日本ストーマリハビリテーション学会誌
Online ISSN : 2436-8806
Print ISSN : 0916-6440
5 巻, 1 号
通巻9号
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表紙・目次
原著
  • 穴沢 貞夫, 石田 秀世, 桜井 健司
    1989 年 5 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 1989年
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル フリー
     皮膚保護剤の開発によりストーマ管理における皮膚管理は著しい進歩をとげた。今や皮膚保護剤と粘着パウチによる管理がストーマの種類,時期にかかわらず自然排便排尿法の標準的方法となっている。しかし皮膚保護剤はその実際的な応用面のみが先行し,ストーマの皮膚管理が基本的にかかえる問題点,特殊性についての理解がなおざりにされきたるきらいがある。皮膚保護剤を含めた粘着性装着具に関連する皮膚管理の基礎理解のためには,絆創脅カブレ(粘着テープ皮膚障害)と創被覆法(ドレッシング法)の理解が不可欠である。本稿ではこの2ツの観点からストーマの皮膚管理が抱える特殊性と皮膚保護剤の役割について述べる。
  • 島端 久美子, 水口 志賀子, 安田 智美, 安部 紀子, 加藤 尚子, 佐竹 純子, 江川 アツ子, 田沢 賢次, 笠木 徳三
    1989 年 5 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 1989年
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル フリー
     外科手術後の切開創,褥創,放射線皮膚障害に対し,創傷治癒促進をはかるため,皮膚保護剤のコンフィールシートを貼用した。貼用した27名の患者において,痂皮が容易に除去され,創傷状態の治癒が促進したと考えられる症例が13名認められた。4名に軽度の発赤を認め,むれ,痒みを訴えた症例も4名であった。
     ケロイド形成においても改善傾向を認め,患者の愁訴も軽減し,コンフィールシート使用による皮膚障害も認められなかった。
     コンフィールシートの貼用は有効であると考えられた。
  • 沖倉 元治
    1989 年 5 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 1989年
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル フリー
     ウェファ形式のSkin Barrier製品について医工学的立場から,現状と将来について総合的な報告を行った。
    1)現在のSkin Barrier商品を形態の上から説明した。
    2)現在のSkin Barrier商品に対し,糊剤を構成する代表的成分から4つのグループに分けられること,さらに,糊剤の配合設計から2つに分類でき,それをさらに小分類すると5種に成ることを説明し,そのような技術的分類法を提起した。
    3)糊剤を構成する4グループの種類と使用目的を述べた。
    4)糊剤の配合設計における基本の考え方を示した。
    5)Skin Barrierに関する2,3の近時指向について紹介した。
  • 吉川 隆造, 五十嵐 正利, 田沢 賢次
    1989 年 5 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 1989年
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル フリー
     5種類の市販皮膚保護剤について,貼付中に起る物理的剌激と剝離時の物理的剌激を比較検討した。12人の健常成人男子に対し,48時間ずつ連続して3回の貼付を行い,その都度剝離力を測定し,皮膚状態の変化を観察して,次の結果を得た。
    1. 同一皮膚保護剤であっても剝離力の被検者による差は大きく,発汗量,体重/身長比に関係する傾向がみられた。
    2. 貼付回数と共に剝離力は増大する。
    3. 2種類のCMC系皮膚保護剤は,貼付中周辺部が硬化し,10例に紅斑が観察された。
    4. 1種類のCMC系皮膚保護剤は,すべての被検者において剝離力が最大であった。
  • 髙屋 通子
    1989 年 5 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 1989年
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル フリー
     人工肛門用装具に用いられる粘着剤を,長期間同一部位に使用した場合の皮膚に及ぼす影響について検討した。
     人工肛門保有者を対象に,CMC系(A),アクリル系を塩化ビニールに貼付したもの(B),アクリル系を和紙に貼付したもの(C),カラヤ(D)使用の群に分けて,皮膚角質層の水分量,皮表脂質量を測定した。
     A,B,Dの皮表構築について,レプリカを作製し検討した。
     結果:角質水分量(単位:Relative Conductivity):1年後,A6.8,B7.2,C5.1,D31.3;5年後,A11.6,B4.1,C5.5,D18.7;8年後,A10.6,10年後;B7.5,D15.0であった。
     皮表脂質量(単位:µg/㎠):1年後,A2.2,B6.0,D1.3;5年後,A0.3,BO,D1.3;10年後,B1.0,D4.3であった。
     皮表構築は,8年後,A,B,Dともに皮溝が一方向に流れる所見が得られた。
  • 徳永 恵子, 今城 眞人, 岩間 毅夫, 三島 好雄
    1989 年 5 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 1989年
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル フリー
     コロストーマ15例,イレオストーマ13例で皮膚保護剤の安全な耐久性を知る目的で,ストーマ周辺のpH測定を実施した。測定部位は,
     ①ストーマ外部粘膜,②ストーマ内部粘膜,③ストーマ内部便,④ストーマ辺縁皮膚,⑤ストーマ周囲皮膚,⑥皮膚保護剤軟化部,⑦尿とした。
     ②,③,⑥,⑦の4カ所において,コロストーマとイレオストーマの間に有意差のある結果が得られた。各部位における測定pH値からは,皮膚保護剤の持つ緩衝作用が証明された。ストーマ辺縁皮膚と皮膚保護剤軟化部のpH測定は,皮膚保護剤の有効な装着期間を知るために応用可能であることが示唆された。
  • 田沢 賢次, 笠木 徳三, 勝山 新弥, 山本 克弥, 新井 英樹, 島田 一郎, 竹森 繁, 藤巻 雅夫, 松本 生子, 水口 志賀子, ...
    1989 年 5 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 1989年
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル フリー
     ストーマ造設患者もしくは消化管瘻孔患者19名の皮膚pHを測定した。堀場M-8s,富士化学計測1304GC電極を用いた。前胸部,腹壁の健常皮膚はpH4.71から6.93に分布した。
     ストーマ周囲の潰瘍創は6.95±0.39,ビラン部は6.05±0.92,便の残っている皮膚は7.94±0.77である。皮膚保護剤であるカラヤ系9種類のpH値の平均値は4.72(最小値平均)から4.81(最大値平均),14種類の合成ゴム系のそれは5.30から5.36に分布した(P<0.01)。
     ストーマ周囲で溶解した場合の皮膚保護剤ではカラヤ系に優れた緩衝能力を認めた。石鹸類はpH9から10に分布し,石鹸使用時のpH回復推移から十分に洗浄する必要がある。
     皮膚保護剤の使用がストーマ周囲皮膚を弱酸性に補強するため合目的に作用していることを明らかにした。
  • 穴沢 貞夫, 尹 太明, 大塚 正彦, 片山 隆市, 石田 秀世, 桜井 健司, 沖倉 元治
    1989 年 5 巻 1 号 p. 46-52
    発行日: 1989年
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル フリー
     皮膚保護剤使用例のストーマ周囲皮膚状況と皮膚保護剤粘着特性を検討した結果,保護剤の慢性障害はCMC系に高く,混合,カラヤ系で低かった。粘着特性はCMC,混合系は高粘着性,,カラヤ系は低粘着性を示した。これらより以下のことが推論される 1)CMC系では高粘着性による物理損傷と修復が高頻度で繰り返されているのではないか。2)高粘着性の混合系の皮膚障害発生率が低いのは,CMCにはなく混合系には存在するカラヤカムが損傷治癒を促進しているのではないか。
     カラヤガムはストーマ装具としては物性的な欠点があるが,極めて優れた皮膚保護作用とともに,ドレッシング材としても優れた特性を持つ。今後の保護剤開発は,カラヤを中心とした配合設計の工夫か,あるいはカラヤを越える親水ポリマーを見出すかの両面からの取り組みが必要である。
  • 和志田 裕人, 渡辺 秀輝, 野口 幸啓, 佐々木 昌一, 堀 武, 中村 まさ子, 河合 俊乃, 岩井 令子, 松原 智子
    1989 年 5 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 1989年
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル フリー
     現在のところウロストーマケアの方法についてはいろいろと検討されているが,ストーマ周辺の皮膚の変化について詳しく検討された論文は少ないと思われる。われわれは8例の回結腸導管術後ウロストーマ(装具使用期間は4~82ヶ月),8例の尿管皮膚瘻術後ウロストーマ(装具使用期間は1~85ヶ月)およびその周辺の皮膚変化について病理組織学的検討をおこなった。
     その結果,ウロストーマ周辺の皮膚は術後12ヶ月ぐらいまでは著しい変化はみられないが,それ以後では表皮には角質化,肥厚,網状突起の延長や偏平,メラニン色素沈着が,真皮には炎症細胞浸潤,浮腫が認められた。原因としては尿が皮膚に接触することによる急性・慢性炎症と考えられ,よりよいスキンケアには尿を皮膚に接触させない事であり,この目的に合う装具の必要性を痛感させられた。
  • 大村 裕子, 穴沢 貞夫
    1989 年 5 巻 1 号 p. 59-62
    発行日: 1989年
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル フリー
     皮膚保護剤の問題点を明らかにするために,各種皮膚保護剤による皮膚管理状況を193例の左結腸ストーマ患者で検討した。皮膚障害率はCMC系と混合系に高く,カラヤ系に低かった。皮膚障害の原因別には,CMC系は皮膚保護剤剌激によるものが高く,便漏れ刺激は低かったが,混合系では反対に前者が低く後者が高かった。カラヤ系は両者とも低かった。皮膚保護剤剌激による皮膚障害を検討すると,アレルギー反応の頻度は低かった。皮膚保護剤下の皮膚変化と皮膚保護剤の粘着性から,各種皮膚保護剤による障害の原因を検討すると,機械的剌激によると思われる障害が多く関与しているのではないかと推測されるが,一次剌激もまた障害発生因子として重要と思われる。
地方会抄録(地域研究会記録)
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