LB膜を絶縁層としたMIM素子において新規なスイッチングメモリー現象が見いだされた。導電性の小さいOFF状態と大きいON状態間の規則的な再現性良いスイッチングであり, 各状態はしきい値電圧以下で安定なメモリー性を示す。このスイッチング過程には中間状態が現れ, ダイナミックな電流電圧特性は電圧の極性に対して非対称である。またOFFおよびON状態の素子抵抗は明確なLB膜膜厚依存性を示し, さらにスイッチング発現に対してLB膜材料依存性が観察された。
フォーミング過程が観察された。フォーミング前後で電導機構は異なり, LB膜はフォーミングにより絶縁体的な電導から, 半導体的な電導を示すようになる。その結果, 電圧制御型負性抵抗特性が現れ, さらに極めて高い電界がMIM接合部全域にわたって印加されて, 均一な電子放出が観察された。
従来, MIM素子の電導機構が, 多くの場合絶縁層中に生じた局所的な電導経路によって支配されているとして説明されてきたのに対し, 我々のLB-MIM素子ではLB膜自身の物性に依ってその電導機構が支配されていることを示しており, 観察された現象がLB膜構成分子の状態変化に伴うLB膜本来の導電特性の変化に基づくものであることを示唆している。
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