土と微生物
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27 巻
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 沢田 泰男
    原稿種別: 本文
    1985 年 27 巻 p. 1-
    発行日: 1985/11/30
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
  • 羽柴 輝良
    原稿種別: 本文
    1985 年 27 巻 p. 3-15
    発行日: 1985/11/30
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    作物病害の生物的防除の革新的技術開発の手段として組換えDNA技術の活用が期待されている。しかし,今日まで原核生物を除いて真核生物のプラスミドについての報告は3例だけである。本研究ではRhizoctonia solaniの生育異常株(3株)を用いてプラスミド,pRS64を抽出することに成功した。本菌のプラスミドは線状で,分子量1.68±0.06×10^6ダルトンであった。DNAプラスミドを持つR. solaniは生育速度がきわめて遅く,立枯病に対する病原性も正常株と比べ著しく低い。一方,プラスミド様DNAを持っていない正常株は病原性が高く,生育速度も正常であった。プラスミド,pRS64は病原性制御の機構になんらかの形で関与している可能性が示唆され,病原性の制御に関する技術開発に一つの手がかりをあたえるものと思われる。R. solaniのプラスミドのほか,現在までに報告された糸状菌のプラスミドとその性質についても概括した。
  • 太田 光輝
    原稿種別: 本文
    1985 年 27 巻 p. 17-27
    発行日: 1985/11/30
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    農業におけるバイオテクノロジーの利用分野として,イネ科作物の窒素固定研究が注目されている。国立遺伝学研究所ではアセチレン還元法を用いて窒素固定をするイネを発見した。イネ属の色々な種や系統間には窒素固定能に変異がみられ,イネ側にも窒素固定菌との共生にかかわる遺伝子群があることがわかった。そしてこれらの遺伝子を組み合せることによって高い窒素固定能を持つイネが作れる可能性を示した。イネ根圏からは種々の窒素固定細菌が分離され,感染実験によってKlebsiella oxytoca (NG13)と、Azospirillum lipoferum (COC8)がイネ根圏で高い活性を活性を示した。また,NG13菌にK. pneumoniaeのnif遺伝子を持つプラスミドpRD1を導入することによって,元の株より3倍の活性を持つ改良菌NG1325が作られている。COC8菌など5種の窒素固定菌からプラスミドが見つかっている。静岡農試ではイネの窒素固定の実用化研究が行われている。将来は,植物細胞自体に直接窒素固定遺伝子を導入するという植物遺伝子工学への発展が期待される。
  • 本間 善久
    原稿種別: 本文
    1985 年 27 巻 p. 29-37
    発行日: 1985/11/30
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    近年,土壌アメーバが土壌病菌を捕食して死滅させる現象が見つかり,土壌原生動物による病原菌の拮抗現象として興味が持たれる一方,土壌病害の生物的防除に向けて注目されている。その種類,食菌行動,生態などについての研究の現状を紹介し,生物的防除への可能性を探った。1)土壌病菌を捕食するアメーバは10数種知られており,主に栄養体の仮足の形態によって葉状仮足綱,糸状仮足綱,無子実体綱,顆粒性網状仮足綱に分けられ,広範囲の分類群に属している。2)食菌性アメーバが病原菌を捕食する過程は,菌体に到達→菌体を包囲→原形質吸収の順に進行し,いずれも病原菌の細胞壁に0.1〜5.0μmの丸い穴(食痕)を生じる特徴がある。食菌行動,食菌時間はアメーバの種類によって異なる。3)食菌性アメーバはcosmopolitanであり,世界的に広く分布する。我が国においても,北海道から沖縄まで,作物の種類,栽培形態,土性などに関係なく広範囲の土壌に棲息する。土壌中のアメーバ数は表層部に多く,土壌1g当たり3〜70個体である。4)土壌中における食菌性アメーバの活性は,マトリックポテンシャルの-10〜-250mbの比較的狭い範囲に限られる。塩濃度も重要な要因であり,EC1,500μmho/cm以上,浸透ポテンシャル-800mb以下では活性が見られない。土壌pH4.8〜8.3の範囲で活性が見られ,中性土壌で活性が高く,酸性土壌で低くなる。5)コムギ立枯病やアボガドの疫病などの発病抑止土壌で食菌性アメーバの活性が高い。発病抑止土壌のコムギ根圏でアメーバ数が多く,立枯病の感染阻止に重要な役割をもっと考えられている。6)食菌性アメーバが,土壌病菌の根への定着や侵入前の外生的生育を阻止し,発病を顕著に抑制し,植物の生育を良好にする実験例も見られる。
  • 金沢 晋二郎, Zdenek FILIP
    原稿種別: 本文
    1985 年 27 巻 p. 39-49
    発行日: 1985/11/30
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    土壌中の微生物数量およびその活性におよぼす各種塩素化有機溶媒の影響を明らかにするために,生産量および使用量ともに最も多いトリクロロエチレン,テトラクロロエチレンおよびジクロロメタンを選んだ。それらの溶媒を乾土100g当り10, 100, 1000μg添加し,微生物バイオマスとしてATP含量,微生物フロラとして好気性および嫌気細菌,好気性胞子形成細菌,放線菌および糸状菌数,酵素活性としてプロティナーゼ,フォスファターゼ,β-グルコシダーゼおよびβ-アセチルグルコサミニダーゼ活性等に与える影響を経時的に調べた。得られた結果を要約すれば,次のとおりである。1)土壌中の微生物バイオマス(ATP含量)は,100μg/100g乾土(1.0ppm)の各溶媒の添加では1〜2週の間わずかに減少する程度であったが,1000μgの添加ではいずれの溶媒とも2か月間のインキュベーション期間中対照区に比べて著しく少なくなった。2)好気性細菌数は,1000μgのテトラクロロエチレンの添加で刺激を受け菌数を著しく増大させたが,同量の他の溶媒では著しい生育阻害が認められた。一方,好気性胞子形成細菌は,各溶媒ともほとんど影響を受けなかった。放線菌は,1000μgの各溶媒で著しく菌数を減少させた。糸状菌は他の微生物に比べて最も感受性が高く,10μgの添加でもその菌数を減少させた。その変動はATP含量のそれと類似していた。3)各酵素活性は,10μgの各溶媒の添加では,影響を受けなかった。100μgの各溶媒の添加ではβ-グルコシダーゼ,β-アセチルグルコサミニダーゼおよびプロティナーゼ活性等は,28日目頃まで多少とも影響を受けるが,2か月後には回復し対照区と同程度の活性を示した。しかしながら,1000μgの各溶媒の添加では,各酵素活性とも大きく影響を受け,その活性を低下させた。
  • 樋浦 康一郎, 前田 時久, 福田 修一, 鈴木 達彦
    原稿種別: 本文
    1985 年 27 巻 p. 51-57
    発行日: 1985/11/30
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    圧力が細菌におよぼす影響についてこれまでの研究を概観するとともに,最大1000気圧までの耐圧能力を持つ高圧培養装置の試作を行い予備的培養結果について紹介した。非高圧耐性の陸上細菌を使用して得られた既往結果によると,圧力による細菌の生育阻害はタンパク合成の場であるリボゾームが圧力により機能障害が起るためであることが分子レベルでの研究で明らかにされている。しかし,高圧環境下とくに深海底では1000気圧下でも生育する細菌が存在している。これらの細菌の簡便な単離技法の開発と合わせてobligate barophileの耐圧機構については今後に残された重要課題と考える。試作した高圧培養装置を使った実験によると,試料中の高圧耐性菌数をMPN値で評価する点において,および既知の細菌の高圧耐性能を評価する点において,試作した高圧培養装置は利点を有することが判明した。
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