外科と代謝・栄養
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最新号
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特 集「持続血糖モニタリングの外科への活用」
  • 佐藤 淳子
    2024 年 58 巻 6 号 p. 185-190
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

     持続グルコースモニタリング (CGM : continuous glucose monitoring) とは, 皮下間質液中のグルコース濃度を連続測定するデバイスである. 1日の血糖トレンドが分かり, 現在の糖尿病治療には欠かせないものとなっている. 間質液を使用しているので「血糖」ではなく「グルコース」モニタリングとよぶ. 患者自身がリアルタイムにデータをみることのできるリアルタイムCGM (rtCGM), ブラインドで測定したデータをあとからダウンロードして評価するプロフェッショナルCGM, また定期的にリーダーやアプリをセンサーにかざすことでデータを確認できる間歇スキャン式CGM (isCGM) がある. 2024年はリアルタイムCGMであるデクスコムG6の後継機種G7が新たに使用できるようになった. またisCGMもリブレ2が登場したことによって, アプリのみで使用すればセンサーにかざす必要がなくなった. 今回は進歩が目覚ましいCGM/isCGMの基本的な情報をアップデートし, その有用な使用方法について概説する.

  • 新原 正大, 比企 直樹
    2024 年 58 巻 6 号 p. 191-194
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

     持続血糖モニタリングが糖尿病患者の血糖コントロールに用いられるようになっている. 厳密には「持続グルコースモニタリング(CGM)」であり, 血糖値とは異なり間質液中のグルコース濃度を測定しているが, さまざまな報告で血糖値との相関が示されており, 糖尿病国際コンセンサスにおいても推奨事項として記載されている.
     周術期に関しては, 「待機的手術を受ける成人糖尿病患者には, 術前のHbA1c 8%未満, 血糖値100~180mg/dLを目標とすることを推奨する」とされている. 術前の血糖管理に関する研究のアプローチとしてCGMが注目されており, 術前のCGMの測定および管理が術後の転帰にどのような影響を与えるかなど周術期管理への応用も考えられる.
     胃切除後障害の代表的な症状の一つとして, ダンピング症候群があげられ, 食後の一過性の高血糖によるインスリンの過剰分泌による反応性低血糖の症状を後期ダンピングといわれている. しかし, 胃切除後の患者にCGMを用いることにより, 低血糖症状のない食後高血糖からの反応性低血糖を認めることや夜間低血糖を認める患者が一定数いることが分かってきた. このような患者が意識しない低血糖をどのようにとらえ, そして介入するべきなのか, 今後の研究課題であると考えている.

  • 穐保 由衣, 押切 孔, 齋藤 芳秀, 大橋 誠
    2024 年 58 巻 6 号 p. 195-198
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

     近年, 間質グルコース (interstitial glucose 以下, IG) を用いる持続グルコース測定器 (continuous glucose monitoring 以下, CGM) の開発が進み, 簡便に血糖値の持続的把握が可能となった. 今回われわれは, 糖尿病患者の術中管理にCGMを使用し, その有用性を認めたため報告する. 症例1 85歳女性. 薬剤関連顎骨壊死で下顎骨区域切除術と同時プレート再建術を行った. 75歳から2型糖尿病のため加療中である. (経過) 術当日CGMを装着した. 術中IGは120~130mg/dLで推移していた. 症例2 82歳女性. 薬剤関連顎骨壊死で下顎骨区域切除術と同時プレート再建術を行った. 1型糖尿病のため, 食事療法とインスリン療法が行われていた. 術前日の夕食後からCGMを装着した. (経過) 術中にCGMでIGが200mg/dLを超えたためインスリンを投与し, その後のIGの推移を観察した. 穿刺による血糖測定は間欠的な評価のみであったが, CGMは追随性に優れた測定が可能であった. 実際にCGMを術中管理に使用するには, その特性を十分把握する必要がある. しかし, 術中に血糖の連続モニタリングを行うことで, 低血糖や高血糖状態へ迅速な対応が可能となる. 今後もCGMによる持続血糖モニタリングが術中血糖管理の進歩にいかに寄与するか, さらに検討を進めていきたい.

  • 窪田  健, 西別府 敬士, 高畠 和也
    2024 年 58 巻 6 号 p. 199-203
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

     晩期ダンピング症候群に代表されるように胃切除後は血糖変動が大きく患者QOLを損なうことは古くから知られている. 持続グルコースモニタリング (continuous glucose monitoring ; CGM) の出現により, 胃切除後の血糖変動の詳細が明らかになってきた. 術後急性期のストレス高血糖に関する検討では, 患者はさほど高血糖にはなっていないことが分かったが, 糖尿病患者や術前HbA1c高値の患者は, 糖尿病内科医による血糖コントロールにもかかわらず高血糖時間は長く, 血糖変動も大きかった. 晩期ダンピング症候群に関しては術後1年が経過しても生じており, 胃切除後1カ月と1年の変化を見てみると低血糖の時間は変わっておらず, 血糖変動はむしろ増大していた. 患者QOLは時間とともに改善傾向であり, CGMの結果と乖離した結果であった. また, 胃切除後無自覚性低血糖 (無症候性晩期ダンピング症候群と夜間低血糖) の患者が存在することも明らかとなった. 胃切除後血糖変動に対してCGMは有用なツールである. 症状にかかわらず, 継続的な食事栄養療法が必要である.

  • 宗景 匡哉
    2024 年 58 巻 6 号 p. 204-209
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

     外科周術期は糖尿病患者だけでなく, 非糖尿病患者においても侵襲に伴うストレス誘導性高血糖が問題となる. また, 高血糖治療に伴う低血糖と, 急激な血糖変動からBrittle型糖尿病の様相を呈し, ①高血糖, ②低血糖, ③血糖変動, それぞれが独立した予後不良因子とされている. Closed-loop式人工膵臓はこれらの問題を自動的に解決することができる画期的な手段である. また, 近年はERAS (Enhanced Recovery After Surgery) に伴う早期栄養療法に, 併せて血糖管理を行うことがESSENSE (ESsential Strategy for Early Normalization after Surgery with patient’s Excellent satisfaction) の基本理念に基づく侵襲の低減につながるといえる.
     現在, 人工膵臓を用いた周術期血糖管理は人工膵臓療法として保険適用となっており, 多くの施設で施行可能となっている. 今後, 高齢者やサルコペニアを合併した患者に対する手術を必要とする機会はますます増加し栄養療法と併せて施行される人工膵臓療法の果たす役割は大きくなることが予想される.

原著(臨床研究)
  • 石田 晶玄, 伊関 雅裕, 林 秀一郎, 野口  彩, 佐藤 英昭, 吉町 信吾, 日下 彬子, 志村 充広, 青木 修一, 堂地 大輔, ...
    2024 年 58 巻 6 号 p. 210-215
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

     膵頭十二指腸切除術 (PD)は, 消化器手術において最も侵襲の大きい手術の1つである. PD後における経管栄養の臨床的意義については, いまだに明らかになっておらず, 本検討では経管栄養の栄養状態における影響について解析を行った.
     当施設でPDを施行した129例を対象として, 経管栄養施行群 (EN群) 97例と非施行群 (非EN群) 32例において, 術後の栄養摂取状況, CONUTによる栄養状態を後ろ向きに検討した.
     年齢, 性別, BMI, 手術時間, 出血量, および術後合併症, 術後在院日数に有意な差は認めなかった. 退院時の栄養状態および術前後の栄養状態の変化については, ややEN群が良好な傾向を認めたが, 有意ではなかった.
     経口摂取エネルギーは非EN群が有意に多かったが, 全摂取エネルギーはEN群が多い傾向を認めた.
     本検討の結果から, PD後の経管栄養が, 術後の栄養状態・栄養摂取量において有効な所見は認められなかった.

総説
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