重症患者栄養療法のトレンドは, 代謝ストレスへの過剰反応および, 酸化的細胞傷害の減弱, 免疫応答を生体に適合した方向に調節することを目指し, 重症患者管理法の一翼を担っている. その中で静脈栄養は, 最近の報告では, 急性期の経腸/静脈栄養間の比較での優劣は認められず, 処方設計どおりに, 栄養素を個別に厳密に投与でき, 消化器合併症が少ない利点がある. いずれの投与ルートでも急性期至適投与エネルギー設定法は確立していない. 静脈栄養適応例の急性期早期ではunder feedingそれ以下のtrophic feedingのエネルギー量で開始し漸増するが, 7‐10日は消費エネルギーの範囲内にとどめる. また急性期, 経腸栄養開始後の不足分をPNで補うこと (SPN) はしない. しかし急性期後の投与エネルギー/栄養素は, 個々の症例の個別性 (栄養リスク, 侵襲の持続など) および累積栄養負債を勘案し, 強制栄養の期間中では, 特に栄養療法のギアチェンジを考慮する. 安全性と効果に留意し継続して処方内容を検討する必要がある. 最新の各国の重症患者栄養ガイドライン間の静脈栄養に関する記載内容に差異はほぼないが, 根拠となるエビデンスの質は低い. 栄養素の免疫効果を期待したimmunonutrientの輸液製剤 (グルタミン, ω3系脂肪酸) は, 現在臨床におけるエビデンスでは, 有効性を示していない.
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