養分の乏しい荒廃土壌のマサ土や火砕流堆積物において,ススキの生育に及ぼすイシクラゲ施用の影響を調査するため,室内にてポット試験を行った。両土壌ともに,3または4か月の栽培期間を通して,ススキ1本あたりの草丈は,滅菌イシクラゲ施用区,イシクラゲ施用区,硝安施肥区,無施用区の順に高く推移した。試験開始3または4か月目のススキの全乾物重は,イシクラゲ施用区と硝安施肥区でほとんど同じ値を示し,滅菌イシクラゲ施用区は最も高い値を示した。これらの栽培期間中におけるススキの成長量の増加は,窒素の動態の結果より,滅菌イシクラゲ施用区は,イシクラゲ中に含まれる有機態窒素が灌水により下層の土壌中に流下したり,無機化されたりしたことにより,イシクラゲ施用区は,イシクラゲを構成するNostoc sp.によって固定された窒素が土壌中に分泌されたり,イシクラゲ自体が無機化されたりしたことによると考えられた。これらのことから,イシクラゲは,窒素などの養分の欠乏した荒廃土壌での植生の早期回復において,効果的な窒素の供給源になりうることや,生きた状態のイシクラゲは,荒廃土壌の生態系全体の窒素の増加に有効であるといえる。
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