土と微生物
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25 巻
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 小林 紀彦, Wen-hsiung Ko
    原稿種別: 本文
    1983 年 25 巻 p. 1-8
    発行日: 1983/12/15
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    1)ハワイ諸島のカワイ,モロカイ,マウイおよびハワイ島から109点の土壌を集め,R. solaniに対する病原菌抑止,発病抑止土壌を選抜したところ,病原菌抑止土壌15点,発病抑止土壌6点が得られた。また発病抑止土壌の特定の島での局在は認められなかった。2)発病抑止土壌はpHが低く(pH3.8〜4.7),土壌を中性に矯正するとその抑止性は完全に消失するが,再度pHを酸性に調整してもその抑止性は回復しなかった。同様な現象は土壌抽出液中でも認められた。3)発病抑止土壌の抽出液中には水溶性Al濃度が発病助長土壌のそれよりも高く,本菌の菌糸生長ならびにNeurospora菌の子のう胞子発芽の抑制が認められることから水溶性Alが発病抑止に関与する一つの要因と思われた。4)発病抑止土壌の微生物密度は糸状菌,放線菌,細菌ともに発病助長土壌に比べ低く,各微生物阻害剤を添加した発病抑止土壌の抑止性は部分的に消失したが完全ではなかった。5)発病助長土壌に発病抑止土壌を混合して抑止性の移行を調べたが,抑止性の移行はなく,発病抑止土壌の混合比の大きい程抑止性が高いという希釈効果のみ認められた。6)高圧殺菌後においても発病抑止性を保持する発病抑止土壌があり,高圧蒸気殺菌した発病助長土壌に発病抑止土壌の微生物を添加しても発病抑止土壌とはならなかった。7)発病を抑制する拮抗微生物として放線菌が得られた。これらのことからR. solaniによるカラシナ立枯病に対するハワイの発病抑止土壌の発病抑止性には土壌pH,拮抗微生物,水溶性Alなどの要因が関与しているものと考えられた。
  • 内記 隆
    原稿種別: 本文
    1983 年 25 巻 p. 9-16
    発行日: 1983/12/15
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    岐阜県高山市を中心おする冷涼地帯のハウス栽培ホウレンソウの根部病害の発生とそれに関与する病原菌の生態について調査研究を行った。ホウレンソウの根部病害の発生は栽培初期の5月と末期の10月に少なく,6〜9月に多い。子葉期の立枯病はP. aphanidermatum, P. paroecandrumによるものが多く,とくに夏期に被害が大きい。その他2〜4葉期の立枯病はR. solaniによることが多い。R. solaniは5葉期以降の株腐病の原因ともなる。R. solaniを菌糸融合により類別すると第4群が最も多く,その他水田跡地のハウス土壌から第2群,第2型が多く分離された。生育中期以降F. oxysporum f. sp. spinaciaeによる萎ちょう病が発生する。萎ちょう病は高温で発生し易く,とくに夏期に被害が著しい。F. oxysporum f. sp. spinaciaeによる萎ちょう病は黄褐色の軽埴土壌,連作年数の多い土壌,水田跡地より畑地土壌,標高の低い地帯で発生が多い。R. solaniによる立枯病と株腐病,Pythium属菌による立枯病は一部黒ボク土壌を含む灰〜黒色の埴壌土,水田跡地のハウスで発生し易い傾向にあった。
  • 加藤 邦彦, 石上 忠, 稲山 光男
    原稿種別: 本文
    1983 年 25 巻 p. 17-22
    発行日: 1983/12/15
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    キュウリ栽培圃場における化学肥料施用区および稲わら区より,土壌,根圏土壌および根を採取し,細菌を約200株分離した。分離細菌の形態的および生理的性質および菌体脂肪酸組成を調べ,10グループに分けた。P. fluorescensは両区とも根より多数分離された。P. maltophiliaは土壌,根圏土壌および根より分離された。稲わら施用区ではAlcaligenes sp. 1, MaraxellaおよびCytophagaが多く分離された。グラム陽性細菌および胞子形成菌は土壌では多く分離されたが根では少なかった。
  • 宮下 清貴, 加藤 哲郎, 都留 信也
    原稿種別: 本文
    1983 年 25 巻 p. 23-31
    発行日: 1983/12/15
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    都市ごみコンポストの施用により土壌中の放線菌の構成がどのように変化するか,またコンポスト中の放線菌は土壌に添加された後どうなっていくかを調査した。都市ごみコンポストから30℃で分離された放線菌は特徴的なコロニーの形態を示したが,それらは化学分類の結果Nocardiopsis dassonvilleiと同定された。この菌はコンポストが土壌に添加された直後には土壌から分離されたが,その後は減少していくものと考えられた。土壌より分離された放線菌は約9割がStreptomyces属で,しかも胞子鎖の色が赤〜灰色,胞子鎖の形態が直鎖状のものが大部分であった。Streptomyces以外にはNocardia, Actinomadura等が分離された。Streptomycesの分離株中メラニン生成を示す菌株の割合は,コンポストの施用前には75%であったが,施用直後には30%にまで減少した。Streptomycesの分離株について種の同定を行った結果,本土壌中で優占していると認められたのは,Streptomyces phaeochromogenesであった。この菌が土壌中で優勢となる理由の一つは,その利用できる基質のスペクトラムの広さにあるものと考えられた。コンポストからのN. dassonvilleiの分離株は土壌からの放線菌の分離株と比べて,生育の至適pHが8.0前後と高く,アルカリ側ではかなりの高pHまで生育したのに対して酸性には極めて弱いという性質を示した。このことが,土壌に比べてpHの高いコンポスト中でのこれらの菌の優占を可能にし,また土壌に添加後は減少させていった一つの要因であると考えられた。
  • 太田 寛行
    原稿種別: 本文
    1983 年 25 巻 p. 33-43
    発行日: 1983/12/15
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    土壌および河川から単離した低栄養細菌,65菌株の形態的特徴,生理・生化学的性質を検討した。また,水田土壌中の粗大有機物や水稲根部分での低栄養細菌の分布を調査した。すべての単離菌株は肉エキス(NB)培地では増殖せず,100倍に希釈したNB培地で増殖した。このような微生物は「DNB organisms(DNB微生物)」と呼ぼれた。単離菌株は細胞形態をもとに4種のグループに分けられた:(1)規則正しい桿菌(Group I, 23菌株),(2)フィラメントを作る桿菌(Group II, 13菌株),(3)不規則な桿菌(Group III, 27菌株),(4)appendageを作る微生物(Group IV, 2菌株)。すべての単離菌株は好気性で非胞子形成菌であり,ほとんどの菌株はグラム陰性であった。22菌株は極ベン毛を有し運動性を示した。21菌株はフェルラ酸やp-クマール酸などのフェノール酸を利用した。10菌株は,89% Ar, 10% C_2H_2, 1% O_2の混合ガス条件下でアセチレン還元活性(ニトロゲナーゼ活性)を示した。これらのニトロゲナーゼ活性を示した菌株は化学分類の方法でさらに特徴づけ,その分類学的位置を検討した:5菌株(Group Iに属する)はPseudomonasに対応し,残りの5菌株(Group IIIに属する)に対しては,新属,新種Agromonas oligotrophicaと命名することを提案した。廐肥を施用した水田土壌でも施用していない土壌でも,水稲栽培期間中,DNB微生物は粗大有機物や水稲根を優占していた。しかし,DNB細菌の占める割合は廐肥施用直後の一時期だけは減少した。水稲根から単離したDNB細菌の多くはニトロゲナーゼ活性を示し,その形態的特徴や生化学的性質はA. oligotrophicaの性質と一致した。
  • 木村 真人, 和田 秀徳, 高井 康雄
    原稿種別: 本文
    1983 年 25 巻 p. 45-55
    発行日: 1983/12/15
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    植物根圏に関する研究は主に畑作物に関してなされ,水稲を対象とした研究はこれまで極めて少なく,しかもこの少数の研究においても水稲根圏の特性が十分に考慮されてこなかった。そこでまず,多くの知見が集積している畑作物の根圏に比べて水稲根圏がどのような特徴を具えているかを追求した。その結果,平板法で求めた微生物数のR/S比は,畑作物では著しく高いことが知られているにもかかわらず,湛水土壌中に生育する水稲では低いことが見出された。これは,測定した微生物が好気性ないしは通性嫌気性であって,還元状態が発達した場ではその数が減少すること,湛水土壌に生育する水稲の根圏は最高分けつ期以前の一時期酸化的であるが,その後は著しく還元的になることに主要な原因があることが明らかとなった。この考えは,嫌気性菌については湛水土壌に生育する水稲では高いR/S比を示すこと,水稲根圏は微生物の基質に富んでいることなどの実験によっても支持された。ついで,水稲根圏が還元的になる原因とそれに伴なって生じる根圏での物質代謝の変動状況を追求した。この実験によって,水稲根圏が最高分けつ期頃を境として酸化状態から還元状態に転じるのは,水稲自身の生理的特性に主として依存していることが確かめられた。また,水稲根圏が酸化状態から還元状態に転じるに伴って,根圏での代謝産物がCO_2, N_2O→N_2→H_2, Fe^<2+>→CH_4, (H_2S)と変化すること,この時期,根面に酸化鉄の沈着が急増するとともに根内に侵入していたPolymyxa graminis様の生物が根から消失することが見出された。
  • 伊藤 治, 渡辺 厳, Gerald A. PETERS
    原稿種別: 本文
    1983 年 25 巻 p. 57-63
    発行日: 1983/12/15
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    窒素固定生物であるらん藻との共生体であるアカウキクサにおいて,培地中に化合態窒素が存在した場合,窒素固定能ならびに窒素収支がどのような影響を受けるか,また培地窒素は宿主とらん藻との間を行ききするものであるかどうかについて調査を行なった。1.培地窒素の吸収返度の濃度依存性はアンモニアで最も高く,尿素,硝酸の順に低くなった。吸収速度の大きさも同様な順序であった。2.アセチレン還元能が無窒素区の半分となる濃度は,アンモニアと尿素で約10mM,硝酸で25mMであった。3.全体の窒素収支の中で培地窒素の占める割合はアンモニア,尿素,硝酸の順であった。5mMで比較すると,各々約50,40,20%であった。4.アンモニア,尿素添加により全窒素の有意な増加が認められた。特に前者の効果は顕著であった。硝酸では無窒素区とほとんど変わらなかった。5.^<15>Nで標識した無機態窒素を含む培地に一定時間置かれたアカウキクサかららん藻を分離したところ^<15>Nの富化が認められた。このことは窒素の動きが,らん藻から宿主へという一方性のものではなく,宿主かららん藻へというものも含む両方向性のものであることまたは,らん薬において窒素の流出入に関してsourceとなるものとsinkとなるものとに分かれていることを示している。
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