日本科学教育学会研究会研究報告
Online ISSN : 1882-4684
ISSN-L : 1882-4684
34 巻, 6 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
表紙・目次
発表
  • ―STEAMのAの位置づけに焦点化して―
    畑山 未央, 上野 行一
    2020 年 34 巻 6 号 p. 1-6
    発行日: 2020/03/21
    公開日: 2020/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    近年, 国内外で注目を集めているSTEAM教育であるが, STEM教育に加えるAの捉え方がArt(芸術)であったり, Art+Designであったり, Arts(リベラル・アーツ)であったりと様々である.そのためSTEAM教育におけるAの役割や位置づけが多様となり, Aの役割や位置づけが不明確なままで行われがちな実践を多く見かける.本研究は, 美術教育の視点から様々なSTEAM教育における異領域の統合原理を整理し,教育課程上の違いや特色を指摘すると共に,STEAMのAの位置づけに焦点化して我が国の初等中等教育における学校現場への普及を目指すものである.

  • ―盲ろう者の博物館体験に関するインタビューからの一考察―
    島 絵里子, 八木下 志麻, 土屋 順子, 小川 義和, 稲垣 成哲
    2020 年 34 巻 6 号 p. 7-10
    発行日: 2020/03/21
    公開日: 2020/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    自然史博物館の出前講座及び見学会における,化石標本やハンズ・オン展示を触ること・観察すること(触察)を中心とした活動において, 盲ろう者がどのような経験をし, どのような思いを抱いているかについて探究することを目的とした.事前に, 博物館の出前講座及び見学会に参加予定の盲ろう者とその通訳介助者に調査協力の依頼手紙文を渡し, 調査協力の回答をくださった方を対象に調査を行った.標本の触察や身体的活動の重要性とともに,化石のハンズ・オン展示については,その復元模型を同所に設置したり,また,一部にしか触れない大きな展示については,その小型模型を同所に配置し,どの部分がハンズ・オン展示として触れるようになっているのかを明示する重要性も浮かび上がった.

  • 豊橋市自然史博物館のマンガ表現解説法
    稲垣 成哲, 楠 房子, 伊藤 みずほ, 松岡 敬二
    2020 年 34 巻 6 号 p. 11-14
    発行日: 2020/03/21
    公開日: 2020/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本論文は,豊橋市自然史博物館における2段展示の効果について予備的に報告する.2段展示とは,大人と子どもの対比だけではなく,広くユニバーサルな方向にも展開可能な方法である.博物館では,各展示コーナーにおいて,その概要を説明しているが,多くの場合,文字で表現されており,年齢の低い子どもや外国人,障がいを持つ人たちにとって難解なものであることが多い.この問題を解決するために,当博物館では,従来の文章による解説と併置して,マンガ表現解説法を用いて概要をわかりやすく提供している.本研究では,このマンガ表現解説法について,来館者がどのように閲覧しているかを検証した.62名の参加者による評価実験の結果から,マンガ表現解説法による解説が幅広い年代の来館者に閲覧されていることがわかった.

  • 石井 康博
    2020 年 34 巻 6 号 p. 15-18
    発行日: 2020/03/21
    公開日: 2020/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    算数科において,子どもは種々の具体物を利用して計算を解決している.小学1学年「数と計算」領域の子どもの操作活動を観察し,記録分析した.その結果,多くの場面において課題解決の過程において,子どもは具体物を利用して課題解決にあたる際に,具体物を移動させたり置いたりと操作活動を支える,いわば,下位的な活動が確認された.また,算数科の計算の特徴である10構造にもとづく計算の手立てとは別に10を意識せずに具体物を操作する場面が確認された.

    本稿では,具体物を利用した計算場面に焦点を当てて,子どもの操作活動の意味づけにおいて,行為の淀み(佐々木ら,1998)と考えられる活動とは同一とはいえないが,行為の淀みにある側面では重なると考えられる子どもの操作活動を考察していく.

  • 石川 美穂, 片平 克弘
    2020 年 34 巻 6 号 p. 19-22
    発行日: 2020/03/21
    公開日: 2020/03/18
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    本研究は,SDGsの目標達成に向けた活動に取り組むにあたり,理科教育における学習方略との関連性を明示することを目的としている.今回は,活動における生徒の興味・関心および科学的知見の必要性についてどのように捉えているかに焦点をあて,理科教育の観点から,生徒のSDGsへの学習動機に関する知見を得た.調査は中学生を対象に実施した.科学的知見が必要とされるSDGsにおける活動を8段階に分け,それぞれの活動における興味・関心および科学的知見の必要性の認識について回答を得た.その結果,生徒は問題の現状を知る活動に対して,科学技術の開発及び社会に導入するか否かの検討や判断に対する関心が低いことが明らかとなった.これらの知見から,生徒の市民性を高めることを考慮しつつ,科学的知見を社会に介入させていく意欲や責任感を学習動機として生徒に認識させていく必要がある.

  • 猪股 義信
    2020 年 34 巻 6 号 p. 23-26
    発行日: 2020/03/21
    公開日: 2020/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    中学校理科の学習は,自然の事物・現象を生徒自ら調べ事実を確認することから始まる.主体性を重視するためには,理科学習における興味関心を高める必要がある.そのために,環境整備をすることで,日常的に不思議な現象の情報提供や体験型の掲示や展示によって理科学習における興味関心を高めることができる.

  • ―ボールが繰り返しバウンドする現象に潜む2次関数の探究―
    天羽 康
    2020 年 34 巻 6 号 p. 27-32
    発行日: 2020/03/21
    公開日: 2020/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    次期学習指導要領の改訂において,「理数探究」の新設が予定されており,ICT機器の活用の充実化も求められている.また,「理数探究」に取り組むにあたり,深い探究を伴う教材,ICT機器を扱うような教材,理科の現象を数学で探究するような教材を蓄積していくことが今後の課題である.一昨年度から新科目「理数探究」に向けた ICT機器を活用した独自教材を開発し,実践している.本稿は昨年度に本校のシンポジウムで1年生を対象に実施した独自教材「ボールが繰り返しバウンドする現象に潜む2次関数」の追実践の記録と考察である.今年度は2年生理系生徒の中から希望者4名を対象に実践した.

  • ―イメージマップ分析を通して―
    細山田 祥太, 中山 迅, 真田 純子
    2020 年 34 巻 6 号 p. 33-36
    発行日: 2020/03/21
    公開日: 2020/03/18
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    中山間地域の持続的発展を目指す「風景をつくるごはん」概念に基づく地域教育の取り組みにおいて,真田らが開発したゲーム形式の教材による授業が小学校第6学年の児童の学習に効果があることについて報告ずみであった.それを受けて,同じ地域の中学校第3学年の生徒を対象に同様の授業を行い,その効果をイメージマップ分析を通して評価した.その結果,多くの生徒が,食べ物の産地と農法が景観・環境の変化に与える影響を因果的に理解したことが確かめられた.

  • 中山 萌絵, 小倉 康
    2020 年 34 巻 6 号 p. 37-42
    発行日: 2020/03/21
    公開日: 2020/03/18
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    本研究では, 日本の大学生のNOSの理解度の分析, 日本と米国の教育課程及び理科教科書の比較・分析を行うことで, 日本のNOSの指導内容の取扱いの傾向を明確化し, それらを踏まえ, 現行の教育課程に沿った小学校理科授業の開発を行った. 分析の結果, 「科学研究における想像力・創造力の役割」「科学の限界」「自然における秩序と一貫性の前提」「観察と解釈」「科学に関する社会的影響」「自然科学の検証可能性」のNOSを導入する授業の開発が必要であり, また科学者としての活動を印象付けながらNOSを実践的に学習できるような授業案を作成することがNOSの理解を育む上で有効であることが示唆された. そこで「科学の限界」と「自然科学の検証可能性」のNOSを導入する授業案を開発し, 大学生対象の検証授業や現職教員へのヒアリングによりその有効性を検討した結果, NOSの理解を促すことが期待できる授業案であると評価された.

  • 下吉 美香
    2020 年 34 巻 6 号 p. 43-46
    発行日: 2020/03/21
    公開日: 2020/03/18
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    本研究では,次期学習指導要領において示された小学校理科教育の方向性を踏まえ,その実現に向けて如何に取り組むべきかについて,具体的指針を明らかにしようと考えた.各教科の特性に応じた「資質・能力」の育成,「見方・考え方」を働かせた主体的・対話的で深い学びの実現に向かうためには,教師の子どもの学びを見取る目と,深い学びを創り出す単元デザイン力,カリキュラム・マネジメント力が必要となってくる.特に,理科の学習においては,問題解決の過程を丁寧に展開していく中で,科学的な深い学びを実現していくことが求められている.本報告においては,第4学年単元「水のゆくえを追いかけよう」における子どもたちの学びをもとに,現時点での知見を示す.

  • ―小学校第5学年「流れる水のはたらき」単元における事例―
    安影 亜紀, 長友 晃一, 新地 辰朗
    2020 年 34 巻 6 号 p. 47-50
    発行日: 2020/03/21
    公開日: 2020/03/18
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    本研究では,小学校理科において自然災害の対策を考える授業でプログラミング体験を取り入れた実践において,プログラムを作成するときのプログラムを類型化し,「プログラミング的思考」の様相を事例的に示すことを目的に,児童がワークシートに表現したMESHブロック(付箋)を分析した.その結果,児童は,課題に応じて主体的に適切なセンサーを選択していることや命令(記号)を組み合わせる際には,各自が多種多様な接続方法を用いており,対応の度合いも一様でないことが分かった.また,グループでの話し合い活動を通じて,複数の想定を包含したプログラムを作成するようになったと分かった.

  • ―工学的なアプローチを取り入れて―
    中村 勇稀, 小倉 康
    2020 年 34 巻 6 号 p. 51-56
    発行日: 2020/03/21
    公開日: 2020/03/18
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    本研究の目的は,理科授業のなかに工学的なアプローチである問題解決を取り入れ,児童が理科を学ぶ意義や有用性を実感できる授業計画を行うことである.そのために,カナダの科学教育の枠組みである「幼稚園から第12学年までの科学の学習成果に関する共通フレームワーク」とそれに基づいた教師用指導書を用いて工学的なアプローチである問題解決の取り扱いを分析した.分析結果を基に第4学年「物の体積と温度」にて温度計を製作する授業を計画し,実践した.その結果,問題解決のスキルとその意識の向上に寄与するとともに,児童が理科を学ぶ意義や有用性を高く意識する状況を保つことができた.

  • ~スマホ画面から検出される耐性因子の調査~
    安川 洋生, 岡田 菜月, 福士 祥代, 八重樫 理称
    2020 年 34 巻 6 号 p. 57-60
    発行日: 2020/03/21
    公開日: 2020/03/18
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    薬剤耐性菌対策は喫緊の課題であり,解決に向けて教育と啓蒙に取り組むべきとされるが,アンケート調査の結果から岩手大学教育学部生の多くはこれに関連する知識を持っていないことが分かった.現状と取り組むべき課題を認識させるために,岩手大学教育学部生のスマートフォン画面の薬剤耐性因子の調査を行った.37台のスマートフォン画面からサンプリングし,抗菌薬(アンピシリン,テトラサイクリン,ストレプトマイシン,リファンピシンのいずれか)を含む培養液で培養した結果,14台(38%)について微生物の増殖がみとめられた.これらの微生物を回収し,DNAを解析したところ,薬剤耐性因子であるblaACTblaFOXtet(K)が検出された.この結果は薬剤耐性菌が身近に存在していることを示しており,教育学部生が現状を把握し,薬剤耐性菌対策の重要性を理解する契機になると考える.

  • 野村 祐子
    2020 年 34 巻 6 号 p. 61-66
    発行日: 2020/03/21
    公開日: 2020/03/18
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    消防研修で活用されている燃焼の3要素に基づく消火の理論は,消防活動に伴う二次災害の危険性を理解するには説明が不足している.同理論を教材として活用している理科教育の分野でも,「熱」の正体と燃焼現象の本質を理解することができるように,指導方法を模索する必要がある.概念地図法は,十分に体系化されてはいないが体系化でき得る領域において学習促進的効果が生じやすいと考えられている教育実践の技法である.燃焼学習に概念地図法を適用することによって,消防研修と理科教育の両面で,教材を改善できる可能性が考えられる.そこで本研究では,ろうそくの燃焼過程とろうそくにコップをかぶせたときの消炎過程を説明することができるようになるために必要な一連の知識の集まり(命題群)を設定するとともに,燃焼現象の理解を促すための概念地図の作成を試みた.

  • 川村 教一, 山下 清次
    2020 年 34 巻 6 号 p. 67-72
    発行日: 2020/03/21
    公開日: 2020/03/18
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    災害発生にはそこに至る素因と誘因がある.自然災害につながる現象(ハザード)に関する教育のために,筆者らは土砂災害に関する現象(落石,地すべり,土石流)の理解を深めさせる中等教育向けモデル実験教材を開発し,素因,誘因,現象との対比の視点から教材を分析した.この結果,落石のモデル実験については,素因を反映させた縮尺モデルとすることは可能であるが,誘因を理解させることは困難である.地すべりおよび土石流は,誘因を踏まえた縮尺モデルとすることができる.素因を理解させるためには落石モデル実験を併用すれば問題はない.これら素因や誘因について,児童生徒の学習状況に合わせて理解可能な縮尺モデルを教材とすることで,土砂災害について理解を深めさせることが期待できる.

  • 平田 昭雄
    2020 年 34 巻 6 号 p. 73-78
    発行日: 2020/03/21
    公開日: 2020/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    地域の市民に必要な科学的防災リテラシーを育む中等教育プログラムの設計手順を開発した.その概要は,

    (1)当該地域の地理的情報の収集:当該地域が通学区となる公立中学校の通学区域を示す地図等の情報の収集

    (2)自治体防災情報他の選択的収集:当該地域に関する自治体公表防災情報他の選択的収集

    (3)当該地域の自然災害危険個所および想定される被害の洗い出しとアセスメントフレームへのマッピング

    (4)個々の市民が備えたい自助領域の防減災リテラシーへの注目:自然災害により生じる被害の理解に焦点化

    (5)防減災行動判断シミュレーション:災害被害遭遇の際に地域の市民個々に求められる思考・判断の検討

    となる.これにより、地域の市民に必要な科学的防災リテラシーの形成を当該地域の中学生を通して促進しようとする取り組みの実現が可能になった.

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