59Fe を用いてTPN 輸液中の遊離鉄の体内動態をコロイド鉄と比較検討した.ラットにカテーテルを留置し,微量元素製剤を混合したTPN 輸液を24 時間放置後投与した遊離鉄群と,混合せずに微量元素製剤を側管から同時投与したコロイド鉄群を設け,TPN 開始2 日後に
59Fe 標識液を2 時間投与し,その後は非標識液の投与を続けた.コロイド鉄群では,
59Fe は血漿から肝臓,骨髄,赤血球へと移行し,168 時間後には52.8%が赤血球に,21.7%が肝臓に分布した.遊離鉄群では,
59Fe は血漿から骨髄に,続いて赤血球へと移った(24 時間:40.3%,168 時間:68.6%).コロイド鉄群にくらべ,遊離鉄群では赤血球への移行が速く,移行率も高かった.以上,TPN 輸液中の遊離鉄は,血中ですみやかにトランスフェリンと結合し,赤芽球に取り込まれてヘモグロビン産生に利用されると推察され,その有効性に問題はないと考えられた.
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