術中の輸液療法は, 長い間, liberal fluid therapyと呼ばれる術前から術中にかけて水分の不足分を補うという考え方に基づいて実施されてきた. しかし, 2000年代になり, 過剰輸液による弊害がクローズアップされたことで, 輸液療法や輸液の概念が見直されるようになった. 輸液投与による間質の浮腫がサードスペースの本態であることが示され, またglycocalyx層に代表される血管内皮の構造が明らかになったことで, 輸液製剤がどのように体内に分布していくのかが理解されるようになった. それにより輸液療法も, liberal fluid therapyからrestrictive fluid therapyと呼ばれる制限輸液量, そして輸液最適化を目指したgoal‐directed fluid therapy, zero‐fluid balanceといったさまざまな輸液療法が施行されることとなった. 本稿では, まず, 輸液療法を理解するための基礎知識として, 輸液に関する概念の変遷と輸液の体液分布について解説する. つぎに臨床的に利用できる輸液反応性の指標とそれを利用してどのように輸液療法を実践していくべきかについて解説する.
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