東日本大震災および熊本地震など過去の大規模災害において、情報通信の役割の重要性が評価されたことか
ら、首都直下地震や南海トラフ地震等の大規模災害対策において、情報通信を利用した官民連携による様々な
取組みが行われている。東日本大震災後のSNS利用者の爆発的な伸びに伴い、多種多様なデータがビッグデー
タとして蓄積されている現在、我が国では個人情報保護法改正によりビッグデータの利活用を促進する背景が
整った。
本研究は、大規模災害の防災・減災における「自助」の意識が高まりつつある背景において、災害時にビッ
グデータを活用した民間事業者によるサービス提供の可能性と費用負担検討のための資料となることを目指し、
ネットワーク利用者がサービスを享受する対価として個人情報を提供するインセンティブを計ることを目的と
する。具体的には、「位置情報」「家族情報」「身体情報」「医療情報」「金融情報」のシナリオに関する社
会調査によりデータを収集し、CVMを手法とした分析を行い、大規模災害時のサービスに対する利用者の支払
意思額を推定し、金額として2,203円から3,619円が得られた。さらに、どのような利用者の属性や背景が評価
に影響を与えているかを実証的に明らかにした。その結果、「同居の子供あり」、「緊急地震速報の際即避難
する」、「ネット上のトラブル経験あり」、「個人情報利用に対する意識」、「1ヵ月に自由に使える金額」が
影響を与えていることが分かったが、予想していた過去の大震災の被災経験や災害に対する備えは、明らかな
影響は得られなかった。
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