外科と代謝・栄養
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54 巻 , 3 号
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特集 「重症患者の長期予後を見据えた栄養療法と運動療法」
  • ―フレイル指数とフレイルアセスメントの重要性―
    櫻井 洋一
    2020 年 54 巻 3 号 p. 109-118
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/15
    ジャーナル フリー
     体構成成分の変化をともなう病態としてのTissue loss syndrome (以下TLS), さらにフレイル・サルコペニア・カヘキシア・malnutritionの相互の関連性,オーバーラップについて概説した. フレイル・サルコペニアは, 外科手術患者でも高率に認められ術後合併症のリスクやアウトカムと深く関連することが報告されている. TLSのうち原因や病態の相違からフレイル・サルコペニア・カヘキシア・malnutritionに分類されているがフレイルとサルコペニアがオーバーラップした症例も数多く認められ, いずれも骨格筋量の減少をともなっている. 老年医学ではフレイルは「あり/なし」の2面的評価であるのに対し, 外科領域では複数の障害によりストレスに対して脆弱となった状態として捉えたFrailty index (FI) が外科患者のアウトカム予測因子として用いられている. 高齢外科患者に対してはFIを用いてフレイルアセスメントを行い, 術前から必要に応じて骨格筋蛋白合成を促進する栄養投与とレジスタンス運動などの治療を行う必要がある.
  • ~術前サルコペニア有無における介入効果の比較~
    南村 智史, 谷口 英喜, 工藤 雄洋
    2020 年 54 巻 3 号 p. 119-124
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/15
    ジャーナル フリー
     【背景】本研究では, 待機的結腸直腸切除患者に術前プレハビリテーション (運動とロイシン含有強化飲料負荷) 介入を行い, 栄養指標項目, 体組成に与える介入効果を術前のサルコペニア有無において比較検討した. 【方法】対象は2018年8月から2019年5月に当院の患者支援センターを受診し, 術前8日以上の介入期間を確保できた待機的結腸直腸切除手術患者. 介入方法は, 1日最大6,000歩以上の歩行と握力トレーニング (強度5~60kgの可変式ハンドクリップ) 1日合計60回以上を目標に実施した後に, リハデイズ® (株式会社大塚製薬工場) を1日最大3本摂取とした. 介入前にサルコペニアを有した群 (サルコペニア群) とサルコペニアでない群 (非サルコペニア群) に分け, 介入前後で握力, SMI (Skeletal Mass Index) , 体重, トランスサイレチンの変化率を比較検討した. 【結果】サルコペニア群は非サルコペニア群に比べ, 1日の平均歩行数は少なかった. 2群間の介入前後の変化率の比較では, 握力, 体重, トランスサイレチンには明らかな差を認めなかったが, SMIはサルコペニア群のほうが有意に増加を認めた (p<0.05,U検定). 【結論】術前プレハビリテーション介入は体組成改善, サルコペニア防止に有効である可能性が示唆された.
  • 川田 三四郎, 平松 良浩, 白井 祐佳, 位田 文香, 本家 淳子, 渡邉 浩司, 松本 知拓, 菊池 寛利, 神谷 欣志, 竹内 裕也
    2020 年 54 巻 3 号 p. 125-129
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/15
    ジャーナル フリー
     当院では外科, リハビリテーション科, 栄養部などが連携した多職種周術期管理チームHamamatsu perioperative care team (以下HOPE) を2017年4月に発足させた. 嚥下評価を標準化し誤嚥を防ぐ食事形態や摂取法を提供している. 早期に空腸瘻からの経腸栄養を開始し必要に応じ退院後も継続している. 2014年1月~2018年6月までに当科で食道亜全摘術を施行した食道癌患者112例を対象とし, チーム発足前の65例をpre‐HOPE群, 発足後の47例をHOPE群にわけて比較検討した. 肺炎発生はpre‐HOPE群18例 (28%), HOPE群6例 (13%) と有意に減少した (p=0.046). 術後在院日数中央値はpre‐HOPE群 : HOPE群=23 : 31であった (p=0.021). 術前体重を100%とし体重変化を比較すると, 術後1か月90.1% : 93.8% (p<0.001), 6カ月84.2% : 90.5% (p<0.001), 1年85.6% : 91.9% (p<0.001)で, 全時期で有意に体重減少を抑制していた. 嚥下機能評価を標準化し経口摂取が慎重となったことなどから, 術後在院日数は延長したが, 長期的な肺炎の発症・体重減少はチーム医療の介入により減少した.
  • 中村 謙介
    2020 年 54 巻 3 号 p. 130-133
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/15
    ジャーナル フリー
  • 飯田 有輝, 陳 真規
    2020 年 54 巻 3 号 p. 134-138
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/15
    ジャーナル フリー
     ICUにおける重傷者の救命率は改善している一方, 退院後の生活復帰の低下が問題となっている. 特にICU‐acquired weakness (ICU‐AW) は回復期の身体機能やADLの獲得を遅延させ中長期的な予後に影響を与えるため, リハビリテーションと栄養療法は重要な治療の一つであると考える. 侵襲下では筋蛋白質が分解されエネルギーに転換される. また不動状態が続くことで, さらに異化が亢進し筋肉量が減少する. 一方, 侵襲下における内因性エネルギー供給増加を考慮せず栄養を投与することでover feedingとなり, むしろ予後は悪化する. 重症患者の栄養療法はtrophic feedingが推奨されているが, 高蛋白質投与の有効性について多数報告されている. 重症患者の身体機能の回復を最大限に引き上げる取り組みとして, 適切なリハビリテーションと栄養療法の併用が重要である. 本稿では侵襲下における身体機能低下の病態を概説し, 当院ICUにおける栄養プロトコールと運動療法のステップアップ基準について紹介する.
  • 大野 雄康, 斎藤 雅史, 藤浪 好寿, 井上 茂亮, 小谷 穣治
    2020 年 54 巻 3 号 p. 139-142
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/15
    ジャーナル フリー
     骨格筋は人体で最大の組織であり, 絶えずタンパク質の異化と同化を行う組織である. 傷害を受けた骨格筋は筋芽細胞などの骨格筋前駆細胞から形成される. 敗血症や熱傷, がん, 飢餓などの生体侵襲下ではこの骨格筋の異化, 同化, 筋新生のバランスが崩れ, 骨格筋萎縮が誘導される. 侵襲下では, ユビチンプロテアソーム経路, オートファジー経路, アポトーシス経路が活性化し, 異化が亢進する. また, insulin‐like growth factor‐1経路などのタンパク同化シグナルが不活性化する.さらに筋分化制御因子群の活性が減少し, 骨格筋新生能が低下する. これらのメカニズムで引き起こされた骨格筋萎縮は, さまざまな疾患において, 機能予後および生命予後の両方を悪化させる. 骨格筋萎縮は重要な疾患であるにもかかわらず, 既存のリハビリテーションなどの骨格筋萎縮への治療介入効果は限定的である. したがって今後分子機構をターゲットとした, 骨格筋筋萎縮の予防法や治療法の開発が期待される.
  • 原 加奈子, 堤 理恵, 中西 信人, 阪上 浩
    2020 年 54 巻 3 号 p. 143-146
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/15
    ジャーナル フリー
     熱傷や多発外傷, 敗血症といった重症病態では, 健常時と比較して代謝動態は著しく変化する. 侵襲時での炎症性サイトカインや免疫細胞の活性化によって解糖経路の亢進やミトコンドリアの機能不全による酸化的リン酸化の抑制が生じる. このような代謝の変化によってエネルギー代謝の倹約と乳酸の過剰産生が示唆される. また, 代謝動態への影響は糖代謝のみではなくアミノ酸代謝にも及ぶ. 特に分岐鎖アミノ酸 (BCAA) の代謝動態は重要なシグナル因子となっている可能性が考えられる. 敗血症においては, 骨格筋でのロイシン抵抗性が懸念されるが, 一方でロイシンの投与によって骨格筋減少抑制効果があることも報告されている. 重症病態において代謝機構の変化に合わせたエネルギー投与量の調整ともに,アミノ酸代謝の意義を究明する必要がある.
原著(臨床研究)
  • 小倉 正治, 長谷川 博俊, 松井 淳一
    2020 年 54 巻 3 号 p. 147-153
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/15
    ジャーナル フリー
     高侵襲手術である食道癌手術での周術期合併症を軽減し, 安全かつ迅速に術後回復を促進するため, 低侵襲手術である胸腔鏡下食道切除術の導入とEnhanced recovery after surgery (ERAS) による周術期管理を開始した. 2016年12月より胸腔鏡下食道切除術を開始し, ERASプロトコルの変更を行った. 2016年12月~2019年8月にかけて, 食道癌に対し上縦隔リンパ節郭清を施行した胸腔鏡下食道切除術23例 (VATS群) を対象とし, それ以前に施行した開胸手術55例 (No VATS群) との周術期転帰の比較を行った. VATS群において, 縫合不全は有意に減少し, また, 術後気管内挿管の期間, 集中治療室滞在日数, 経口摂取開始までの日数, 術後在院日数は, それぞれ有意に短縮された. 食道癌手術における胸腔鏡下食道切除とERASプロトコルの変更により, 患者の周術期アウトカムの改善が見込まれると推察された. 治療成績の安定化のため, 食道癌手術におけるクリニカルパスを導入したため, さらにその成果を期待したい.
総説
  • 大島 拓, 春山 美咲子, 今井 正太郎, 古川 誠一郎, 佐藤 由美
    2020 年 54 巻 3 号 p. 154-159
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/15
    ジャーナル フリー
     重症病態から生還する患者が増加する一方で, 治療中に身体機能が低下する患者が増えている. こうして発症するIntensive care unit acquired weakness (ICU‐AW) の予防や治療の手段として, 早期の栄養療法や理学療法の確立が期待されている. 当施設では他職種チームによる早期栄養療法および早期能動的運動療法プログラムを導入している. 重症度に関係なく早期から患者の状態に合わせて強度を調整した理学療法を実施ししている. また, 栄養療法ではエネルギー・蛋白の投与目標を設定し, 早期から充足させることを目標として段階的に介入を進めてきた. 当施設での後方視的検討では早期の蛋白投与により筋肉量の減少が抑えられる可能性が示唆され, 今後はICU‐AW予防の観点から理学療法,栄養療法をより効果的に活用する方法の確立が望まれる.
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