カテコールに対する土壌細菌の応答について群集構造面で検討することにより,化学物質に対する細菌群集の応答性に基づく土壌の特徴づけを試みた。土壌をカテコール(濃度:0.5, 2.0, 5.0, 10.0mg/g soil)で処理後,希釈平板法により細菌数を計数した。平板上から分離した細菌菌株群を,61種類の炭素源利用パターン(BIOLOG)に基づきクラスター分析(UPGMA)し,クラスターの結合距離を用いて多様性指数を算出した。細菌数と分離菌株群の多様性は,高濃度のカテコール処理により減少する傾向がみられ,5.0mg/gグルコース処理により増加した。また,5.0mg/gカテコール処理は同濃度のグルコース処理よりも細菌数と多様性を低くすることから,グルコースと比較してカテコールは土壌細菌群集に対して選択性の高い基質であることが示唆された(グルコース処理による多様i生指数の変化に対するカテコール処理のそれの割合は,土壌Fo, Mu, Spでそれぞれ,32, 69, 37%であった)。31種類の炭素源利用パターンに基づく分離菌株群の主成分分析を行ったところ,両基質処理によって主成分空間における分離菌株群の構成が大きく変化する土壌とそうでない土壌を特徴づけることができた(グルコース処理による第1主成分得点の平均値の変化は,土壌Fo, Mu, Spでそれぞれ,1.42, 0.66, 0.40であった)。土壌微生物に対する化学物質の影響評価試験で用いる土壌の選定基準として,土壌の理化学性とともに,このような生息微生物群集の可変性を考慮することが望ましいと考えられる。
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