本稿は, 定番解釈に内在する不整合を解く読みは可能なのかという課題に取り組むことによって, 文学教材「とんかつ」(三浦哲郎)の謎解き読みを提出している。「とんかつ」最終局面の本文(表1)の文章㋘について, 6社の指導資料をはじめとする「とんかつ」研究において,【直太郎は雲水としてとんかつを頂いた】(解釈Ⅰ)と読んでいる。その定番解釈は文章㋔の「すっかり」「見違えるような」と不整合(謎)となる。それは【直太郎は雲水としてとんかつを頂いていない】(解釈Ⅱ)と読めば整合となる。解釈Ⅱは佐野(2016)によって示唆されているが, それが成立するように特に最終局面の文章㋐~㋘は作られているのか問われていない。この作業を踏まえて本稿は解釈Ⅱを提出して, さらに直太郎の成長と女主人の心遣いをめぐる主題も, 解釈Ⅰに基づく主題Ⅰを塗り替えられている。
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