外科と代謝・栄養
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特集 「外科領域におけるGLIM基準を用いた『低栄養』診断の意義」
  • 福島 亮治
    2026 年60 巻4 号 p. 51-55
    発行日: 2026/08/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

     Global Leadership Initiative on Malnutrition (GLIM) 基準は, 世界共通の低栄養の診断基準を目指して, 国際的コンセンサスに基づき2018年に策定され, 2019年に公表された. その後, 多くの検証が行われ, 現在では低栄養診断のゴールドスタンダードに近づきつつある. なお, GLIMの基本的概念に基づく成人低栄養の定義は, 2027年からICD‐11に導入されることが決定している. これまでに複数の運用ガイダンスが示され, 筋肉量, 炎症, 食事摂取量, 集中治療患者への適用方法などが整理・更新されてきた. 昨今, 栄養スクリーニングにおける「低栄養リスク」の概念も明確化されつつあり, GLIM基準の適用方法が一層明確になってきた. 今後は肥満患者への適用, カットオフ値の明確化, GLIS (Global Leadership Initiative on Sarcopenia) との連携などが課題である.

  • 松井 亮太
    2026 年60 巻4 号 p. 56-61
    発行日: 2026/08/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

     2019年にGlobal Leadership Initiative on Malnutrition (GLIM) criteriaが世界のコンセンサスを得た低栄養診断基準として発表され, 消化器がん患者の術後アウトカム不良と関連することが報告されてきた. 消化器がん患者を対象として系統的な検索を行うと, 術後アウトカムとの関連を示した報告は25文献と増加傾向で, そのうち13文献が上部消化管がん患者を対象としていた.

     上部消化管がん患者を対象としたGLIM基準低栄養と術後合併症の関連をまとめると, 多くの文献でGLIM基準低栄養と術後合併症が相関しており, 低栄養が重度になるほど術後合併症や重症合併症が増加していた.

     上部消化管がん患者を対象としたGLIM基準低栄養と長期予後の関連をまとめると, 多くの文献でGLIM基準低栄養が全生存期間や無再発生存期間を不良にすることを報告していた. 低栄養の重症度別の検討では, moderateおよびsevereのいずれにおいても長期予後が不良になることが示されていた.

     GLIM基準低栄養は今後, 術前栄養介入の対象として認識すべきであるが, 栄養介入によって術後アウトカムが改善できるかについてはさらなるエビデンスの構築が期待される.

  • 廣野 靖夫
    2026 年60 巻4 号 p. 62-69
    発行日: 2026/08/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

     2018年にGlobal Leadership Initiative on Malnutrition (GLIM) criteriaが世界の専門家のコンセンサスを得て発表され, 新たな低栄養の診断基準として広く用いられるようになっている. GLIM基準に基づく低栄養と生命予後との検討を行った報告を検索すると, 多くの文献では独立した予後不良因子であった. がんに対する外科的治療においてだけでなく, 周術期の化学療法などにも影響を及ぼしていた. 放射線療法や薬物療法でも予後との関連の報告が多かった. 非がんの外科治療でも予後との強い関連が報告されており, 種別を問わず術後の予後予測に有用であることが報告されている. 心不全や肺炎治療でもGLIM基準低栄養は予後予測に有用であることが報告されており, 高齢化社会においてはますます重要な診断基準であると考えられる. 一方で表現型基準の重要な項目である筋肉量減少の評価においてはさまざまな方法で評価されており, 周術期に最適な方法は定まっていない. また握力などの身体機能評価を付加することで精度が高まるという報告も多く, 今後の診断基準の見直しの際は重要なポイントである. 今回検索した報告はいずれも術前 (治療) 前の低栄養診断に基づく検討であり, 低栄養患者に栄養治療を行うことで予後が改善できるかを検討していくことも今後の課題である.

  • 山本 和義, 黒川 幸典, 服部 聡, 湯川 芳郎, 松井 亮太, 市川 大輔, 柳本 喜智, 大島 貴, 亀井 尚, 竹内 裕也, 鍋谷 ...
    2026 年60 巻4 号 p. 70-74
    発行日: 2026/08/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

     各種癌治療において筋肉量の低下がアウトカムに悪影響を与えるため, 筋肉量評価に対する関心が高まっている. またGLIM低栄養診断基準では, 表現型基準の一つに「筋肉量低下」が位置づけられている. しかし, 筋肉量低下の具体的カットオフ値は規定されておらず, 臨床現場では測定法や閾値の不統一が課題である. 本研究では, 胃癌手術例を対象に, 術前CTから得られた骨格筋指数 (SMI) および大腰筋指数 (PMI) と予後との関連を解析し, 年齢・病期を考慮した最適層別化法により男女別カットオフ値を同定した. 対象は2011~2016年に術前治療なく胃切除を受けた患者で, 3,797例を解析対象とし, 80%をトレーニングセット, 20%を独立バリデーションセットとして分割し, トレーニングセットから最適層別化法によりカットオフ値 (男性ではSMI 40 cm2/m2, PMI 3.7 cm2/m2, 女性ではSMI 31 cm2/m2, PMI 2.9 cm2/m2) が同定された. カットオフ値が欧米報告よりやや低く, 筋肉量の予後への影響に男女差があることを確認した. 筋肉量減少を, カットオフ値を用いてリアルタイムに診断し適切な介入を行うことで, 治療成績の向上につながる可能性がある.

  • 苛原 隆之, 勝木 竜介, 大石 大, 梶田 裕加, 寺島 嗣明, 田邊 すばる, 錦見 満暁, 甲斐 貴之, 加藤 浩介, 久下 祐史, ...
    2026 年60 巻4 号 p. 75-79
    発行日: 2026/08/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

     ICUにおける重症患者に対しては栄養リスク評価が重要であり, 世界規模の低栄養診断基準としてGLIM基準が広がりをみせている. 一方で栄養療法においては投与エネルギー量の算出に間接熱量測定の使用が推奨されており, 個別化医療の観点からも重要である. 本稿では, ICUにおけるGLIM基準による重症患者の栄養リスク評価, および間接熱量測定でみえる代謝変化と適切な栄養投与による合併症予防について概説する.

     GLIM基準は世界の主要な栄養学会により開発され, 栄養リスク症例に対し表現型基準と病因基準を評価して判定する. ICU患者においては, 炎症や重症度がさまざまであることや高度な浮腫や痩せのために適切な評価が困難であることがあり, 診断精度の向上と繰り返し評価することが必要である.

     間接熱量測定は呼気ガス分析から消費エネルギー量を算出する方法であり, ICU患者においても予後改善効果が期待されている. 筆者らの自験例から, 急性期は内因性脂質代謝が亢進していることが示唆された. 実際の栄養投与においては, 間接熱量測定値を参考に脂質主体の少量投与からはじめ, 内因性エネルギー供給の低下に合わせて徐々に投与エネルギーを上げることが重要と思われる.

  • 飯沼 雅央, 植原 健二, 町田 慎治, 山城 菜那, 田上 ひとみ
    2026 年60 巻4 号 p. 80-85
    発行日: 2026/08/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

     【目的】脆弱性骨折患者における低栄養の実態をGlobal Leadership Initiative on Malnutrition (GLIM) 基準により評価し, 血清学的栄養指標との関係を検討することを目的とした.

     【方法】2024年7月から2025年12月までに脆弱性骨折に対し手術加療を行った75例を対象とした. 術前にMNA‐SFでスクリーニングを行い, GLIM基準の評価を行った. 血清学的評価はGNRI・PNI・CONUTスコアを用いた.

     【結果】GLIM基準では81.3%が低栄養に該当した. MNA‐SFとGNRIの間には有意な相関を認めたが, PNI・CONUTとは相関がなかった. GLIM非該当例14例のうち, PNI低値を示す症例も存在し, 年齢やBMIに差はなかったが, 血清アルブミン値が低値であった.

     【結論】脆弱性骨折患者では低栄養を高頻度に伴った. GLIM基準・血清学的栄養指標ともに有用であるが, その特徴を把握し, 臨床使用することが望ましい.

原著(臨床研究)
  • 國井 恵理, 黒川 友博, 宇佐美 満帆, 蛭田 羽音, 栁沼 萌, 遠藤 美穂, 末永 華恵, 藤田 咲彩, 内田 明奈, 助友 真知子, ...
    2026 年60 巻4 号 p. 86-91
    発行日: 2026/08/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

     病棟における管理栄養士の配置体制は急性期医療を中心に拡大しつつあるが, 病棟管理栄養士とNSTとの役割分担が急性期アウトカムにどのような影響を及ぼすかについては, 十分に検証されていない. そこで本研究では, 病棟管理栄養士専任制導入前後におけるNST介入症例の特性およびアウトカムを比較することにより, 病棟管理栄養士の専任配置に伴うNSTのニーズの変化を把握し, 今後NSTが担う役割を外科代謝栄養学的視点から検討した. 専任制導入後は, 併存疾患重症度の高い症例の割合が有意に増加していた一方で, 在院日数は有意に短縮していた. また, NST終了時の栄養経路は経口栄養の割合が増加する傾向にあった. 病棟管理栄養士による一次的な栄養管理体制とNSTによる重症・難渋症例への専門的介入との機能分化が形成された可能性が示唆され, 急性期外科領域における栄養管理体制のあり方に関する実装的示唆を与えるものと考えられた.

総説
  • 升井 大介, 橋詰 直樹, 古賀 義法, 吉田 寛樹, 愛甲 崇人, 倉八 朋宏, 坂本 早季, 朝川 貴博, 惠紙 英昭, 八木 実, 加 ...
    2026 年60 巻4 号 p. 92-97
    発行日: 2026/08/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

     胆道閉鎖症術後患児では十分な減黄後も慢性肝炎や線維化が持続することが多く, 自己肝による長期生存を目的に漢方補助療法が用いられている. 全国アンケートでも半数の施設が漢方を使用し, 特に茵蔯蒿湯の使用頻度が高い. 茵蔯蒿湯は胆汁分泌促進, 抗酸化作用を介した肝保護に加え, 当科の胆管結紮モデルでもTGF‐β1抑制を通じた肝線維化抑制効果を示した. 臨床報告でも肝機能および線維化マーカー改善が示されている. 一方, 腸内細菌叢の影響や長期大量投与による腸間膜静脈硬化症に注意が必要である. 柴苓湯は抗炎症作用と水分代謝改善作用を併せもち, 茵蔯蒿湯との併用によりNF‐κB抑制と肝細胞‐類洞間のaquaporin 9発現増加を介した肝機能改善効果が示唆されている.しかし,間質性肺炎や偽性アルドステロン症への配慮が必要である. 胆道閉鎖症術後の漢方治療は有用性と副作用を踏まえ, 病状安定時には休薬も含め慎重な運用が重要である.

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