タバコ立枯病菌の土壌中における分布,消長,および菌の生存におよぼす環境条件の影響について,変法ドリガルスキー培地の平板法および指標植物法により検討した. 1.立枯病菌は,地表から深さ80cmまでの各土壌層に分布し,翌年の第1次感染源となりうることが示唆された.タバコの休作1年目の畑では,土壌の各層から10^2/g〜10^4/gの菌が分離されるが,休作2年目には菌の分離がきわめて困難となった. 2.立枯病菌は,20℃以上の条件下においた滅菌脱イオン水および滅菌土壌中では増殖し,350日以上生存するが,10℃以下では100日以内に死滅し,3℃では約50日しか生存しなかった. 3.立枯病菌は,乾燥状態では5日以上の生存が困難であるが,容水量の40%以上の水分をもつ滅菌肥土中では旺盛に増殖し,生存期間も350日以上に及ぶ,80〜100%の肥土において増殖が最も顕著である.無滅菌肥土においてはどの水分条件でも増殖できないようであった. 4.立枯病菌は,pH7のMcIlvaine緩衝液中では350日以上生存し,最も生存期間が長い.他のpHと本細菌の生存期間との関係は,pH4-1日,pH5と6-100日,pH8-110日であった.水分含量が容水量の60%で,pH5〜8の各滅菌肥土中では増殖が認められたが,無滅菌肥土ではそれが認められなかった. 5.立枯病菌は,滅菌水または滅菌肥土中では増殖し長期間生存するが,無滅菌の水および肥土中では増殖が困難で生存期間も短かい.有機物含量が高く,かつ一般微生物の密度も高い畑の表層土壌や人為的に堆肥を加えて作成した無滅菌肥土中では,本細菌の死滅が著しく,発病も堆肥含量の少ない土壌にくらべてかなり少なかった.
抄録全体を表示