本研究では, メンデルの法則を中心とした「遺伝」の学習の取り扱いについて, 日本とドイツの教科書を比較し, 両者の特徴について考察した。その結果,「遺伝」という単元を構成する内容項目には日本とドイツで共通している点がある一方で, 幾つかの相違点が認められた。これらの相違点から, 日本では「遺伝の法則」に関する一般的, 理論的な理解が重視されているのに対して, ドイツでは「遺伝の法則」の基本を理解するとともに, この法則を生活場面においてより実際的, 応用的に深め, 利用していくことも重視されていることがうかがえた。また,「遺伝の法則」または「メンデルの法則」と一般に呼ばれている科学的「法則」のうち, 日本で「優性の法則」と呼ばれているものが, ドイツでは「斉一の法則」と呼ばれており, その意味内容が異なること, それに伴って取り扱われる遺伝の題材や学習の展開の仕方に違いがあることが明らかになった。
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