外科と代謝・栄養
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50 巻, 6 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
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特  集
  • 東別府 直紀
    原稿種別: 特  集
    専門分野: 「重症病態における栄養管理」
    2016 年 50 巻 6 号 p. 317-320
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/12
    ジャーナル フリー
     本邦ICU 症例は本邦以外の全世界のICU 症例に比して高齢であり,やせ形であること,そしてエネルギー充足率が低いことは以前より報告されてきた.BMI が低い症例は栄養療法の影響を受けやすいとの報告があることを考え合わせると,本邦の症例群の多くは欧米のそれよりも栄養療法の影響が高い可能性があり,より早期の経腸栄養によるエネルギー負債の低減が予後改善に効果がある可能性がある.また,国際栄養調査に登録された症例を解析したところ本邦ではエネルギー充足率が高いことは低い死亡率に関連していたが本邦以外の全世界では関連しなかった.現状では海外のデータをもとにガイドラインを作成せざるを得ないがやはり本邦の症例群との違いを考慮し,個々の症例の栄養リスクを考え合わせて栄養療法を行うべきである.
  • 佐藤 武揚, 久志本 成樹
    原稿種別: 特  集
    専門分野: 「重症病態における栄養管理」
    2016 年 50 巻 6 号 p. 321-326
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/12
    ジャーナル フリー
     集中治療患者への早期からの栄養治療において至適栄養量の推定は困難であり,時としてRefeeding syndrome(以下RFS)をきたす.RFS は明確な診断基準がなく,強いるい痩を示さずともアルコール依存や薬物使用歴の併存により発症リスクは高くなる.その病態はおもに低リン血症と高血糖,それに続く容量負荷と考えられ,全細胞機能低下により複数の重要臓器障害をきたす.RFS の検査所見はリンの測定だけでなく総合的な栄養評価を入室後少なくとも5 日間継続する必要があり,RFS が除外されるまではPermissive underfeeding 管理とすることが望ましい.
     重症病態の初期栄養はoverfeeding による弊害に注意が必要だが,その機序はRFS と共通の経路と症状をきたし,互いに重なる部分が大きい.集中治療患者はRFS のリスクが高いと考えスクリーニング検査と早期の制限した栄養により有害事象を抑え,これらの病態を適切に認識し対処することが肝要である.
  • 垣花 泰之, 岩倉 雅佳, 谷口 賢二郎
    原稿種別: 特  集
    専門分野: 「重症病態における栄養管理」
    2016 年 50 巻 6 号 p. 327-333
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/12
    ジャーナル フリー
     急性肝不全・劇症肝炎では,安静時エネルギー消費量の増加,グルコースおよび遊離脂肪酸利用率の低下,BCAA/AAA 比の低下が特徴であり,一方,慢性肝不全・肝硬変では,貯蔵グリコーゲン減少に伴う飢餓状態,アミノ酸代謝異常による肝性脳症が特徴的である.栄養状態の悪化を防ぐため,肝性脳症の急性期以外に蛋白質制限を行わないことや,肝硬変例には1.2 g/kg/日を目安に十分量の蛋白質を投与することが推奨されている.さらに,肝不全用アミノ酸製剤は肝性脳症に限定され,経口分岐鎖アミノ酸製剤の積極的な投与が,生存率やQOL 向上につながることが報告されている.グリコーゲン貯蔵量が少ない慢性肝不全・肝硬変例に対して,早期飢餓状態の軽減や栄養状態改善に対する夜間就寝前捕食の有効性,ビタミンB1, 亜鉛,脂溶性ビタミンなどの欠乏症に対するアセスメントなどの推奨項目が提示されている.本稿では,エビデンスに基づいた肝不全の栄養管理法を示すとともに,肝性脳症に対する急性血液浄化療法の最新の知見に関しても解説した.
  • 巽 博臣, 升田 好樹
    原稿種別: 特  集
    専門分野: 「重症病態における栄養管理」
    2016 年 50 巻 6 号 p. 335-339
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/12
    ジャーナル フリー
  • 白井 邦博
    原稿種別: 特  集
    専門分野: 「重症病態における栄養管理」
    2016 年 50 巻 6 号 p. 341-347
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/12
    ジャーナル フリー
     外傷患者に対する栄養療法は,他の重症患者と同様に,24~48 時間以内の早期経腸栄養が推奨されている.また,間接熱量測定や推算式(25~30 kcal/kg/日)による目標エネルギー量の投与や,蛋白量1.2 g/kg 以上の投与を推奨されているが,初期1 週間はoverfeeding にならないように注意が必要である.さらに,早期経腸栄養はopen abdominal management 中でも,筋膜閉鎖までの期間短縮,合併症発症率や死亡率を減少させる可能性が示されている.このような経腸栄養を主体とした栄養療法は,栄養管理プロトコールの導入によって,効率よく実行されると考えられる.
  • 真弓 俊彦, 新里 到, 眞田 彩華, 鍋島 貴行, 宮里 和明, 石川 成人, 大石 基, 遠藤 武尊, 中園 和利, 弓指 恵一, 山中 ...
    原稿種別: 特  集
    専門分野: 「重症病態における栄養管理」
    2016 年 50 巻 6 号 p. 349-356
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/12
    ジャーナル フリー
     重症急性膵炎では,多数のRCT やそれらのメタ解析で,発症72 時間以内の早期の経腸栄養が死亡率や合併症を有意に減少させることが示されている.
     しかし,実臨床では経腸栄養が早期に開始されていることは少なく,特に診断後48 時間以内に開始される例は非常に少ない.膵酵素の高値,腹痛,蠕動音消失,多量の胃液排出は,経口摂取の中止基準にはなっても,経腸栄養の中止基準にはならず,これらが認められていても経腸栄養を開始できる.重症急性膵炎でも早期から経腸栄養を開始することが肝要である.
     従来,経空腸的な経腸栄養が施行されてきたが,メタ解析により,経空腸栄養ではなく,経胃栄養も可能かもしれないことが示唆されている.また,免疫調整栄養,プロバイオティクス,シンバイオティクスの有用性はまだ定かではない.
  • 神應 知道
    原稿種別: 特  集
    専門分野: 「重症病態における栄養管理」
    2016 年 50 巻 6 号 p. 357-368
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/12
    ジャーナル フリー
     呼吸不全に特化した栄養療法は近年の国際的ガイドラインでもエビデンスの高いものは存在しない.このことから呼吸不全患者に対して栄養療法を行う際には,呼吸不全に特化した注意点に留意しながら重症患者に対する栄養療法を行っていくことが求められている.入院患者に対して,まず栄養評価を行い,目標投与エネルギー量,目標投与蛋白量を決定し,経腸栄養の禁忌がなければ24~48 時間以内の早期経腸栄養を行う.経腸栄養の種類は標準的なものが推奨されている.また,低栄養を認める症例では入院早期から静脈栄養を考慮する.さらに呼吸不全患者に対しては血清リンのモニタリング,不足時の補充が重要である.
臨床研究
  • 後藤 崇, 赤池 梨紗, 古賀 倫太郎, 松葉 美和, 黒木 直美, 田中 智章, 菅瀬 隆信, 谷口 正次, 指宿 一彦, 古賀 和美
    原稿種別: 臨床研究
    2016 年 50 巻 6 号 p. 369-375
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/12
    ジャーナル フリー
     当院にて過去3 年間に施行した幽門輪温存・亜全胃温存膵頭十二指腸切除術(PPPD・SSPPD)後の経腸栄養において投与栄養剤を半消化態栄養剤(PF)から消化態栄養剤(OF)へ変更したことの有効性について後方視的に検討した.その結果栄養学的パラメーターにおいては両群間に差は認められなかったが,OF 群ではPF 群に比べ有意に下痢発症を抑制し{OF vs PF/18.8% vs75%:P=0.025},有意な投与期間の短縮{OF vs PF/9 日(4-27 日)vs 20.5 日(3-84 日):P=0.02}がみられた.在院日数もOF 群において短縮傾向がみられた.合併症を抑制できたことで短期間の栄養剤投与からスムーズな経口摂取再開につながり,さらには在院日数の短縮傾向につながったと考えられた.これよりPPPD・SSPPD の術後経腸栄養にOF は有効であると考えられた.
用  語
巻  末
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