土壌原生生物のバイオマスは,MPN法を用いた場合,1gの乾燥土壌の中には約17万のシストになった原生生物が存在すると推定された。しかし,従来MPN法は過小評価であるという批判があり,このような状況に対応するひとつの手段として,MPN-SIPs法が提案された。海洋において提唱された微生物ループ(microbial loop)の概念を根圏に適用し,バクテリアと原生生物の関与する物質循環における根圏の微生物ループとして提唱された。原生生物の存在または排泄物が,バクテリアの生理活性を高める「原生生物の間接的役割」が多数報告された。原生生物の間接的役割が,植物に還元される例として,植物ホルモンループといえるモデルが提唱された。このことで,原生生物が根圏に生息することによって,バクテリアが生産する植物ホルモン用物質が植物に供給され,多くの側根をのばすことになり,その結果,植物バイオマスを増加させることになるという,「原生生物の存在が植物に与える効果」のひとつの側面を,わかりやすく説明することが出来るようになった。原生生物が植物根圏の発育に影響を与えることで,地上部にも影響を与えることが報告された。
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