日本科学教育学会研究会研究報告
Online ISSN : 1882-4684
ISSN-L : 1882-4684
最新号
選択された号の論文の28件中1~28を表示しています
表紙・目次
発表
  • ―高校生が提案する地域連携型サイエンスボランティア―
    渡邉 乙葉, 吉仲 花音, 井本 陽菜美, 大下 英一
    2026 年40 巻7 号 p. 1-4
    発行日: 2026/06/14
    公開日: 2026/06/11
    研究報告書・技術報告書 フリー

    サイエンスボランティアを科学教育の一環として,多様な他者と協働しながら科学的な根拠に基づき社会を生き抜く力を育む場と考えている.私たち高校生が活躍するために必要な3つの力「読み解く力」「考え実行する力」「論じ合う力」を育むことができる.私たちは,玉高サイエンスチーム“たまっこラボ”を結成し,実験テーマやリーダーの決定,予備実験,実験内容の計画・実践,振り返りなどを工夫しながら繰り返し,STEAM教育の視点で深い学びと共に取り組んでいる.最近,私たちが実践した「ぶんぶんごまをつくろう!」のイベントでは,参加者に寄り添った内容を考え楽しく学べた.その結果,多くの参加者を満足させることができた.さらに,サイエンスボランティアは,ルーブリック付きの活動報告書による振り返りによって,参加者だけでなく高校生自身の成長にもつなげることができた.現代社会に必要な力を育む有効な取組である,サイエンスボランティアをSTEAM教育の視点をもった科学教育として,私たち高校生が提案する.

  • ―生成AIとCBTで実現する汎用性の高い多段階型の選択式テストの開発―
    大下 英一
    2026 年40 巻7 号 p. 5-8
    発行日: 2026/06/14
    公開日: 2026/06/11
    研究報告書・技術報告書 フリー

    文部科学省(2019)「学習評価の在り方ハンドブック」では,単なる知識の再生ではなく,学習したことを活用して課題を解決することの重要性が強調されている.しかし,記述式評価では,純粋な「思考・判断」「探究」のプロセスと「記述・表現」のスキルが混在してしまう.さらに,課題研究を中心とする探究活動で育成された探究力を評価する手法は,それぞれの学校が自校のための評価方法を研究開発し試行錯誤しながら実施している.そこで,本研究では,将来地域で活躍する科学技術人材に必要な力を「読み解く力」「考え実行する力」「論じ合う力」と定義した.そして,これらを客観的に評価するため,教科を問わず,教育課程内外を問わない探究的な学びを評価するために,共通評価テストとして「読考論パフォーマンステスト」を研究開発できた.さらに,学年も問わず汎用性の高い多段階型の選択式テストを生成AIによって作問し,ルーブリックを組み合わせCBTで実施することで,生徒の変容や取組の成果を可視化し,生徒への迅速なフィードバックと大規模実施を可能とした.

  • ―諸外国の研究における測定方法の整理―
    堀田 晃毅
    2026 年40 巻7 号 p. 9-14
    発行日: 2026/06/14
    公開日: 2026/06/11
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究は,理科における変数制御戦略の転移がどのように測定されているのかを明らかにすることを目的とし,堀田(2025)がレビューした諸外国の14件の研究を対象に分析を行った。文脈,問題形式(問題内容・測定形式),時間(測定時期)という観点から測定方法を整理した結果,多くの研究が実験計画の立案や実験の妥当性評価を課題として用いており,特に妥当性評価は質問紙形式を用いて測定している傾向が見られた。また,転移レベルの捉え方については,「近い」「遠い」といった分類が多く用いられているものの,文脈や問題形式,実施時期の扱いには研究間で差異が見られた。これらの結果から,変数制御戦略の転移を検討する際には,多様な文脈や問題形式を組み合わせた課題設計と,測定時期を含めた測定方法の検討が重要であることが示唆された。

  • 下村 岳人, 升谷 有里, 山田 明日可, 下村 早紀
    2026 年40 巻7 号 p. 15-18
    発行日: 2026/06/14
    公開日: 2026/06/11
    研究報告書・技術報告書 フリー

    令和7年度全国学力・学習状況調査における調査結果に鑑みても,分数の学習指導には更なる改善が求められるといえる.また,自由進度学習をはじめとする新たな教育方法が提案される現代の数学教育において,学級で子ども同士が議論を交わしながら数学的知識を構成していく過程や,その価値に関する詳細な検討も必要と考えた.以上を踏まえ本研究では,小学校第3学年の分数単元を分析対象とすることから,一斉指導場面における数学的交渉の特徴を指摘することを目的とした.そこで本稿では,プレテスト,ポストテスト及び,1時間分の研究対象授業を実施するとともに得られたデータについての分析を行った.分析結果からは,間接的な数学的交渉であっても数学的知識の構成に影響を与えうることが示唆された.そしてこの点は,我が国の独自性を有した問題解決学習の一斉指導場面にみる数学的交渉の特徴の一つにあたることを本研究の成果として提出した.

  • 佐々木 弘記
    2026 年40 巻7 号 p. 19-22
    発行日: 2026/06/14
    公開日: 2026/06/11
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究は,科研費研究成果公開発表(B)「ひらめき☆ときめきサイエンス」において小・中学生を対象として実施した講座を取り上げ,参加者の講座中の意識の推移を,運勢ライン法により分析することを目的とした.講座では,科研費研究の成果を,受講者が体験的に学ぶ活動として構成した.具体的には,タブレット教材を用いた情報モラル教育,視点移動能力に関する活動,ロボホンを用いたプログラミング,VR空間でのバーチャルロールプレイングなどを取り入れた.分析の結果,「楽しさ」は,小学生では「ロボホンのプログラミング」が2.71で最も高く,中学生では「昼食・大学見学」が2.77で最も高かった.また,「わかりやすさ」についても,小学生・中学生ともに全体として正の値を示し,講座が概ね理解しやすいものとして受け止められていた.これらの結果から,本講座では,講義的説明場面よりも,ロボホンやVRなど操作的・体験的活動の場面において肯定的な意識が高まる傾向が示された.さらに,運勢ライン法を用いることで,講座全体の満足度だけでは捉えにくい,活動場面ごとの参加者の意識推移を可視化できることが確認された.

  • 佐伯 英人, 和泉 研二, 森 大樹, 出穗 佑貴, 瓦屋 大志, 中野 光彦
    2026 年40 巻7 号 p. 23-26
    発行日: 2026/06/14
    公開日: 2026/06/11
    研究報告書・技術報告書 フリー

    山口大学教育学部附属山口小学校の第3学年A組と山口大学教育学部附属光義務教育学校前期課程の第3学年B組で,それぞれ「虫」を探す活動を行った.その後,遠隔合同授業をA組とB組で行い,生き物(虫)の静止画を見せ合って話し合い,結論を導出した.本研究の目的は,児童が「虫」と認識した生き物に関する知見を得ることである.本研究を通して得られた主な知見は次の2つであった.

    ①児童が「虫」と認識した生き物は,脊椎動物の「は虫類」,「両生類」と無脊椎動物の「節足動物(甲殻類)」,「節足動物(昆虫類)」,「節足動物(その他)」であった.

    ②児童は,一部の生き物(虫)については種の階級で同定したが,生き物(虫)の多くを目や科といった階級で同定した.

  • ―「供受体 — 反応」概念に注目して―
    寺田 光宏, 今井 泉
    2026 年40 巻7 号 p. 27-30
    発行日: 2026/06/14
    公開日: 2026/06/11
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本論では文部科学省で新学習指導要領の策定に向けての議論中である「中核的な概念」と分けて,教科の本質的包括的な概念を「中核概念」とした.学習内容との繋がりが分かりやすいように,中核概念(5分類)の中の「供与体 — 反応」概念(表1)について,構成する概念(構成概念)を選定し,この中核概念の特質と課題を検討することを目的とした.方法としては,「酸・塩基 - 反応」概念と「還元剤・酸化剤 - 反応」概念を,供与体,移動物質,受容体,反応形態,その量的関係で並べて関係づけた図を作成した.これにより,構成概念を確定し,「供与体 — 反応」概念の特質と今後の課題を整理した.

  • 小林 正明, 窪木 大輔, 逸見 凌志, 坂本 流誠
    2026 年40 巻7 号 p. 31-34
    発行日: 2026/06/14
    公開日: 2026/06/11
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,工業高等学校におけるモノづくり教育の充実を目的として,ゼロハンカーの制作を教材化する可能性について検討した.ゼロハンカーの制作は,設計・加工・組立を通して実践的な学習が可能である.しかし,高等学校の授業でゼロハンカーの製作を実施するのは自動車工学の専門的な知識の不足により困難である.そこで,自動車の制作経験の少ない教員や生徒でも活用できる教材を開発していく,教材には,ゼロハンカーをキット化した教材や,自動車工学の基礎知識と制作手順をまとめた教科書の整備を提案し,工業教育における技術者育成への活用を目指した.

  • 高原 周一
    2026 年40 巻7 号 p. 35-38
    発行日: 2026/06/14
    公開日: 2026/06/11
    研究報告書・技術報告書 フリー

    これまで,物理分野における熱力学に関する誤概念研究は行われているが,化学分野におけるエネルギーおよび熱に関する誤概念研究は行われていない.そこで,大学の授業の中で受講生を対象として高校化学で学習するエネルギーおよび熱に関する誤概念を調査した.その結果,「強い引力を受ける粒子のエネルギーは高い」「陽イオンは貴ガスの電子配置で原子より低エネルギー」「高温で起こる変化は発熱変化」「結合をつくるにはエネルギーが必要」「発熱するとエネルギーが増え,吸熱するとエネルギーが減る」といった誤概念の存在が明らかになった.これらを払拭するために取り上げるべき科学概念について考察した.

  • 野村 祐子
    2026 年40 巻7 号 p. 39-44
    発行日: 2026/06/14
    公開日: 2026/06/11
    研究報告書・技術報告書 フリー

    理科の4分野(物理・化学・生物・地学)を統合した高等学校理科必修科目の導入に向けて,分野固有の強固な既有知識が科学リテラシーの育成を妨げる認識論的障害を克服する必要がある.このため,4分野を接続する「移動現象」の系統的取扱い,構造化の不足を補うための調査・研究が求められる.本研究は,人新世を文脈とした理科カリキュラムの中で扱われるべき人間活動が関わる「強制対流」に着目し,対流概念を構造化することによって,中等理科教育における4分野間の接続性の強化を図ることを目的とした.理工学分野における強制対流に関わる諸概念の定義の実態と,科学教育分野における対流概念の扱われ方について,図書と教科書の記述を調査し,内容を比較・分析した.分析結果に基づき,対流概念が使用される文脈に依存しない基礎科学の法則とミクロな視点を基盤として,4分野を接続する対流概念の概念地図を作成した.

  • An Information Theoretic Perspective: Focused on Learner's Performance Selection
    Tomoki SAITO, Hasan UŞTU, Ahmet YALKIN
    2026 年40 巻7 号 p. 45-50
    発行日: 2026/06/14
    公開日: 2026/06/11
    研究報告書・技術報告書 フリー

    The concept of STEM integration remains ambiguous, which hampers both empirical research and curriculum design. Drawing on general systems theory and Shannon’s information theory, this paper defines integration in terms of learners’ performance selection. Let U denote the set of all verbs that could be used in a STEM Integrated Learning Environment and let O denote the set of verbs observed in learners’ artefacts. The degree of integration is quantified as the entropy reduction. Because verb frequencies are highly non‑uniform, the traditional Jaccard coefficient is inappropriate to describe the degree. We therefore employed a weighted Jaccard similarity and showed that the measure is numerically identical to the entropy‑reduction measure. Operational procedures for counting verb selections and computing the degree are described. Theoretical and practical implications for assessment, curriculum design, and teacher professional development are discussed. The paper concludes with a statement of limitations and directions for future empirical validation.

  • A Pilot Study
    Khalifatulloh FIEL'ARDH, Karen ONODERA, Hiroki FUJII, Shinetsetseg GER ...
    2026 年40 巻7 号 p. 51-54
    発行日: 2026/06/14
    公開日: 2026/06/11
    研究報告書・技術報告書 フリー

    This study reports on the pilot implementation of an asynchronous teacher training course developed by an international Community of Practice (COP) of teacher educators across Asia. Responding to UNESCO's Greening Education Partnership and the recognised gap in Climate Change Education provision within teacher education, the COP drew on regional expertise to design a course grounded in cross-curricular and action-oriented approaches. The pilot involved 21 pre- and in-service science teachers from Indonesia, Japan, and Mongolia. Data from pre/post-tests, structured reflections, and focus group discussions were analysed through thematic analysis. Results showed that participants moved toward more integrated and student-centred conceptions of CCE, though many continued to situate climate topics within science subject boundaries. The findings offer early evidence for how international COPS can contribute to implementation of CCE in science education.

  • 竹野 英敏, 池内 海渡, 桑原 慧
    2026 年40 巻7 号 p. 55-60
    発行日: 2026/06/14
    公開日: 2026/06/11
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究は,タッチタイピングという高度な手指運動と視覚・言語処理の統合タスクを25分間行った後の,5分間の休息活動(「安静」および「スマホゲーム」)が,再開された25分間の作業中における脳波動態にいかなる変容をもたらすかを検討した.その結果,積極的休養(スマホゲーム)のゲーム群は,休息中にθ波を高めたことで脳をアイドリング状態に保ち,それが休息後のタイピング作業後半5分のα2波の維持(注意持続)に繋がった.しかし,その覚醒が『集中』としてプラスに働くか,『興奮による空回り』としてマイナスに働くかは,普段のゲーム習慣などの個人差に依存し,それが正答率の大きなバラツキとして現れたと考えられ,主観的な集中感や作業精度を低下させたと言える.対照的に,消極的休養(安静)は,強い主観的ストレス(イライラ)を与えるものの,作業再開後の認知的な構えを強化し,正答率を有意に向上させることが明らかとなった.

  • 桒原 慧, 竹野 英敏
    2026 年40 巻7 号 p. 61-66
    発行日: 2026/06/14
    公開日: 2026/06/11
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,土砂災害時における表層崩壊現象を題材とし,写真を基に動画生成AIで加工したリアリティの高い映像と,イラストを基に加工した抽象的な映像が防災意識に与える影響を検討した.大学生11名を対象に,各映像視聴時の脳波測定および質問紙調査を実施し,認知状態や情動反応を比較分析した.その結果,平均値として統計的に有意な差は確認されなかったものの,調査協力者内差分に着目すると,一部の参加者においてθ波の減少およびβ波の増加が観察された.これらの結果から,映像のリアリティの違いが覚醒水準および注意状態に影響を与える可能性が示唆された.また,アンケート結果から,両映像とも防災意識向上に寄与する傾向が確認された.以上より,リアリティの高い映像は個人差を伴いながらも認知状態に影響を与える可能性が示唆された.

  • 2018年西日本豪雨による洪水・氾濫,斜面崩壊を例として
    藤岡 達也, 川真田 早苗
    2026 年40 巻7 号 p. 67-72
    発行日: 2026/06/14
    公開日: 2026/06/11
    研究報告書・技術報告書 フリー

    近年,気候変動に伴い,国内各地において,台風や前線の発達等により頻発する豪雨災害が注目されている.今日,災害につながる自然現象の情報収集,防災・減災への対応は喫緊の課題であり,国土交通省・気象庁,内閣府の国レベルでの啓発から,地域での防災士の養成まで,様々な対策が見られるようになってきた.しかし,住民が防災・減災の基本となる,自然現象による災害を科学的に捉え,理解し,備えることが可能になる啓発や教育については,学校や社会教育の中で十分に取り組まれているとは言いがたい.本稿では,温帯モンスーンに属し,地殻変動の著しい日本列島の中で,繰り返される気象災害への対応の現状と課題を整理し教育内容・方法,システムについて,実践例等を挙げて検討する.特に理科を中心とした教科教育,カリキュラム・マネジメントの意義と課題を踏まえ,学校と地域との連動を視野に入れた教育・啓発に関する活動について考察した.

  • 外塚 恵大, 木村 優里
    2026 年40 巻7 号 p. 73-78
    発行日: 2026/06/14
    公開日: 2026/06/11
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,ヘルスリテラシーの活用の側面に注目し,病気の予防を目的とした場合,行動が後回しにされたり,十分に行うことが難しいという課題の解消を目指して,健康行動プロセスアプローチ (HAPA) を基盤とした教育プログラムを開発することを目的とした.そのために,理論的枠組みを検討した上で,先行研究の知見をもとに,本研究の目的に鑑みた教育プログラムの構成を検討した.その結果,「自らの状況の把握」,「計画(“Action Planning”/“Coping Planning”)」,「協働的な省察」,「再計画」の4つの活動を組み込むことで,歯周病予防のための行動を促進することを目的とした教育プログラムが開発できた.

  • ―市販薬オーバードーズ問題を扱う探究学習モデルへの基盤的検討―
    和田 重雄, 岡浜 茉衣莉
    2026 年40 巻7 号 p. 79-82
    発行日: 2026/06/14
    公開日: 2026/06/11
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,緑藻 Raphidocelis subcapitataを用い,医薬品・化学物質による生物影響を可視化する教育教材の開発を試みた.従来の教材では,緑色の濃淡や濁度などの目視可能な変化を中心に評価してきたが,本研究では葉緑素量の測定およびPI染色による観察を導入し,細胞レベルの応答を捉えることを目指した.コリスチン曝露では,PI染色率の上昇と葉緑素量の低下が概ね対応し,細胞膜障害を伴う影響を視覚的に示す教材として有用であることが示唆された.一方,銅(II)イオン曝露では,葉緑素量が大きく低下したにもかかわらず,高濃度条件ではPI染色像が明瞭に確認されなかった.このことから,化学物質や濃度条件によって評価指標が反映する現象や解釈が異なることが示された.さらに,簡易蛍光顕微鏡でもPI染色像を一定程度観察できたことから,本教材は,複数の指標を比較しながら測定法の原理や限界を考察する探究型学習教材として有用であり,市販薬オーバードーズ問題を扱う医薬品リスク教育への展開が期待される.

  • 喜多 雅一
    2026 年40 巻7 号 p. 83-86
    発行日: 2026/06/14
    公開日: 2026/06/11
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本カリキュラムは,PhETやVensimを用いたDry Labを通じて,プロセススキルズ科学の本質(NOS)システム思考を統合し,気候変動等の現実世界の課題を解決する能力を育成しすることを目指した.第1段階では,モデル構築により仮説形成,変数制御,データ解釈といったプロセススキルズを習得する.第2段階では,NOSの概念を導入し,科学知識の暫定性やモデルの役割をメタ的に考察する.科学が証拠に基づく近似であることを理解し,シミュレーション結果を批判的に捉える力を養う.第3段階では,システム思考を用い,フィードバック・ループやレバレッジ・ポイントを特定する.科学的根拠と不確実性を踏まえ,持続可能な社会に向けた具体的な解決行動(SSI)を科学的に策定する.

    この三層構造により,単なる技能習得に留まらない,社会課題を主体的に解決するための科学的リテラシーの育成を目指した.

  • ―個別学習を加えることの効果―
    石井 俊行, 假屋 美有, 長島 雄介
    2026 年40 巻7 号 p. 87-92
    発行日: 2026/06/14
    公開日: 2026/06/11
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究は,生活科における児童の学習活動と小学校理科の「科学的思考のプロセス」の接続を明らかにするとともに,児童の主体的学びや科学的思考をより的確に捉えるための評価指標の枠組みを検討することを目的に行った.その結果,生活科における学習活動が理科における「科学的思考のプロセス」と対応することが確認された.また,藤森ら(2018)の評価指標に「個別学習」の観点を追加した新たな評価指標を用いることで,概念形成や科学的思考の深化,学習への主体的態度が顕著に見取ることが可能となることが明らかになった.

  • 矢野 泰志, 吉川 喜久, 入江 隆
    2026 年40 巻7 号 p. 93-98
    発行日: 2026/06/14
    公開日: 2026/06/11
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究の目的は,岡山県と大阪府の中学校技術科の「情報技術」分野において,両校間で交流授業を実施することであった。メタバース型仮想空間サービス「MetaLife」を用いて両校をオンラインで接続し,情報倫理の向上における教育効果を検証した。この授業では,生徒はアバターを用いて自己紹介を行い,共通のテーマに基づいて意見交換を行った。実施後のアンケート調査と観察の結果,アバターを介した対話は生徒の内発的動機付けを促進し,ICT利用に対する感受性と態度の向上に貢献したことが明らかになった。生徒はデジタル技術を単なる利便性の向上手段としてではなく,コミュニケーションや生活を向上させる手段として捉えることができるようになった。

  • 板垣 大助, 岡崎 正和
    2026 年40 巻7 号 p. 99-102
    発行日: 2026/06/14
    公開日: 2026/06/11
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本稿では,図形の相互関係の理解に伴う,話し合いの変容の特徴を指摘することを目的とした.目的の遂行にあたっては,実験授業を実施し,子ども同士の話し合いにおけるルーティンを特定し,その変容における特徴を事例的に捉えた.グループの話し合いにおける,ルーティンの変容の特徴として,「1 提案者と聞き手の役割が交代したこと」「2 思考の対象が平行四辺形−正方形間から平行四辺形−長方形へと変わったこと」の2点が挙げられた.

  • 〜第4学年割合指導に焦点を当てて〜
    狩野 生翔, 中畑 茉緒子
    2026 年40 巻7 号 p. 103-106
    発行日: 2026/06/14
    公開日: 2026/06/11
    研究報告書・技術報告書 フリー

    算数科において,文章題解決に困難を感じている子どもは少なくない.その中でも,割合文章題は特に問題解決に課題が残されており,問題文,図,式の.間での記号表現を変換する力を育成する必要がある.そこで本研究では,割合文章題において問題文から図や式へ変換していく過程で,子どもたちが問題文等の示す状況を把握し,問題解決をすることができるような学習指導の検討を目的とした.基礎的考察に基づき,記号表現の変換過程では対象となる状況の想起が必要となること,そのための位置付けとして子どもの描く絵が機能するとの知見が得られた.そして,基礎的考察に基づき,絵を描くことを通した割合文章題の学習指導について検討・提案した.今後の課題は,本稿において検討・提案した学習指導の有効性について考察することである.

  • ―第5学年小数の乗法単元に焦点を当てて―
    松本 翔太
    2026 年40 巻7 号 p. 107-110
    発行日: 2026/06/14
    公開日: 2026/06/11
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究の目的は,模倣を視点とした算数科授業を検討することである.算数科授業を検討するにあたっては,トマセロ(2006)の模倣に関する理論,主に,E.L.およびI.L.とスケンプ(1992)が主張する道具的理解・関係的理解を関連づけ,算数・数学教育における模倣の重要性を整理した.そして,レイヴら(2017)の『正統的周辺参加』理論を視座とすることから,算数科授業において子どもの認識をI.L.に到達させるためには,数学の概念や性質に依拠したI.L.を習得することが重要であることを明らかにした.また,授業構想においては,小数の乗法における筆算に対する子どもの理解が道具的理解に留まっているという実態を示した.その上で,小学校第5学年を対象として,子どもの認識がI.L.に到達するために小数点の移動の目的を思考する機会を設定することを主とする授業を構想した.

  • 矢萩 陽介
    2026 年40 巻7 号 p. 111-114
    発行日: 2026/06/14
    公開日: 2026/06/11
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本稿は,児童の比例的推論の育成に向けて,2量の間の割合に着目した問題解決能力を促す授業構想を提案することを目的とする.先行研究及び教科書の分析から,多くの児童は比例的な問題解決において組み立てユニットを用いた推論(水準3)には達しているものの,2量の割合に基づく乗法的比較(水準4)へ移行する際に,「量から数への抽象化」という質的な困難を抱えていることが示唆された.また,教科書等では主に異種の2量が扱われていることが,この移行を妨げる要因の一つと考えられる.この課題を克服するため,本研究では第5学年を対象に,異種の2量ではなく「同種の2量」を用いた欠落値問題を意図的に扱うことで,抽象化の困難を回避しながら乗法的比較を促す具体的な授業構想を提案する.今後は,提案した授業を実施し,その有効性をデータに基づいて検証することが課題である.

  • ―教育DX対策を主題とした小学校理科教員養成科目「理科」を事例として―
    杉本 剛
    2026 年40 巻7 号 p. 115-118
    発行日: 2026/06/14
    公開日: 2026/06/11
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究は,教育DX対策を主題とした,小学校理科教員養成指導において,複線型授業展開における単元デザイン指導に関する課題を検討することを目的とした.複線型授業展開における単元デザイン案を分析対象とした.分析の結果,A評価+B評価は計46.2%,D評価+E評価は計50.0%であり,単元デザイン作成に関して評価が分れる結果であった.E評価であった研究対象者のICSTシステムコンセプト・フロー,フォーカス・クエスチョンは,良く作成できていると評価できた.上記の作成は,単元全体の構成・流れを俯瞰的に捉えることがきる利点があるが,全体・協働・個別の授業形態を効果的に組み合わせて教育活動を組み立てていくという,複線型授業展開における単元デザインの資質能力を育成していく指導法の研究・実践の進展が,デジタル学習基盤を前提とした新たな時代における教師の指導性を適切に育成する,教育DX対策を主題とした,小学校理科教員養成指導において,今後取り組むべき重要な課題となると考えられた.

奥付
feedback
Top