内臓脂肪は腹腔内に存在する腸間膜および大網に存在している脂肪組織であり, 門脈を介し肝臓の上流に位置するため, 消化管から吸収したエネルギーの一時的備蓄や供給に重要な役割を果たす. しかし過剰な内臓脂肪蓄積は, 過度な脂肪分解により糖・脂質代謝異常を惹起する. 成人期以降の過栄養は, 内臓脂肪蓄積に繋がりやすく, 慢性炎症, 低酸素, 高酸化ストレス状態となり, 低アディポネクチン血症をはじめとするアディポサイトカイン産生異常を引き起こす. 生体のエネルギー摂取が過剰になると, 肝臓, 骨格筋, 膵臓, 心血管系などの脂肪組織以外の臓器に異所性脂肪として蓄積し, 非アルコール性脂肪性肝疾患, インスリン抵抗性, インスリン分泌障害, 動脈硬化症などの病態形成に関わる. 異所性脂肪から見ると, その基盤病態には内臓脂肪蓄積以外にも遺伝素因, 脂質の過剰摂取などが報告されており, それらの評価も重要である. 内臓脂肪蓄積が基盤病態である対象者は, 減量による内臓脂肪蓄積, 異所性脂肪の減少を通して, 糖・脂質・血圧などの心血管疾患リスクがトータルに改善するため, より若い世代での予防的アプローチが重要となる.
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