メコンデルタには硫酸酸性土壌や塩類土壌が広く分布する.土壌の化学性の改良の際には,物理性の劣化を最小限にすることも重要である.また,メコンデルタの土壌団粒については,よくわかっていない.そこで本研究では, 塩性 Na 土(SS,pH= 5.5),硫酸酸性土 (ASS,pH= 2.7) と沖積土(AS,pH= 4.6)に卵殻(CaCO3 の代替)ならびに鶏ふん堆肥(以下鶏ふん)を施用した後,土壌 pH と団粒安定性の変化を調べた.培養は,土壌と鶏ふん,卵殻を混合した後,室温 25 ◦C の下,圃場容水量で適宜換気,CO2測定をしながら 45 日間実施した.団粒安定性評価は予め行った団粒安定性試験を参考に培養後の土壌から 2 ∼ 5 mm サイズの風乾試料を調製し,これを急速に漬水した後の平均重量直径で行った.CO2 発生量から,鶏ふん施用 SS,AS では,鶏ふんの分解が示唆されたが,ASS ではほとんど分解しなかった.鶏ふん · 卵殻混合物施用の場合,ASS では,初期に卵殻の炭酸 Ca の反応,その後は鶏ふん等有機物の分解が,SS と AS ではいずれも鶏ふん等有機物の分解が CO2 発生の主因であると考えられた.鶏ふんは,施用量に応じて SS と AS の pH を改善したが ASS では pH 改善効果がなかった.鶏ふん · 卵殻混合物を施用すると ASS において卵殻のみの場合よりも有意に pH が上昇し,有機物の分解も pH 改善に寄与していることが示唆された.鶏ふんならびに鶏ふん · 卵殻混合物の施用後,団粒安定性が向上した.特に pH が非常に低い ASS において,卵殻の炭酸 Ca による pH 上昇が鶏ふん等有機物分解による,団粒安定性向上促進に寄与したと考えられる.
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