日本科学教育学会研究会研究報告
Online ISSN : 1882-4684
ISSN-L : 1882-4684
35 巻, 2 号
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表紙・目次
発表
  • 杉江 瞬, 長南 幸安
    2020 年 35 巻 2 号 p. 1-4
    発行日: 2020/12/12
    公開日: 2020/12/09
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    現在,保育の現場では幼児教育が推奨されており,5領域を満たす遊びを基軸とした「総合性」の強い「保育」が行われている.しかし,その保育内容に対し,小学校では「個別性」の強い「教育」が求められているため,幼小を接続するカリキュラム構築が困難であると認識されている.スキャモンの発達・発育曲線によると,知能の発達に関わる神経型は,6歳ごろまでに急激に発達すると考えられているが,ピアジェの発達段階説によると,6歳児は前操作期と具体的操作期の間にあるため,まだ論理的な思考には至れないとされている.そこで,本研究では保育施設で理科実験教室を行い,独立性の強い「教育」に触れさせ,理科教育について興味・関心を促すと共に,幼児のよる論理的な思考が見られるかを確かめた.

  • 笠井 香代子, 内山 哲治, 小林 恭士, 髙田 淑子
    2020 年 35 巻 2 号 p. 5-8
    発行日: 2020/12/12
    公開日: 2020/12/09
    研究報告書・技術報告書 フリー

    小中学生を対象とした「スペースラボin仙台市天文台」は,「天文」「宇宙」をキーワードとして,天文学だけではなく物理学,化学,生物学の様々な分野が関わり合う科学教育普及活動である.大学教員と初等・中等教員養成課程の理科教育に所属する学部生や大学院生も企画運営に携わり,天文台のスタッフとも共同で活動内容を企画している.参加者アンケート結果より,満足度・理解度・今後への期待度に関して平均評価が90%以上と肯定的に評価されている.アンケートの自由記述欄には,新しい科学の知識を得たり体験したりした喜びや,より高度な内容を求める旨の記述が随所に見られ,地域における科学教育普及活動の役割を充分に果たしていることがわかる.また,このような活動にはじめて参加する,との回答が半分以上であり,継続的な活動が求められている.

  • 長島 康雄
    2020 年 35 巻 2 号 p. 9-14
    発行日: 2020/12/12
    公開日: 2020/12/09
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    東日本大震災後の科学教育を考えるうえで,Eco-DRRの視点を導入した防災・減災の考え方の教材化の重要性を指摘した.学び手である児童生徒が自分の問題としてとらえざるを得ない学校防災・減災を理科という教科の中で扱うことは,学びの出発点としての関心を高めるうえで教材としての意義がある.本研究ではEco-DRRの視点に立った東日本大震災後の学校防災・減災の適用された事例を検討するとともに,人口減少に向かう日本の現状,激甚化する自然災害と対峙していくための,あるいは共存を進めていくための重要な考え方としてのEco-DRRの果たす科学教育上の意義を明らかにした.その上で学習指導要領の記述を手がかりにして,教科教育としての理科カリキュラム案について検討し,児童生徒と直接的にかかわりのある学校防災・減災を教材化することが,課題を自分の問題としてとらえることが教育的な効果につながることを指摘した.具体的な単元としては,小学校理科第5学年の「流れる水の働きと土地の変化」「天気の変化」,第6学年の「生物と環境」の単元,ならびに中学校理科第2分野の「自然と人間」の単元での学習で取り扱うことが有効であることを指摘した.

  • 芦沢 京祐, 小池 彩華, 大矢 恭久
    2020 年 35 巻 2 号 p. 15-18
    発行日: 2020/12/12
    公開日: 2020/12/09
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    原子力発電所から出る使用済核燃料を再処理する過程で高レベル放射性廃棄物が発生する.この廃棄物は長半減期を持ち,放射能レベルが環境に影響を及ぼさないレベルに減衰するまで,非常に長い時間がかかる.よって放射性廃棄物の処分には,長期にわたる保管が必要であり,人々の生活環境や自然環境の安全確保のための処分方法として,地層処分が現在検討されている.処分地選定において地域住人による合意と,国民の理解は不可欠であるが,世間一般において地層処分に関する知識は乏しいのが現状である.今回の調査では,日本原燃株式会社の原子燃料サイクル施設や日本原子力研究開発機構の幌延深地層研究センターの見学を行った参加者がブレインライティング法による意見交換を行い,それらの結果から,地層処分事業を理解・認知してもらう活動の重要性について調査した.実際に施設見学を行うことで地層処分についての理解が深まったという結果が得られ,意見交換では,見学会や勉強会を開くことによって得られる正しい知識の重要性が議論された.従って,施設見学や意見交換の場の提供が地層処分の理解を得るために必要不可欠である.

  • 小池 彩華, 芦沢 京祐, 大矢 恭久
    2020 年 35 巻 2 号 p. 19-22
    発行日: 2020/12/12
    公開日: 2020/12/09
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    新型コロナウイルスの影響で大学での多くの授業がオンデマンドの形式をとることを余儀なくされた.静岡大学でもオンデマンド授業の形をとっているが、その中で放射性廃棄物処分を実現するための放射線教育は現在ニュースで取り上げられていることもあり注目を浴びている.本研究では,オンデマンド授業を用いて放射線教育を行い,その有効性や理解度を検証した.その結果,理解度や満足度は対面授業と比較して下がりはしたものも,8割程度の人が放射線に対する正しい知識を得ることができているという結果が得られた.対面授業ではできない,動画を止めてわからない単語を調べ学習するといったオンデマンドならではの活用も確認された.このことは今後放射線教育を推進していくにあたって,多くの方に正しい知識を広めていく際にも活用できることが示唆された.

  • 阿部 由佳理, 久坂 哲也
    2020 年 35 巻 2 号 p. 23-26
    発行日: 2020/12/12
    公開日: 2020/12/09
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    本研究は,学習者自身の要因である属性的要因の学習観と学習動機が,理科の問題解決過程における学習方略使用に与える影響を明らかにすることを目的としている.小学校第6学年の児童257名を対象とし,小学生がもつ学習観や学習動機,理科における問題解決方略の使用について質問紙調査を実施した.分析の結果,失敗に対する柔軟性や思考過程の重視といった学習観が,内容関与的動機を媒介して理科における問題解決方略の使用へ与える影響が比較的大きいことが示された.しかしながら,本研究は1時点での検討であるため,因果関係を特定することは難しい.よって今後の研究では,同じ児童を対象に再度質問紙調査を行い,学習観や学習動機,理科における問題解決方略の相互的な因果関係について縦断的に調査する必要がある.

  • ―パーソナリティ特性と個人差変数が感度と特異度に与える影響―
    今野 浩幸, 久坂 哲也
    2020 年 35 巻 2 号 p. 27-30
    発行日: 2020/12/12
    公開日: 2020/12/09
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    本研究は,中学校理科のテスト場面における確信度判断の正確さに影響を与えるパーソナリティ特性と個人差変数を検討することを目的とした.中学校第2学年を対象に,学業的自己概念,自己愛傾向,Big Fiveを測るための質問紙およびローカル判断,グローバル判断の正確さを測るためのテスト作成し,調査を実施した.得られた126名のデータを分析した結果,成績はγ係数と感度に正の影響を与えることが示された.また,外向性は感度に正の影響を,評価過敏性は特異度に正の影響を与えることが示された.

  • ~ハンドドライヤーの送風から検出されるテトラサイクリン耐性因子の解析~
    菅井 響, 岡田 菜月, 福士 祥代, 安川 洋生
    2020 年 35 巻 2 号 p. 31-34
    発行日: 2020/12/12
    公開日: 2020/12/09
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    今日,世界各国に薬剤耐性菌が蔓延し有効な抗菌薬が減少しつつある.薬剤耐性菌対策は喫緊の課題であり,我が国においては具体的な取り組みの一つとして中学生,及び高校生への教育が求められている.学校教員を志す教育学部生の意識の向上のために,岩手大学教育学部に設置されているハンドドライヤーについて薬剤耐性菌の調査を行った.調査した10台の内の9台について,抗菌薬を含む培養液で微生物の発育がみとめられた.これらの内テトラサイクリンを含む培養液で増殖した微生物試料について,同薬剤に対して耐性を付与する遺伝子の解析を行ったところtet(K),及びtet(M)をみとめた.

  • ~スマートフォンの画面から検出されるテトラサイクリン耐性因子の解析~
    八重樫 理称, 岡田 菜月, 福士 祥代, 安川 洋生
    2020 年 35 巻 2 号 p. 35-38
    発行日: 2020/12/12
    公開日: 2020/12/09
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    薬剤耐性対策は喫緊の課題であり,解決に向けて教育と啓蒙に取り組むべきとされるが,アンケート調査の結果から岩手大学教育学部生の多くはこれに関連する知識を持っていないことが分かった.現状と取り組むべき課題を認識させるために,岩手大学教育学部生のスマートフォン画面の薬剤耐性因子の調査を行った.45台のスマートフォン画面からサンプリングし,抗菌薬(アンピシリン,テトラサイクリン,ストレプトマイシン,リファンピシンのいずれか)を含む培養液で培養した結果,14台(31%)について微生物の増殖がみとめられた.これらの内3台のスマートフォン由来の試料についてはテトラサイクリンを含む培養液で微生物の増殖がみとめられ,DNAを解析したところ,テトラサイクリン耐性因子であるtet(K)が検出された.本報告の結果は薬剤耐性菌が身近に存在していることを示しており,教育学部生が現状を把握し,薬剤耐性対策の重要性を理解する契機になると考える.

  • 伊藤 新太, 藤原 歩, 安川 洋生
    2020 年 35 巻 2 号 p. 39-42
    発行日: 2020/12/12
    公開日: 2020/12/09
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    ゲノムデータベースで公開されているNaegleria fowleri(ネグレリアフォーレリ;ヒトの脳に侵入することがある病原性アメーバ)のmtDNA(ミトコンドリアDNA;本生物種の場合,約50000塩基の環状DNA)の塩基配列のうち3件について,汎用のワープロソフトとネット上のフリーソフトで解析した.その結果,これらのmtDNAのAT含量は74.8%であり,相互によく似ていることが分かった.また,約400塩基のほぼ同じ配列が2回反復している領域が在ることが分かった.同様の反復配列は近縁種のN.lovaniensisN.gruberi(ネグレリアロバニエンシスとネグレリアグルベリ;いずれもヒトに病原性がないとされる)のmtDNAにはみられなかった.このような解析はネット環境が整っていれば比較的容易に実施できるため,高校の学習に取り入れ生徒の学習意欲の向上に役立つかもしれない.一方,この解析の過程で見出した反復配列はN.fowleriの近縁種にはみられないため,本病原体を特異的に早期発見するために利用できるかもしれない.

  • 高橋 天地, 佐々木 知美, 菅井 響, 安川 洋生
    2020 年 35 巻 2 号 p. 43-46
    発行日: 2020/12/12
    公開日: 2020/12/09
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    市販の乾燥ウミホタルを破砕してDNA粗抽出液を調製し,PCRによりDNAの特定の領域を増幅する実験を検討した.増幅する対象をミトコンドリアDNAにコードされるシトクロームCオキシダーゼサブユニット1の遺伝子として,そこから500bp,1000bp,及び1551bpを増幅する反応を行ったところ,いずれにおいても明瞭な単一のPCR産物がみとめられ良好な結果を得た.また,増幅する対象を核DNAの18Sr DNAとして,そこから500bp,1000bp,及び1906bpを増幅する反応を行ったところ,これについても良好な結果を得た.

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