日本セキュリティ・マネジメント学会誌
Online ISSN : 2434-5504
Print ISSN : 1343-6619
36 巻, 2 号
日本セキュリティ・マネジメント学会誌
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
巻頭言
研究ノート
  • 小泉 雄介
    2022 年 36 巻 2 号 p. 5-18
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/28
    研究報告書・技術報告書 フリー
    感情認識技術は比較的新しい技術として、様々なサービスへの応用が期待されており、日本でも人事採用やドライバーモニタリング、マーケティング、パブリックセキュリティ等の分野で実用化されつつある。しかし欧米では、人権に与える影響や、科学的根拠の欠如などの点から感情認識技術に対する批判・懸念が多く見られ、原則禁止を含む規制が提案されるなど、その社会的評価は十分に定まっていない状況にある。本稿では、感情認識技術を用いたサービスの海外事例(米国、EU、香港)と規制動向(米国、EU、日本、国際機関)を調査し、感情認識技術に対する主な懸念・批判を(1)個人に対する透明性の欠如、(2)科学的根拠の薄弱さ、(3)内心の自由・表現の自由などの基本的権利の侵害、(4)感情認識技術におけるバイアス、の4つに分類した。特に(2)と(3)の懸念・批判が、個人の感情や意図などの心的状態を外部から推測できるとする感情認識にとって本質的なものである。そして本稿では、各々の懸念・批判に対して、感情認識技術を開発・提供する企業や利用する企業がサービス設計や利用に当たってどのような保護措置を取ればよいのか、対応の方向性を検討した。このような感情認識技術の倫理的側面について、我が国ではほとんど議論されていない状況であるが、社会に受容される感情認識技術の利用方法を模索するためにも、パブリックな議論を一歩一歩積み重ねていくことが重要である。
解説
  • 菅 和聖
    2022 年 36 巻 2 号 p. 19-26
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/28
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本解説では,プライバシー保護の枠組みの全体像,その中での差分プライバシーの果たす役割,望ましいプライバシー保護を巡る諸課題について考察する.現代社会では情報技術の普及により,かつてない細かい粒度の個人情報 が収集・蓄積され,その利用も拡大している.これに伴い,プライバシー侵害の脅威も増大しており,プライバシー保護の重要性が高まっている.一般に,個人データの有用性とプライバシー保護にはトレードオフがあるため,両者の適度なバランスを実現することが望まれる.差分プライバシーは,プライバシー保護技術を定量的に評価する基準であり,適度なプライバシー保護の実現に有用な概念である.もっとも,プライバシー保護は複雑な社会的課題であり,差分プライバシーのような数理的基準のみでは対処できない.プライバシーを保護するには,数理技術や情報セキュリティに加えて,法制度,情報システムやビジネスの仕組みなどを総動員すべきである.なお,本稿の詳細については,[1]を参照されたい。
  • 寺田 雅之
    2022 年 36 巻 2 号 p. 27-33
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/28
    研究報告書・技術報告書 フリー
    差分プライバシーは,様々なプライバシー保護手段に対し,その安全性を統一的に与える枠組みである.差分プライバシーは未知の攻撃を含めた任意の攻撃に対して安全性を保証可能であるなどの優れた特徴を備える一方で,その定義は「とっつきにくい」ものであり,それが差分プライバシーの応用や普及を阻害する一因になっているとも思われる.本稿では,差分プライバシーの概要と特徴を簡単に紹介するとともに,その定義や安全性パラメータ(ϵ)の解釈について,統計的仮説検定に基づく操作的解釈を中心に説明する.この解釈を用いると,ϵの値は仮説検定における有意水準と検出力との関係を束縛するパラメータとして定量的に理解することができる.
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