外科と代謝・栄養
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55 巻, 2 号
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特集「外科治療における患者給食の意義」
  • ―本邦と世界の潮流―
    丸山 道生
    原稿種別: 特集
    専門分野: 「外科治療における患者給食の意義」
    2021 年 55 巻 2 号 p. 57-61
    発行日: 2021/04/15
    公開日: 2021/05/15
    ジャーナル フリー

     世界各国には, それぞれの国や地域の食文化を反映した独自の病院給食と術後食のシステムがある. 最近まで術後食に関して「手術後, 消化管運動が回復してから, 流動食から開始し, 段階的に普通食にステップアップしていく」というのが世界共通の考え方であった. 近年, 手術の安全性が増し, 低侵襲化されたことで, 従来の術後食を見直す動きが広がっている. 特に, 術後回復強化策ERASが種々の手術に普及することで, 術後早期の経口栄養と段階食の見直しが行われている. 今後, 術後栄養管理は経口栄養が主流となっていくと推測され, 術後食がさらに重要視されると考えられる. 術後給食の科学的, 臨床的検討と改善が望まれる.

  • 前田 恵理, 鍋谷 圭宏, 河津 絢子, 金塚 浩子, 實方 由美, 高橋 直樹, 若松 貞子
    原稿種別: 特集
    専門分野: 「外科治療における患者給食の意義」
    2021 年 55 巻 2 号 p. 62-69
    発行日: 2021/04/15
    公開日: 2021/05/15
    ジャーナル フリー

     外科とくに消化器外科周術期栄養管理の重要性は論を待たないが, その一環として給食の意義が論じられることは少ない. わが国ではかつて, 流動食から全粥までの段階食で外科医ごとに異なる術後管理が一般的であった. その後, 施設・術式ごとのクリニカルパスが普及し, 主に段階食で画一化された術後管理が行われるようになった. 最近は, 術後早期回復プログラムに則り術後早期経口摂取再開と早期退院を目指すクリニカルパス管理が増えているが, 実際の給食摂取状況や栄養状態などアウトカムの評価は少ない. 一方で, 患者の希望も考慮した術後食の個別化管理で, 栄養摂取増加や体重減少抑制などの有効性が報告されている. 今後は, 食事再開日, 段階食の必要性, 食形態, 提供量を患者ごとに考慮したアウトカム指向の個別化給食管理を念頭におき, 「栄養源として食べてもらえる」給食の考案と環境整備が望まれる. 適切な患者給食からの栄養摂取は患者の満足感や回復意欲の励起にも繋がると思われるが, 一方で栄養源としての限界も理解する必要があり, 癌患者の予後に影響するような栄養状態の低下を招かないように適時適切な経腸栄養・静脈栄養の併用を忘れてはならない.

  • 冨樫 仁美
    原稿種別: 特集
    専門分野: 「外科治療における患者給食の意義」
    2021 年 55 巻 2 号 p. 70-73
    発行日: 2021/04/15
    公開日: 2021/05/15
    ジャーナル フリー

     外科治療の進歩とともに栄養療法も進歩し, 手術の成功率の向上や術後合併症の減少を可能にしてきた. 栄養療法の基本は腸を使うことであり, 栄養補給法の第一選択は経口栄養法となる. しかし, 経口栄養法である患者給食を提供するにあたっては食材費, 目標栄養量, 衛生管理などの観点から規制があり, 患者のニーズに合わせた食事提供には限界を感じることもある. 入院患者にとって, 食事は唯一の楽しみであり, ‘食べる’という当たり前だと思っていた行為ができないときに,楽しみは苦痛になりかねない. さまざまな規制はあるものの経口栄養の基本である患者給食は, 患者が食べる喜びを得られる形で提供されるべきである. われわれ管理栄養士がなお一層の努力をするとともに, この現状を他職種の医療関係者にもご理解いただくことが, より良い患者給食の提供につながると信じている.

  • 杉山 みち子, 松本 奈々, 高田 健人, 深柄 和彦
    原稿種別: 特集
    専門分野: 「外科治療における患者給食の意義」
    2021 年 55 巻 2 号 p. 74-77
    発行日: 2021/04/15
    公開日: 2021/05/15
    ジャーナル フリー
  • 幣 憲一郎
    原稿種別: 特集
    専門分野: 「外科治療における患者給食の意義」
    2021 年 55 巻 2 号 p. 78-83
    発行日: 2021/04/15
    公開日: 2021/05/15
    ジャーナル フリー

     外科治療における管理栄養士の役割は, 静脈栄養管理, 経腸栄養管理を中心とした急性期栄養管理はもちろんのこと, その後に続く慢性期栄養管理面で重要となる適切な治療食提供などを含めた栄養管理計画の立案までを担当する. 従来は「院内約束食事箋(栄養食事基準)」を構築する際, 「疾患別栄養管理法」が採用されてきたが, 近年の多臓器疾患や多くの合併症を有する患者が増え, 個別栄養管理の観点から「栄養成分別コントロール食」を導入する施設が増えている.「栄養成分別コントロール食」は, 特別治療食を各基本となる栄養素の組成に着目し, グループ化して管理するものであ, 「エネルギーコントロール食」, 「たんぱく質コントロール食」, 「脂質コントロール食」などがある. 今後は, 病棟ごとに配置された管理栄養士が各種学会の定めるガイドラインなどを熟知しながら「適切な食事」を提案することがますます求められている.

  • 伊地知 秀明
    原稿種別: 特集
    専門分野: 「外科治療における患者給食の意義」
    2021 年 55 巻 2 号 p. 84-88
    発行日: 2021/04/15
    公開日: 2021/05/15
    ジャーナル フリー

     患者給食は, 入院診療の一部であり, その喫食により栄養状態を保つことが治療効果に影響するため, 喫食率を上げることの重要性を患者も医療者側も意識することが重要である. すなわち, 病院食は単なる楽しみではないのであるが, しかし, 患者に病院食を楽しんで食べてもらえれば喫食率が上がり, それは治療効果に繋がることが期待される. 現行の病院食には衛生基準に加え, 栄養素バランスの基準の遵守が求められているが, それは健康人を対象とした基準であり, 患者に対しては喫食率が上がるようにフレキシブルな対応も考慮されるのではないか. 病院給食は多職種のチーム医療であり, 献立検討・喫食率向上・患者満足度向上へ向けて全院で取り組んでいくことが重要と思われる. また入院時食事療養費の引き上げも病院給食の安定した運営のためには必要と考える.

原著 (臨床研究)
  • 福島 亮治, 深柄 和彦
    2021 年 55 巻 2 号 p. 89-99
    発行日: 2021/04/15
    公開日: 2021/05/15
    ジャーナル フリー
     術前の適切な栄養管理は患者の予後を改善するとされている. しかしながら, 本邦における実施状況は明らかではない. そこで, 全国の外科医を対象に術前栄養に関するWEBアンケートを行い, その実態, 仮想症例に対する栄養管理の選択, 末梢静脈栄養に対する認識を調査した. 近年, 栄養状態の評価に血清アルブミン値等の内臓蛋白値を用いることは好ましくないとされているが, 依然として体重やBMIと並んで血液データが広く用いられていた. 栄養管理に関しては, 症例の栄養状態および摂食状況に応じて行われている実態が推察された. 介入方法は, 経口摂取が可能であれば経口的栄養補助 (ONS) が第一選択となるが, アドヒアランスが悪い場合や経口摂取が難しい症例では経管栄養や静脈栄養も行われていた. 本調査を通じて, 術前栄養の現状が明らかとなったが, 今後はこの結果を基礎として, 術前栄養管理の適応や具体的かつ現実的な方法の詳細を検討していく必要がある.
  • 田附 裕子, 米山 千寿, 塚田 遼, 當山 千巌, 東堂 まりえ, 岩崎 駿, 出口 幸一, 阪 龍太, 上野 豪久, 和佐 勝史, 奥山 ...
    2021 年 55 巻 2 号 p. 100-106
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/15
    ジャーナル フリー
     われわれは, 2019年の市販セレン製剤の販売まで, 低セレン血症を認める在宅中心静脈栄養(HPN)患者に対して院内調剤のセレン注射剤(セレン製剤)の提供を行ってきたので, その投与量と安全性について報告する. 対象および方法 : 2019年末においてセレン製剤を6カ月以上当科で継続処方している27名のHPN患者を対象とし, セレン製剤の使用量, 使用期間, 血清セレン値の変動, 有害事象の有無などを後方視的に検討した. 結果 : 患者の年齢は2~78歳(中央値22歳)で, うち16歳以上は17例であった. 基礎疾患の内訳では短腸症が13例と最も多かった. 血中セレン値をモニタリングしながら正常値を目指して投与した. 最終的に1日のセレン投与量は, 市販製剤の推奨(2μg/kg/日)より多く, 25~200μg/dL/日(4μg/kg/日)で, 血清セレン値(正常値:13‐20μg/dl)は8.3‐23μg/dL(中央値14.8μg/dL)で調整された. 血清セレン値に変動はあるが有害事象は認めなかった. まとめ : HPN患者におけるセレン製剤の必要量は市販製剤の推奨量より多く, また長期投与が必要であった. 市販セレン製剤の販売によりセレン製剤の供給は安定したが, 長期投与の症例では今後も血清セレン値を定期的に確認し, セレン製剤の投与量の調整が必須と思われる.
  • 新庄 幸子, 松塚 栄恵, 増田 剛, 栄 政之, 福原 研一朗
    2021 年 55 巻 2 号 p. 107-113
    発行日: 2021/04/15
    公開日: 2021/05/15
    ジャーナル フリー
     皮下埋め込み型中心静脈ポート (以下, CVポート) 患者412例のカテーテル関連血流感染 (Catheter‐related bloodstream infection : 以下, CRBSI) の関連因子と栄養状態を検討した. 栄養指標は小野寺の予後栄養指数とControlling Nutritional Status, 血清アルブミンを用いた. CRBSIは14例に認め, CRBSI発症群 (I群) と非発症群 (N群) の患者背景や造設時の栄養状態に有意な差はなかった. 起因菌は表皮常在菌が多く, 発症時に静脈栄養の施行例が増加していた. I群の栄養状態はCRBSI発症前まで維持されており, 患者背景や低栄養化による易感染性よりもCVポートの取り扱いによる発症が疑われた. CVポート留置中はCRBSIのリスクを念頭におき, 適正な感染対策の下に使用すべきである.
あとがき・編集委員会名簿
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