浅水の湛水条件で実験室内の暗所においた土壌にペンタクロロフェノール(PCP)を加え,その消失をみた.殺菌によって消失が止まること,微生物相が貧弱と思われる土壌で消失がおそいこと,熟田土の接種で消失がはやまること,連続添加で消失速度があがってくることなどの証拠から,その消失に微生物が関与している可能性が指摘された.そしてこの条件で集積したPCPの消失に関与したと思われる微生物は酸素の供給のたたれた条件ではPCPを消失させないことをみつけた.このことから畑状態でのPCPの消失について研究した.その際,風乾土にいきなりPCPを加えるよりも,あらかじめ湿らせて放置しておいたものに加える場合のほうがPCPの消失がはやいことがみつかった.さらに,空気を通気しつつ環流する装置で土壌にPCP分解菌を集積させることを試みた.そして3回の40ppm PCP液の環流でPCP分解能が高まり,PCPの5原子の塩素がイオンとして放出されるまで分解されるようになった土壌をえた.さらにこの土を液体培養に接種してもう一段のenrichment cultureをおこない,PCP 40ppmふくむ寒天平板に生えた菌からPCPの分解能力のある菌を分離した.この菌は形態的,生理的性質からPseudomonasに属すると判断された.この菌は40ppmのPCPと無機栄養塩をふくむ培地でPCPを分解して,5原子の塩素をイオンとして放出する,嫌気条件では分解しない.酵母エキスは分解を促すがグルコースの存在は分解を阻害する.テトラクロロフェノールでは2,3,4,6-異性体のみが分解される.分解の途中ではテトラクロロフェノールの蓄積はみられない.
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