外科と代謝・栄養
Online ISSN : 2187-5154
Print ISSN : 0389-5564
ISSN-L : 0389-5564
最新号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
特集「医工連携がもたらす重度侵襲病態治療の最前線と近未来の治療」
  • 藤田 健亮, 小倉 崇以
    2020 年 54 巻 4 号 p. 163-169
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/15
    ジャーナル フリー
  • 酒井 宏水
    2020 年 54 巻 4 号 p. 170-174
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/15
    ジャーナル フリー
     現行の献血-輸血システムの安全性はきわめて高いが課題も存在する. 赤血球輸血治療の補完を目的として, 人工赤血球製剤(ヘモグロビンベシクル, HbV)の研究開発が日本で進められ, 間もなく臨床試験が開始されようとしている. 本稿では, これまでに動物投与試験から明らかにされてきた出血性ショック蘇生液としての有効性についてまとめた. 原料となるヒトヘモグロビンの精製工程でウィルス不活化・除去を徹底しているため感染の心配がなく, 室温で長期間備蓄ができ, また血液型がないので交叉試験が不要で, 必要時に即座に投与が可能なので, 救急救命医療に威力を発揮するものと期待される. また, 一酸化炭素を結合したCO‐HbVはCOの徐放効果でさまざまな効能を示し, 新しい製剤として期待されている.
  • 中森 裕毅, 亀井 政孝
    2020 年 54 巻 4 号 p. 175-179
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/15
    ジャーナル フリー
     体外式膜型人工肺 (extra‐corporeal membrane oxygenation, ECMO) とは, 血液を一度体外に導き (脱血), 血液に酸素を与え二酸化炭素を除去するというガス交換を人工肺にて行い, 再度血液を体内に戻す (送血) 装置である. ECMO自体が敗血症のリスク因子でもあり, 敗血症へのECMOは従来禁忌とされてきた. 敗血症におけるショックは血管トーヌスの低下に由来するもののみではなく, 敗血症性心筋症 (sepsis‐induced cardiomyopathy, SICM) と呼ばれる心原性ショックが併発している場合がある. SICMは可逆性の心筋症であり, 心機能の回復までの期間の全身の細胞レベルでの血液還流維持としてのECMOの活用は大いに期待される. しかしながら, ECMOは感染, 出血, 臥床といった問題点があり, 多臓器不全を合併する敗血症患者での施行には特に難渋する. 事実, これまでの敗血症に対するVA‐ECMOの治療成績は, 生存退院率が20%程度にすぎないという報告が多い. より細径でより血栓を形成しないカニュレやECMO回路の開発を医工学には期待したい. 医工連携によりSICMの予後改善の余地は大いにあると考える.
  • 橋田 知明, 渡邉 栄三, 中田 孝明
    2020 年 54 巻 4 号 p. 180-184
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/15
    ジャーナル フリー
     敗血症は, 感染症に対する制御不能な宿主反応に起因した生命を脅かす臓器障害, と新たに定義され, 臓器障害の進展を早期に発見・阻止することが重要視されている. そこで, 単なる臓器補助ではなく, 病態を制御する治療法として, サイトカイン吸着能を有する膜素材を用いた持続的血液濾過透析の有効性が報告されてきた. また敗血症において免疫麻痺の病態が注目されており, その治療戦略としても血液浄化法が報告されている. しかし, 吸着の原理による治療の有効性を示す質の高いエビデンスはいまだ存在せず, そのことは複数の敗血症診療ガイドラインでも指摘されている. そこで, 本邦で近年使用されているAN69ST膜を用いた血液浄化法は, 保険承認の観点からも吸着を企図した血液浄化法の臨床効果を検討するのに適している. また, 血液浄化膜への吸着の実態究明を目的とした基礎研究も行われ, 新規の敗血症関連物質も同定されている. 今後も, 敗血症に対する血液浄化法の有用性に関するエビデンスを積み重ねる必要がある.
  • 江口 豊, 田中 智基, 田畑 貴久
    2020 年 54 巻 4 号 p. 185-187
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/15
    ジャーナル フリー
     2010年5月から2015年3月までに敗血症性ショックに対してPMXを施行した43例をPMX施行継続時間で3群 (A群; 6時間までの6名, B群; 6‐12時間の10名, C群; 12時間以上の27名) に分類し比較検討した.敗血症の患者背景に各群間でAPACHEⅡスコアーに有意差が認められた (A群; 30, B群; 25.5, C群; 20, p=0.037). 施行継続時間の中央値は各群で4, 9.5および20時間で, CHDF併用は100%, 100%および92.5%あった. 90日後予後はA群で有意に死亡率が高値であった (A群; 83%, B群; 30%, C群; 33%, p=0.015). 死亡に関する多変量解析ではPMX施行継続時間が死亡率低下と独立して関連した(odd比0.835). 以上より, 敗血症性ショックに対しCHDF併用下でPMXを6時間以上施行継続することで予後の有意な改善が期待できる.
  • 藤枝 俊宣, 青木 伸峰
    2020 年 54 巻 4 号 p. 188-193
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/15
    ジャーナル フリー
     難治性皮膚潰瘍に代表される組織欠損に対して, iPS細胞, ES細胞, 間葉系幹細胞などの幹細胞を用いた細胞移植療法が検討されている. 移植用の幹細胞を迅速に患部に生着させるためには, 接着性と液性因子の透過性に優れる細胞移植基材の開発が重要である. 本研究では, 生体組織に対して密着可能な自己支持性高分子超薄膜 (ナノシート) に注目し, ナノシートを幹細胞の移植基材として用いることで皮膚全層欠損モデルマウスの治療を試みた. 具体的には, ポリマーブレンドと溶媒エッチング法にて多孔質ナノシートを調製し, この表面に脂肪組織由来幹細胞 (ASC) を担持することでASC担持ナノシートを得た. このASC担持ナノシートを積層化することで, 大量のASCを一度に創部へ移植できるようにした. さらに, db/dbマウスからなる皮膚全層欠損モデルマウスに対して, 積層化したASC担持ナノシートを移植したところ, 創部治癒能が示された. 創部に安定かつ迅速にASCを移植可能な多孔質ナノシートは難治性皮膚潰瘍治療への応用が期待される.
  • 田中 優砂光, 守本 祐司, 木下 学
    2020 年 54 巻 4 号 p. 194-197
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/15
    ジャーナル フリー
     整形外科領域における細菌感染症に対する新たな治療法の一つとして応用することを目指し, メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (methicillin‐resistant Staphylococcus aureus:以下MRSA) 関節炎マウスモデルに対する光線力学療法 (photodynamic therapy:以下PDT) の効果に関する検討を行った. 至適条件下におけるPDTは, 直接的な殺細菌効果のみならず, 感染局所に好中球を遊走・集積させる効果を発揮し感染を治癒に導いた. また, PDTを前処置として用いれば, その後のMRSA感染の増悪を抑制した. PDTは多剤耐性菌による難治性の化膿性関節炎をはじめ, 広く骨・関節領域における感染症の治療と予防のための新たな方法となることが期待される.
  • 萩沢 康介, 木下 学
    2020 年 54 巻 4 号 p. 198-200
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/15
    ジャーナル フリー
     ナノ絆創膏はあらゆる臓器や皮膚の表面に接着剤なしで強固に接着し, その薄さゆえに接着臓器と完全に一体化するため癒着を起こさない特徴を有する. 透明なため被覆した組織の感染などの状況を明瞭に把握でき, しかも被覆が不十分な時は重ね貼りができる利点がある. 臓器損傷の一例としてウサギの下大静脈を長軸方向に切開し致死性の大量出血を生じさせたが, ナノ絆創膏を貼ることによって全例止血救命に成功し, 慢性期において被覆治療部位に狭窄や瘤などの変形や癒着も認めなかった. ナノ絆創膏は, 貼付後にわずかに出血が残っていた場合でも重ね貼りをすることで完全に止血制御できることができ, 有用な創傷被覆材と考えられる.
臨床経験
  • 千葉 史子, 増本 幸二, 根本 悠里, 川見 明央, 佐々木 理人, 神保 教広, 新開 統子
    2020 年 54 巻 4 号 p. 201-205
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/15
    ジャーナル フリー
     小腸瘻患者に対し栄養素吸収効率の増加, 肛門側腸管の廃用性萎縮の防止, 肝機能障害の回避などの点から, 腸瘻口側腸管排液を回収し肛門側腸管へ注入する管理の有用性が指摘されている. しかしながら再還流を行うためには手間がかかることが問題点の一つとなっている. 今回われわれは, 腸瘻口側腸管排液を肛門側腸管に自動的に持続注入するシステムを考案し, 乳児から年長児の4例に応用することができたので報告する.
     本システムの概要は以下である. ストーマパウチからチューブを通してボトルに腸液を回収し, 肛門側腸管にはバルーンカテーテルなどを挿入しておく. ボトルの下部にチューブを接続し注入用ポンプを使用して肛門側腸管に腸液排液の自動注入を行う. 高位空腸の場合には三方活栓を用いて栄養剤の同時注入も可能である.
     本システムは管理が簡便かつ安定した持続注入が可能で, 腸瘻排液の注入管理において非常に有用であると考えられた.
  • 風間 義弘, 石川 史明, 山邊 志都子, 松島 祥子, 金子 まなぶ, 三島 明子, 清水 里紗, 桑原 麻樹, 樋口 晶, 菅野 恵子
    2020 年 54 巻 4 号 p. 206-210
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/15
    ジャーナル フリー
     NST介入の成果および予後不良因子との関連の検証を目的に, 当院にて2018年度にNST回診した患者138例を対象として解析した. 年齢, 性別, 疾患, NST介入までの日数, Prognostic nutritional index, NST介入回数, 転帰, 介入後の栄養評価, および介入前後の栄養ルート, 総エネルギー量, 蛋白量, 体重, 血清トランスサイレチン値(TTR), 血清アルブミン値, 総コレステロール値 (Tcho) , コリンエステラーゼ (ChE) , 中性脂肪, CRPを調査した. 介入前後で有意に改善した因子は総エネルギー量, 蛋白量, TTR, Tcho, CRPであった. 介入後の栄養評価で「悪化」または死亡退院の症例15例を「予後不良群」とし, 介入時の因子との関連を多変量解析施行したところ, NST介入までの日数, ChEが独立予後因子であった. 当院のNST活動は一定の効果は認めたが, NST介入までの質・期間が予後に対して重要であることが示唆された.
症例報告
  • 鍵谷 卓司, 木村 昭利, 岡野 健介, 澤野 武行, 大橋 大成, 加藤 雅志, 梅原 豊, 村田 暁彦, 高橋 賢一, 袴田 健一
    2020 年 54 巻 4 号 p. 211-215
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/15
    ジャーナル フリー
     幽門側胃切除術およびRoux‐en‐Y再建 (以下, R‐Yと略) 後に器質的狭窄がないにもかかわらず胃内容排出遅延が生じるRoux stasis syndrome (以下, RSSと略) では, 治療期間が長期にわたるため, 栄養障害への配慮が必要となる. 今回, Kangaroo™ W‐ED Tube (以下, W‐EDTと略) による保存的治療を行い, 栄養状態を保つことができた幽門側胃切除術後のRSSの3例を経験した. 症例1は76歳女性で, 幽門側胃切除術, R‐Yを施行し, 術後10日目にRSSを発症した. 症例2は47歳男性, 症例3は68歳女性でありいずれも術後8日目にRSSを発症した. いずれの症例もW‐EDTを留置し, 胃減圧と経腸栄養 (Enteral nutrition; 以下, ENと略) を行った. それぞれ, RSS発症後21日, 29日, 63日で経口摂取が再開できた. いずれの症例も, 退院前のControlling Nutritional Status (CONUT) スコアは2以下で推移しており, 栄養障害の増悪は認められなかった. 幽門側胃切除術後に生じたRSSに対して, W‐EDTは1つの鼻腔から胃内減圧とENを行うことで栄養状態を保つことができ, 長期治療において有用な治療であると考えられた.
あとがき・編集委員会名簿
feedback
Top