日本の 15 歳生徒の科学に対する態度の指標は,全ての項目でOECD平均を下回っている.その中でも「理科学習者としての自己効力感」「科学の楽しさ」「科学に関連する活動」の指標が特に低い.これは,日本の中学生が,自身の興味の持てる具体的な問題に対して理科(科学)を適用し問題解決を行う経験に乏しいことが原因の一つではないかと著者らは考えた.そこで 「科学的問題解決」の過程を体験することで理科学習者としての自己効力感を高めることを目的とした授業を構想した.「科学的問題解決の過程」, すなわち, 理科を使いこなして問題解決する過程を,「課題と理科を結び付ける5つのプロセス」として我々は具体化した. その上で, この「5つのプロセス」を学び、体験し活用する授業を, 中学校3年生の総合的な学習の時間「探究」中で,実践した. 解決すべき問題の題材には,日本の中高生が比較的高い興味関心を持つ宇宙開発(人工衛星)を選んだ. また, 人工衛星を通じて「5つのプロセス」を体験するために, 超小型衛星デモ機『TopGunSat』を用いた. 本報告では,実践の概要を報告するとともに,本実践のために新たに開発したルーブリックを用いた本実践の評価についても報告する.
本研究は大学における教員養成の授業において,理科教員を志望する学生の理科授業実践力を育成させる方法に関するものである.学部生は授業者として授業を実践した経験がないため,授業の設計や指導法の理論を学ぶ機会は多くても,教育実習前に授業実践で自分自身の指導法を試行したり,評価したりする機会は少ない.あらかじめ準備した学習指導案の通りに授業実践することができる程度となっており,熟練教員の理科授業と比べると生徒への発問,声掛かけ,追究の方法など,さまざまな面で劣る.そこで,学部の授業において,教職経験の豊富な大学教員と2か月間の教育実習で理科授業の実践経験のある教職大学院の学生が助言者(メンター)となり,学部生の理科授業設計を支援することを試みた.その結果,特に重点を置いた点について,メンター制を導入する前の授業に比べて改善が見られた.加えて,メンターとして関わった大学院生の授業実践力も向上することがわかった.
理科の授業で,現象の理解を促すために教材の「可視化」「見える化」が必要である.また,その理解を深めるために,授業の中で知識・現象・日常生活の関係性を想像させたい.そこで,「可視化」と「見える化」の目的の違いを踏まえ,想像させることを強調するために,「可想像化」と「想像できる化」という言葉を新しく定義し,見えていない部分や現象を想像して考えられるように授業を組み立てる指針をつくった.この研究では,見えない現象を人の動きで表した擬人化体感動画を例に,可視化から想像できる化の過程を示し,授業の導入における「可想像化」と「想像できる化」の例を示した.この研究を,想像できる化による授業づくりのためのガイド作成に向けた準備とし,今後は,想像できる授業の方法を示したい.
本研究の目的は,調査問題を開発・実施し,小6と中1の比の理解の実態を明らかにした上で,指導への示唆を得ることである.調査の結果から,学年進行に伴って比の理解が深まっているとはいえないこと,比の値よりも比の性質を活用して比の相等を判断する傾向があること,比の背後にある「第3の量」に関する理解が不十分であること,事象の均質性に関する理解が不十分であること,比例式の理解が十分とはいえないことが実態として明らかになった.これらの結果を踏まえ,比の指導に関する示唆として,比が等しくないことを説明する機会を設けること,比の背後にある「第3の量」を明示的に指導すること,事象の均質性を検討する機会を設けること,比例式を解く活動の充実をはかることを得た.
科学教育における子どもの個人的認識論に関する研究動向について,特に小学生を対象とした形式的認識論と実践的認識論の調査内容・方法,実態に関してまとめると,以下のことが明らかになった。1点目に,形式的認識論と実践的認識論の調査内容としては両者とも共通して,主として科学的知識の性質や実験の性質,証拠の生成と評価といったカテゴリーが設定されていること。2点目に,調査方法に関しては,形式的認識論と実践的認識論ともに,主として半構造化インタビューを用いているが,実践的認識論の調査では,課題や探究が終わった後にそれを行っていること。3点目に,小学生は実践的認識論の調査において,理論的な主張とそれを裏付ける証拠とを識別し,区別することができる等の実態が明らかになっており,加えて,子どもが評価的推論を行っているという証拠等の詳細まで明らかにされていること。さらに,幼小接続の視点から幼児の個人的認識論の調査方法を検討すると,実物を使った観察活動を取り入れるなど,探究の過程の一部を実施することで実践的認識論まで調査できる可能性がある点が示唆された。
本稿ではConceptual Profile Theory(CP理論)に基づき,「遺伝子」の概念に関する異種混交的な概念理解モデル(CPモデル)の構築を目指して質問紙・インタビュー調査を通じた経験的検討を行なった.高校生や大学生,大学院生を対象とした調査から,志賀・山本(2024)において特定した「遺伝子」に関する4つの意味のゾーンが,いずれも概念使用の文脈に直面した個人の瞬間的な思考展開に表れうるものであることが示された.また,当該調査を通じて,「遺伝子」を自然選択の単位と見做す「遺伝子選択主義」的な考え方が新たに確認された.
本研究の目的は,小学校低学年における教科等横断的な教材の開発,実践及びその評価を行うことである.先行研究の分析によって明らかにされた生活科の位置づけと理数系科目との関係性に注目し,生活科と算数科との横断に焦点を当てた.またSTEAM教育やプログラミング的思考の育成にかかる動向を踏まえ,教材開発においては,プログラミング的思考の育成に注目した.本稿では辻他(2025)を踏まえ,第2学年を対象とした.これらの検討・考察に基づいて提案する教材は,生活科や算数科の学びにも寄与する可能性が理論的に考察された.今後の課題として,実践とその分析結果に基づく教材の改善に加え,各教科の学習内容や配列などを再検討し,カリキュラム・マネジメントの観点から検討することが必要である.
本研究は,小学校教員養成の理科の授業科目において,災害を引き起こす川を題材とした民話に描かれた先人の自然観は,川の災害に対する学生の指導観の変容にどのように寄与するかを明らかにすることを目的とした.具体的には,民話「姉川と妹川」を用いて,川と人間とのつながりに対する先人の捉え方を提示した上で,グループインタビューを実施し,回答をSCATにより分析した.その結果,当初は,川の災害に関する理科の学習において,水害発生の原理を科学的に理解し,川(水害)の危険性を認識するような指導を重視していた学生が,川の恩恵や共生の視点に基づいた指導の重要性に気付くなど,自然観および指導観に変容が見られた.以上より,民話に描かれた先人の自然観は,学生が自分自身の自然観や指導観を省察し再構築する契機となり得ることから,理科の教員養成における有効な教材となる可能性が示唆された.
This study examines the implementation of climate-action simulations across five educational levels in Japan, from sixth-grade elementary to Master’s-level teacher training. Using the En-ROADS Climate Solutions Simulator, lessons were designed to support leaners’ acquisition of content knowledge about climate change and to cultivate futures thinking—the ability to consider long-term consequences, explore trade-offs, and compare multiple climate scenarios. Lesson content and structure were adapted to match learners’ developmental stages, ranging from simple, visible policy choices to complex, stakeholder-based decision-making. Data were collected through pre- and post-questionnaires, worksheets, reflections, and classroom observations. Findings show that as students advanced through the educational levels, their climate policy decisions became more strategic, and their futures thinking more sophisticated. In-service teachers demonstrated the most integrated use of policy tools and long-term reasoning. These results suggest that simulation-based learning can effectively support both climate change understanding and the development of futures thinking in school science and science teacher training.
This pilot study explored the impact of action-oriented video training on Mongolian secondary teachers’ climate change content knowledge and instructional practices. Six teachers (four pre-service, two in-service) engaged with three regional case videos from Indonesia, India, and Malaysia. After the training, data were collected through focus group discussions and analysed using the SCAT method. Results showed improved understanding of climate change as a human-driven issue and greater interest in participatory teaching methods such as projects, storytelling, and local action. Participants also expressed a shift in assessment approaches, preferring reflective and behaviour-based tools over traditional testing. While the intervention was short-term, it provided useful insights into how video-based resources can support teacher training in climate change education. Further research is needed to assess long-term application and integration into classroom practice.
データ駆動型GIGAスクール構想を担える教員養成対策,加えて,教員採用試験早期化対策を志向した,理科教員養成の実践・研究の進展が必要である.本研究は,メンター的効果を期待した模擬授業ビデオを活用した,小学校理科教員養成の成果を検討することを目的とした.兵庫県内の大学の教育学部において,2024年に実施した「理科」における,メンター的効果期待模擬授業ビデオ観察評価指導調査(第8回授業),模擬授業・教員採用試験模擬授業評価基準相互評価演習に対する振り返り指導調査(第14回授業)を研究対象とした.生成AI・SCATによる分析などで分析した.分析の結果,学内のメンタリングを,共同エージェンシーと捉えると,共同エージェンシーを育成しながら,当該授業の目標の1つである模擬授業実践力の育成に,本研究で実施した,メンター的効果を期待して活用したビデオ教材の効果が認められると推察される結果であると考えられた.
本研究では,理科で緊急地震速報取り扱い上の課題を示した.そして課題解決の手立てとして,新たに開発した教材を報告した.教材は,1㎝間隔で並べたドミノを地震波のP波に,3㎝間隔で並べたドミノをS波に見立て,P波を表現したドミノの途中に,プログラミング教材「MESH(ソニーマーケティング株式会社製)」でiPadから音が鳴るようにプログラミングをした動きブロックを置き,S波を表現したドミノのゴール上に家の模型を置いた教材である.そして教材を活用したSTEM教育により,緊急地震速報が鳴ってからS波が到達するまでの時間との関係性についてなど,緊急地震速報のしくみを正しく理解することができる可能性を示唆した.