水田土壌中の好気性セルロース分解菌の動態を検討する目的で,選択的計数法ならびに土壌サンプリング方法の確立を行なった。CMC寒天平板法は,MPN法,セルロースパウダー寒天平板法と較べて数十倍から数百倍もの多くの細胞数を与え,優れた計数法であった。これらの計数法による菌数の大きな差が生ずる原因について検討した。圃場における多点試料間のセルロース分解菌数のバラツキは,どの場合も変動係数として25%以下であった。抽出誤差を30%以下としてサンプリングに必要な土壌試料数は5点(試料容積各500ml)と定めた。CMC寒天平板法及び上記の土壌サンプリング方法の有効性は,圃場調査において実地に用いられることにより確かめられた。すなわち,施肥管理の違いによる好気性セルロース分解菌の菌数と菌群構成の違い,また菌数の有意な時期的変動などが明瞭に把握された。水田土壌のセルロース分解菌の既往の諸研究を紹介し,土壌中のセルロース分解菌をあらかじめ集積培養することなく菌の分離及び計数を行なえる点において,CMC寒天平板法によって,既往の諸研究に較べ土壌中の実態をより的確にとらえうることについて論じた。
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