外科と代謝・栄養
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最新号
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特集「術後回復を促進させる術前環境の適正化」
  • 谷口 英喜
    2021 年 55 巻 5 号 p. 159-165
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/15
    ジャーナル フリー
     現在では, 手術手技および麻酔管理の技術が発達したことで, よりハイリスク患者への手術適応が拡大された. 周術期管理においては, これらの問題点を解決すべく術前環境の適正化 (Preoperative optimization) に重点が置かれるようになった. 2018年に改訂された待機的結腸直腸切除術に関するERAS (Enhanced recovery after surgery) ガイドライン第四版では, 患者の高齢化および手術の低侵襲化に対応した改訂が進められた. 中でも, 推奨項目であるPreoperative optimizationの項にMedical risk assessmentが新たに加えられた. また, 第四版からはじめてprehabilitationが推奨項目となった. 本特集ではPreoperative optimizationをテーマとして, 実臨床家たちにより自施設における取り組みを紹介していただき, 科学的根拠に基づいた解説を加えてもらう.
  • 延原 浩, 眞次 康弘, 伊藤 圭子
    2021 年 55 巻 5 号 p. 166-169
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/15
    ジャーナル フリー
     口腔内には, 歯周病という隠れた術前の遠隔部位感染が存在していることが多く, 感染源の治療やバイオフィルムの除去といった口腔管理 (歯科治療や口腔ケア) による術前口腔環境の適正化は, 術後合併症に対して予防効果を示す. 従来, 口腔管理といえば肺炎予防であったが, 最近, 消化器外科領域で最も多い合併症である手術部位感染 (Surgical site infection : 以下SSI) の発生率が口腔管理により有意に減少することが明らかになった. また, 術前術後に十分な口腔管理を実施することで, 術後麻痺性イレウスの減少効果も期待できることがわかってきた. 口腔管理による感染予防は, 抗菌薬による感染予防と異なり, 耐性菌や日和見感染の心配がまったくない安全で効果的な方法である. 今のところエビデンスが不十分なため, SSI予防ガイドラインや, enhanced recovery after surgery (ERAS) プログラムの中に, 口腔管理は記載されていないが, 今後, さらなるエビデンス集積が進められ, 周術期管理の重要な役割を果たすことが期待される.
  • 筧 慎吾, 若林 秀隆
    2021 年 55 巻 5 号 p. 170-174
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/15
    ジャーナル フリー
     術後回復を促進させる術前環境の適正化にあたり,術前から介入するプレハビリテーションの重要性は高まっている. ERAS®プロトコルのガイドラインでは手術部位により, 高く推奨されている. プレハビリテーションの効果は運動耐容能や呼吸機能,筋力を向上させ,術後合併症を軽減し入院期間を短縮することである. 構成は, 運動療法, 患者術前教育, 内科的治療, 禁煙・禁酒, 栄養療法などであり, 多職種でのマルチモーダルアプロ―チで介入する. 対象や開始時期は, 胸部・腹部・骨盤内手術患者で運動習慣がなく, 高齢やサルコペニア患者などを対象とし, 手術4週間以上前からの開始が推奨されている. 運動療法は, 中強度以上のレジスタンストレーニングや有酸素運動, 呼吸筋トレーニングであり, 併存疾患が多い高齢患者には, モニタリングと個別運動処方をする. 低栄養患者やサルコペニア患者には, リハ栄養を基準に運動療法と栄養療法を組み合わせることが重要である.
  • 小林 求
    2021 年 55 巻 5 号 p. 175-178
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/15
    ジャーナル フリー
     術前の喫煙・飲酒は周術期合併症を増やし, 死亡率を上昇させることが知られている. 術前の集中的な禁煙・禁酒プログラムは術後の重篤な合併症 (創傷治癒,心肺合併症, 感染症など) の発生率を有意に低下させる. しかし, 手術までの短い期間に効率的な介入を行うことは容易ではない. 周術期管理センターは術前から手術を受ける患者をサポートするが, 主な役割として術前評価と患者教育があげられる. 患者教育の中で, 周術期の禁煙・禁酒指導は重要である. 特に禁煙介入では, 看護師や薬剤師, 麻酔科医を中心としたカウンセリングと禁煙補助薬の併用に大きな効果が期待できる. また禁酒介入は, 出血や感染などの術後合併症だけでなく, 術後せん妄予防の観点からも注目されている. 多職種連携による術前の禁煙・禁酒介入により, 患者の全身状態を改善させ, 周術期合併症を減少させ, 安全な周術期環境を提供できる可能性がある.
  • 今浦 将治
    2021 年 55 巻 5 号 p. 179-184
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/15
    ジャーナル フリー
     医療技術の進歩は手術の低侵襲化を実現し, 高侵襲手術が困難な患者に対しても手術を可能にした. これにより, 高齢患者の手術件数は増加している. 一方で, 高齢患者は, 加齢に伴う臓器機能の低下, 併存疾患の存在, 栄養不良などから術後に予期せぬ合併症を発症することがある. そのため, 術前の呼吸機能訓練や栄養療法など, 手術に向けた準備が重要となる.まさに,本特集のテーマである「術前環境の適正化」が求められる.
     薬はどうか.高齢患者に限らず,さまざまな疾患を合併している患者は,服用している薬剤数も多くなり,周術期の適切な薬剤管理が求められる.抗血栓薬の術前休薬は,代表例である.これは手術を安全に行うために重要だが,不用意な休薬は血栓塞栓症を発症させるリスクを高めてしまう. β遮断薬の急な中断は反跳性高血圧, 虚血症状, 不整脈などの中断症状を引き起こすことがあり, 継続が望ましい. 術前に薬を休止するのか, 継続するのかは患者側と手術側のリスク・ベネフィットを考慮した判断が求められる.
  • 白石 としえ
    2021 年 55 巻 5 号 p. 185-189
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/15
    ジャーナル フリー
     肥満患者は日本においても身近な存在になってきた. 肥満患者の周術期管理において, ERASプロトコルの有効性が多く報告されるようになり, 特に肥満外科手術に特化したものをERABS (Enhanced Recovery after Bariatric Sugery) と呼んでいる. これは従来のERASプロトコルに術前減量という推奨項目が加えられているのが特徴である. 日本人は欧米人と比べて内臓脂肪優位な肥満となりやすく, これがメタボリック症候群の合併に大きく関与しているといわれ, 肥満度がそれほど高くなくても健康被害は深刻である. この内臓脂肪関連の合併症は, 肥満患者の周術期管理や手術手技の困難性を高めるものであり, 日本人の肥満特性に合わせた環境の適正化が求められる. 本稿では, 肥満患者のERABSプロトコルを紹介するとともに, 近年着目されている肥満による酸化ストレス増大とその後の代謝変化, また減量することで全身リスクが改善できる可能性についても述べる.
  • 松井 亮太
    2021 年 55 巻 5 号 p. 190-195
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/15
    ジャーナル フリー
     現在, 栄養療法は治療の一環と認識されている. 術前に重度の低栄養が併存する患者に適切な栄養介入を行わずに手術を行うと, 術後合併症が増加するだけでなく手術関連死亡が増加する. 術前低栄養を適切に診断するためには栄養スクリーニングを適切に行う必要があり, 低栄養と診断した場合にはその介入が引き続いて行われるべきである.
     また高侵襲手術を予定している場合や術前治療として化学療法や放射線療法が必要な患者には栄養療法を行う意義があることもこれまでの研究結果で明らかとなってきた. これらへの栄養療法の目的は, 術前治療による低栄養への進展予防と術後の過剰な炎症反応の軽減にある. また最近では筋肉量や内臓脂肪量など体組成も栄養評価法の一部として焦点が当てられ, これらが術後成績に与える影響は大きいため,今後は術前介入の基準とされることが予想される.
     今回,術前栄養療法の対象と栄養介入の内容および投与期間について概説する.
  • 柴田 正幸
    2021 年 55 巻 5 号 p. 196-200
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/15
    ジャーナル フリー
     手術患者の高齢化やそれに関連したフレイル患者の増加,医療の高度化などに伴い, 術前環境の適正化の重要性が注目されている. その実現の場として, 周術期センターは非常に有用な組織であり, これをうまく活用することで効率的で効果のある術前支援をはじめとした周術期管理が可能になる. 周術期センターでは医師, 看護師のほか, 薬剤師, 理学療法士, 管理栄養士, 歯科衛生士などの多職種により, 内服薬の管理, 禁煙指導, 術前栄養指導, 術前呼吸訓練をはじめとした術前リハビリテーション, 口腔管理,看護師面談, そして麻酔科術前診察などが実施され, 術前環境の適正化を目指す. また, 医師の働き方改革が至上命題となっている今日, 周術期センターはこれまで医師が中心となって行っていた周術期管理の多くをメディカルスタッフとの間でのタスクシフトが可能となるため, この点からも将来有望である.
     本稿では, 実際にわれわれの施設で実施している内容も踏まえ, 周術期センターによる術前環境の適正化の概要を説明する.
総説
  • 海道 利実
    2021 年 55 巻 5 号 p. 201-208
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/15
    ジャーナル フリー
     肝胆膵移植外科においては, 手術患者の高齢化による一次性サルコペニア患者の増加に加え, 術前低栄養や担がん状態, 手術侵襲, 術後臥床による活動性の低下など, 二次性サルコペニアを有することが多く, サルコペニアは重要な意義を有する. われわれは, 肝がんや胆道がん, 膵がんに対する手術や肝移植手術において, 術前サルコペニアや体組成異常が予後不良因子であることを明らかにした. 特に肝移植においては, 術前体組成因子に基づく移植適応や積極的な周術期リハビリ栄養療法の導入により, 京都大学では移植後1年生存率99%ときわめて良好な成績となった. したがって, 従来の術前栄養評価に加え, 筋肉量や質, 内臓脂肪などの体組成評価や握力測定は, 患者の全身状態や耐術能, 予後を正確に評価するためにきわめて有用である. 今後, 肝胆膵移植外科において, サルコペニアや体組成異常をターゲットとしたテーラーメイド型リハビリ栄養介入が予後向上のブレークスルーとなるであろう.
  • 金森 豊
    2021 年 55 巻 5 号 p. 209-217
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/15
    ジャーナル フリー
     腸内細菌叢やプロバイオティクスの研究はあたらしい研究分野である.最近では腸内細菌の研究は細菌培養法から細菌遺伝子解析法にとってかわられ,この方法による研究成果が多く報告されている.
     われわれは1997年から,新規にシンバイオティクス療法を新生児外科疾患患児に対して開始した.生後早期の腸内細菌叢コントロールは患児の腸管内環境を制御し,重症感染症の予防と栄養状態の改善・維持を得ることができることを示した.
     最近では腸内細菌叢をコントロールする方法として,FMT(fecal microbiota transplantation)や細菌カクテルによる方法論が注目されている.
     腸内細菌叢を生後早期からコントロールするためには生後早期に最優勢となるビフィズス菌が重要であり,最近では複数のビフィズス菌による腸内環境維持機構が示唆されている.今後はこのような観点からの新しいビフィズス菌カクテルによるプロバイオティクス開発が新生児外科疾患の管理に有用であると思われる.
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