外科と代謝・栄養
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56 巻, 1 号
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特集「災害下におけるNST 活動」
  • 佐々木 雅也
    2022 年 56 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/15
    ジャーナル フリー
     2020年, 日本臨床栄養代謝学会 (JSPEN) では, COVID‐19のパンデミックを受けて, 治療と予防に関する栄養学的提言を発表した. これは, ①栄養評価の実施, ②低栄養患者の栄養状態改善とNST活動の推奨, ③エネルギーとたんぱく・アミノ酸投与の強化, ④微量栄養素の適正投与, ⑤隔離・待機状況における継続的な運動と感染対策, ⑥経口的栄養補助の勧め, ⑦経口摂取不十分症例に対する経腸栄養の勧め, ⑧経腸栄養不可症例に対する静脈栄養の実施, ⑨経腸栄養+静脈栄養の重視, ⑩気管挿管症例に対する適正栄養管理の実施, ⑪感染症例に対するNST活動の注意事項, ⑫社会栄養学の実践‐予防が最大の治療‐, の12項目からなる. いずれも, 栄養学的な基本方針をCOVID‐19感染患者においても実施することを推奨した内容である. サルコペニアなどの栄養障害や肥満がCOVID‐19の重症化リスクになること, エネルギーやたんぱく質のみならず, 微量栄養素の重要性を述べている点などは, その後の新しい知見とも合致している. これらの提言を踏まえながら, COVID‐19感染患者の栄養管理, さらにはNST活動が実践されることが望まれる.
  • ~食べることは生きること~
    深澤 幸子, 山下 雅世, 濱田 真里, 笠岡(坪山) 宜代
    2022 年 56 巻 1 号 p. 6-10
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/15
    ジャーナル フリー
     近年, わが国では, 大規模自然災害が頻発している. 1995年の阪神・淡路大震災では, ピーク時には約32万人もが長期間の避難生活を送り, 食事や健康の問題が生じた. 2011年の東日本大震災でも東北地方を中心に壊滅的な被害を受け, ピーク時には約47万人が避難生活を送り, 10年が経過した今もまだ仮設住宅での生活を送っている人がいる.
     東日本大震災では食事や栄養の問題が深刻化したことから, 行政栄養士の公的派遣, 日本栄養士会などからのボランティア派遣が全国規模で初めて行われ, 管理栄養士・栄養士が栄養支援活動を行った. その後, 全国的な活動を展開する日本栄養士会災害支援チーム (JDA‐DAT) が発足し, 関東東北豪雨災害や熊本地震などを経て活動実績を積んでいる.
     災害時の栄養・食生活支援には,さまざまな職種との連携が必要となる.管理栄養士・栄養士が発災初期に医療活動を行うことの必要性について認知が低い状況ではあるが,配慮が必要な避難者にとって,栄養・食事支援を早期から行うことは,健康状態の維持や慢性疾患悪化予防のために不可欠である.食べることは生きることであり,災害後の栄養・食事支援が避難者の生きる力になることを願う.
  • ~医師の立場から
    民上 真也, 柴田 みち, 梅澤 早織, 久恒 靖人, 鈴木 規雄, 中村 祐太, 伊藤 彩香, 水谷 翔, 大貫 理沙, 穐山 雅代, 栃 ...
    2022 年 56 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/15
    ジャーナル フリー
     新型コロナウイルス (COVID‐19) の世界的な蔓延に伴い, 人々は感染予防対策として新しい生活様式を強いられている. 医療の現場においては, 院内感染対策の徹底, 一般診療とCOVID‐19診療の両立など, 新たな医療体制の構築が求められるようになった. 聖マリアンナ医科大学病院では, 本邦での感染者の発生当初より「神奈川モデル」の高度医療機関および重点医療機関協力病院として多くのCOVID‐19症例を積極的に受け入れて治療を行っている. 院内においては, 救命病棟の改装, コロナ専用病棟への改築, 発熱外来の設置など, COVID‐19診療支援体制の構築に努めてきた. 院内での感染対策としては, 手指消毒, マスク着用, ソーシャル・ディスタンス確保, 黙食など遵守事項の徹底が求められた.NST活動は, 感染予防のため医療者間の接触を最小限にしたチームの再編成が求められ, カンファレンスや回診などの活動も制限された. 他の多くの施設においても, 特に第1波の時期においてはカンファレンスや回診などのNST活動は制限され, また, 院内勉強会や院外での講演会も中止を余儀なくされたため, 従来の形で栄養を学ぶ機会が失われた.
  • 長井 直子, 石橋 怜奈, 田附 裕子
    2022 年 56 巻 1 号 p. 16-19
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/15
    ジャーナル フリー
     COVID‐19感染拡大に伴い, 当院栄養マネジメント部でも食事提供をはじめ栄養管理業務においてさまざまな感染対策が必要となった. そのため, Nutrition Support team (以下NST) も工夫を施して感染対策を実施しながら, 活動を継続することとなった. カンファレンスでは, 密な状態を避けるため, 参加者を必須職種である医師, 看護師, 薬剤師, 管理栄養士の4職種のみとし, リモート参加も出来る環境を整えた. また, カンファレンス結果をもとに, 必要最少人数にてベッドサイドへ訪問し, 患者からの情報収集や説明を行った. 栄養管理に関するNSTから主治医への提案はカルテ記載にて行い, 必要に応じて電話連絡を追加した.
     2019年度とCOVID‐19感染拡大後の2020年度を比較すると, 入院延べ人数は約1割減少したがNST件数は約1割増加しており, 恒常的にNSTは必要であった. また, NST介入後, 低栄養の患者の血清アルブミン (Alb) 値およびBody mass index (BMI) は, 2019年度と同様に有意に改善していた. カルテやメール・電話などオンラインの連絡方法を活用した連絡体制の強化, また管理栄養士を主体とした定期的な患者訪問と指導の実践といった工夫により, COVID‐19感染対策下においても適切なNST活動を継続できた.
  • 小谷 穣治, 山田 勇, 上田 敬博
    2022 年 56 巻 1 号 p. 20-25
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/15
    ジャーナル フリー
    目的: 地震発生から約2週間目に避難者の差し入れ内容, 消化器症状, 不満と希望を調査する. 方法: 対象は避難所 (34名) と老人療養施設 (12名). 主観的包括的栄養評価法でアンケートをとり, 同時に自由意見を聞く形で不満と希望を調査した.
    結果: 体重の減少・不変・増加・不明が, 避難所で4, 24, 6, 0, 施設で0, 8, 1, 3で, 避難所で変化が多かった. 食事量の減少・不変・減少が避難所で4, 22, 1, 施設で1, 10, 1と避難所で変化が多かった. 体重増加の理由として, 「残してはだめと思っている」, 「高カロリーものが多い」, 「お菓子やカップ麺をつい食べる」, などがあった. 消化器症状は避難所で便秘が5で最も多く, 施設では多彩である. 施設の便秘は炭水化物過多の食材が関連していると思われた. 満足度は避難所で満足が2人のみで, 大多数が不満を訴えた. 不満内容は「朝のパンがいや (ご飯がいい), 甘すぎる, ひもじい」, 「おにぎりが大きすぎる」が最多だが, 床上で摂食すると腹部圧迫され食欲が落ちる (椅子とテーブルで食べたい) など, 床上生活での摂食環境への不満もあった. 施設では大多数が不満なしである. 希望は避難所で全員が述べ, 野菜, 朝にご飯, 肉, 果物, 炭酸飲料 (冷蔵庫がないので不可), アイスクリーム (同) など多彩である. また, 「食材を自分で選択したい」, 「自動販売機がほしい (自分で選択したい) 」など, 一方的に食事が与えられ, 選択権がない状況に飽きているという意見が聞かれた. 施設では希望はほぼなく,大多数が現状に満足していた.食材の供給源は,避難所がボランティアと自衛隊で避難者のニーズとずれていたが, 施設では遠隔地の老人療養施設で被災者のニーズを鑑みた食料が送られていた. 結語: 避難者は発災直後には差し入れに感謝するが徐々に不満となる. 食事は避難所での楽しみの一つであり, 精神的ストレスの軽減に重要である. 避難所には避難者のニーズを考慮した差し入れを行うべきである.
  • 鈴木 伸康
    2022 年 56 巻 1 号 p. 26-29
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/15
    ジャーナル フリー
     新型コロナウイルス感染 (COVID‐19) は全世界に感染を拡大させ, WHOが国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態を宣言する世界的大流行(パンデミック)の状態を引き起こした. 日本国内でも感染者は増加し, 福島県内でも終息の見込みはいまだ見られず, 大規模災害級の有事といっても過言ではない. 総合南東北病院では新型コロナウイルス感染症への対策として, 複数診療科による感染対策チームを立ち上げ, 隣接する南東北第二病院に専用フロアを作り, 通常診療から隔離しながら感染症診療している. 入院患者は, 感染管理にばかり目が行きがちであるが, 患者の既往歴や, アレルギー, 宗教などへ配慮した食事提供, 栄養管理を行っている. NST活動は感染により介入件数が減少傾向であるが, NST専門療法士を中心とした職種チーム制で, 介入患者の情報, 方針を整理し, NST回診, 検討会の時間を短縮する工夫をしながら継続している. また, オンデマンド方式のNST勉強会を導入し, NSTからの情報発信を持続するよう努めている. 当院でのCOVID‐19に対する感染対策及びNST活動の工夫について報告する.
原著(臨床研究)
  • 森川 孝則, 石田 晶玄, 水間 正道, 有明 恭平, 川口 桂, 益田 邦洋, 大塚 英郎, 中川 圭, 亀井 尚, 海野 倫明
    2022 年 56 巻 1 号 p. 30-36
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/15
    ジャーナル フリー
     [目的]術前栄養学的指標の高齢者膵癌切除例の術後成績への影響について後方視的に検討した. [対象・方法]対象は2007年1月~2020年6月に切除術を行った膵癌症例549例, うち75歳以上の後期高齢者は122例であった. 栄養指標として小野寺のprognostic nutritional index (PNI) およびCONUT値を用いた. [結果]非後期高齢者と比較すると後期高齢者は, 高血圧併存例, 術前化学療法非施行例が有意に多く, PNIが有意に低値であった. 反面, 外科治療として膵尾側切除が多く, 門脈合併切除率, 手術時間, 出血量が有意に低値であった. 術後肺炎は後期高齢者が有意に多く, 全生存率も有意に低値であったが, 無再発生存率では差はなかった. 後期高齢者群のみで検討すると, PNIおよびCONUT値にて栄養障害を示す症例は, 在院死亡の危険因子であった. [結語]後期高齢者膵癌の外科治療は, 手術侵襲が軽減され, 安全に行われていた. しかし術前の栄養障害は在院死亡の危険因子であり, 栄養不良例は対策を講ずる必要がある.
症例報告
臨床経験
  • 三松 謙司, 斎野 容子, 吹野 信忠
    2022 年 56 巻 1 号 p. 41-49
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/15
    ジャーナル フリー
    【目的】高齢者胃癌手術におけるESSENSEの理念に基づいた周術期管理の安全性と有用性について検討した.
    【方法】75歳以上の胃癌開腹胃切徐症例を, 従来の周術期管理 (C群) とESSENSEを取り入れた管理 (E群) に分類し, 後方視的に比較検討した.
    【結果】患者背景は手術時間以外に有意差を認めなかった. 胃管抜去, ドレーン抜去, 食事開始はE群で有意に早かった.合併症は両群間で有意差を認めなかったが, E群で腸閉塞を2例に認めた. 食事エネルギー摂取量はE群で有意に多く, 術後身体活動はE群で早く回復し, 退院1カ月後の体重減少率はE群で3.3%低かった. 退院許可日はE群で早かったが, 術後在院日数は有意差を認めなかった. 再入院はC群で2例認めたが, E群では認めなかった.
    【結論】高齢者胃癌開腹手術におけるESSENSEの理念に基づいた周術期管理は,再入院を増加させなかったが,腸閉塞には注意が必要と考えられた.
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