8
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    昨今,様々な資質・能力を統合化し,汎用的な資質・能力として身に付けさせるための取組みや,それを評価する方法が求められている。そこで汎用的な資質・能力を「基礎力」「思考力」「実践力」の3つに整理し,その育成を図る授業実践を化学変化とイオン「酸・アルカリと塩」で行った。その内容は,探究の過程で身に付けるべき力を,教師と生徒が見通すための文脈の設定と,その力の高まりを評価するために必要な OPP シートとルーブリックについて研究を行った。
  • 山本 祥子, 島田 秀昭
    2016 年 31 巻 2 号 p. 9-12
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    高等学校化学では,有機化合物の性質と利用について学習する。本単元の中で扱うエステルの合成実験は,主に酢酸エチルが取り上げられている。教科書や参考書の記述に従って酢酸エチルの合成実験を行う場合,反応温度や反応時間、触媒である濃硫酸の使用量などの実験条件が明記されておらず,また実験に冷却器などを使用するので装置が大きくなり実験準備にも手間がかかる。そこで本研究では,酢酸エチルの合成実験について,より安全で簡単に行うことができ,実験試薬も少なくすることができるような実験条件の検討を試みた。
  • 中村 文, 島田 秀昭
    2016 年 31 巻 2 号 p. 13-16
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    高等学校「化学」では「有機化合物の性質と利用」について学習する。本単元で取り上げられている合成洗剤は,容易に合成することができるため実験教材として有用であると考えられる。しかし,合成洗剤の合成実験には濃硫酸や水酸化ナトリウムなどの劇物を使用するため注意を要する。そこで本研究では,安全で短時間かつ確実に合成洗剤を合成することができる実験条件について検討した。また,単回の授業時間内で合成洗剤とセッケンの両方を合成し,その性質の比較実験をすることが可能な実験条件についても検討した。
  • 三浦 政司, 前波 晴彦
    2016 年 31 巻 2 号 p. 17-20
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    グローバル化や情報化に伴ってますます社会が複雑化し,複合的・分野横断的な問題が顕在化していくなか,そのような問題を扱うことのできる複雑系科学は学部・学科を問わず幅広い領域の学生とって重要な教養であると言える.そこで著者らは,Agent-Based Modeling(ABM)などの基盤的な手法を実践する中で複雑系科学の基本的な考え方を学ぶ教養教育向けの授業を企画・実践している.その際,ゲームデザインのプロセスを応用することで初学者や非専門家でもABMを実践することのできるGame-Based Situation Prototyping(GBSP)という手法を提案・導入している.本稿ではGBSPのコンセプトと,それを用いた複雑系科学入門授業の実践結果について紹介する.
  • 甲斐 初美, 杉野 里紗
    2016 年 31 巻 2 号 p. 21-26
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究では,「様々なもののスケールを把握し,それをもとにして,他のもののスケールを推定することができるような概念」をスケール概念として定義づけ,これらのスケール概念に含まれる絶対的スケール概念と相対的スケール概念について整理し,小・中・高等学校理科を学んできた者がこれらのスケール概念をどの程度構築できているのかの調査を行うことによって,小・中・高等学校理科の生物領域における学習内容の系統性について検討していった。その結果,小・中・高等学校の理科学習を通じて,生物学におけるスケール概念を自然と獲得していくのは困難を極めることが明らかとなった。一方で,「肉眼で見ることのできる最小の長さは 0.2mm である」という情報や微生物の肉眼での観察経験などを結びつけたり,細胞小器官は細胞の構成物であるため,葉緑体よりも赤血球の方が大きいというような大きさの順序性について認識させたりすることは,スケール概念の構築に有効であることも明らかとなった。このようなスケール概念の構築という観点で,学習内容の系統性を図ることができれば,高分子としての DNA に対するイメージを定着させたり,顕微鏡で観察しているものの倍率感覚を養わせたりすることにも寄与すると考えられる。
  • ー 「密度」を題材にした理科と数学の相関カリキュラムの開発を中心として ー
    野添 生, 天野 秀樹
    2016 年 31 巻 2 号 p. 27-30
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    現代社会が抱える様々な課題(エネルギー,資源,食料,気候変動など)を解決する政策として,科学技術イノベーションの推進が大きく期待されており,世界的には STEM 教育が欧米を中心に展開,推進されている。そのような背景を踏まえて,本研究では,教育課程の基本類型の1つである「相関カリキュラム」に着目し,「密度」を題材にしたカリキュラム開発を行い,理科と数学の教科間連携を図った中学校理科教育の展望について論究していくことを目的とした。教育課程及び教育内容の理論的検討を踏まえて開発されたカリキュラムでは,理科の文脈における「平均値」と数学の文脈における「平均値」を別個のものではなく,同じ領域上で扱うことにより,「科学的な見方・考え方」と「数学的な見方・考え方」を双方向に活用させた深い学びへと繋げることができた。
  • 大分県立大分豊府高等学校の実践を通して
    有定 裕雅, 竹中 真希子
    2016 年 31 巻 2 号 p. 31-36
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    「高大接続システム改革会議『最終報告』」や「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」が発表されるなど高等学校教育改革が進められている。高等学校には進路保障という大きなミッションがあるため,大学入試や就職試験を重視した「基礎的・基本的な知識・技能」に偏った講義型授業が多く,「知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等」や「主体的に学習に取り組む態度」の育成が十分ではない面が見られた。本稿では,大分県の普通科進学校である大分豊府高校が大分県教育委員会の研究指定を受けて実施している「思考力・判断力・表現力を育成するための指導方法の工夫改善についての実践研究」における理科の取組について整理・検討した。その結果,言語活動を重視したアクティブ・ラーニングが理科の授業において成果を上げていることや思考力等の育成を測定する方法については更なる研究が必要であることがわかった。
  • ~アサガオ花粉のはたらき観察・実験の「実施困難度」測定~
    西野 秀昭
    2016 年 31 巻 2 号 p. 37-42
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    学習指導要領改訂が近いことを踏まえ,現行の小学校・中学校理科教科書の生命・生物観察・実験の実施困難度を数値や段階評価で示す事で,既存の観察・実験の教科書への採択の判断材料に資すると共に,工夫改善された観察・実験の提案を含めた,高度学校再現性の判断に活用できる根拠データベースを構築する目的で,複数の観察・実験の実施困難度測定を行っている。中でも小学校理科の花粉のはたらきで用いるアサガオは,難教材の一つである事から,実際に栽培しながらこの観察・実験の実施困難度を測定した。夏休みを挟み四か月余りに渡る栽培の継続が必要な事に加え,児童より低い背丈を維持する為,伸びるつるを低い位置へ連日,支柱内に収めなければならない。また観察・実験を行う 9 月になると蕾の数が減り,受粉したばかりの実が昆虫に食べられる事も起きた。また受粉したはずの実に種が入らない事もあり,考察に結びつける事ができなかった。従って実施困難度は∞とした。アサガオの代替に,栽培期間も短く他家受粉であり,花粉のはたらきの観察・実験が容易なファストプランツを提案した。
  • 松茂良 美穂, 渡邉 重義
    2016 年 31 巻 2 号 p. 43-48
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    進化学習のための実物を用いた観察教材を開発するために水草のオオカナダモとマツモに注目し,教材化のための基礎研究として茎の形態観察を行い,水環境への適応や進化を考えるための特徴を調べた.その結果,①単子葉類と双子葉類であるが,いずれも退行中心柱に相当する構造が確認できる,②皮層の部分に空気間隙(通気組織)が確認できる,③トルイジンブルー染色では染め分けられず,発達した細胞壁をもつ木部が確認されない,④茎の内部(皮層や中心柱)の細胞にも葉緑体があり,デンプン粒が多数確認される,等の共通した特徴を見出すことができた.
  • −物質の状態変化を事例にして−
    廣 直哉, 内ノ倉 真吾
    2016 年 31 巻 2 号 p. 49-52
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    中学校1年生の「物質の状態変化」を事例にして,理科授業の導入段階での生徒の既有知識や事物・事象の観察と疑問の生成との関係を探った。生徒らは,事象の表面的な特性といった質的な側面から,主として疑問詞を使った疑問を生成しており,複数の観察事実を組み合わせて,疑問を生成する傾向は見られなかった。また,同一物質で条件を変化させて再現可能性を確かめることや,他の物質での事例を集めて一般化を図ることに関連して,はい/いいえで答えられる疑問や直接観察したことに基づかない疑問を生成することが示唆されるのであった。
  • 渡邉 重義
    2016 年 31 巻 2 号 p. 53-56
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    探究のためのプロセス・スキルを参考にして,小・中学校の理科カリキュラムで育成したい科学的な問題解決スキル(案)を作成した。科学的な問題解決スキルは,Ⅰ.科学的な思考に関連したスキル,Ⅱ.観察・実験に関連したスキル,Ⅲ.科学的なコミュニケーションに関連したスキルに分類した。そのⅠ~Ⅲのカテゴリーに合計 10 の基本的なスキルを配置し,さらにその下に「比較分類する」「推論する」「条件を制御する」等のスキルを設置した。
  • -概念生態系のアイデアを援用して-
    織田 一輝, 甲斐 初美, 森藤 義孝
    2016 年 31 巻 2 号 p. 57-60
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    学習者は,1 つの学習状況で複数の概念を保持することが可能である。したがって,学習者の学習過程を適切に捉えるためには,学習者が保持している複数の概念やそれらによって構築される概念生態系の変化をモニタリングする必要がある。そこで,本研究では,これまでに我々が行ってきた「溶解概念」の構成に関する授業実践から得た示唆をもとに,より学習効果が高まると思われる授業を構想・実践し,授業の中での学習者の概念や概念生態系の変化をモニタリングするように試みた。そして,その結果を基礎として,新たに構想・実践した授業の適切性を明らかにした。
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