表面科学
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11 巻, 5 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 笠井 秀明
    1990 年 11 巻 5 号 p. 274-280
    発行日: 1990/06/20
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    100eV程度のエネルギーをもつ電子を固体表面に入射すると, 表面に化学吸着している原子や分子(吸着子)は電子的に励起され, 表面から脱離してくる。この現象は電子励起(刺激)脱離として良く知られており, 脱離してくるイオンの運動エネルギー分布や角度分布の測定によって, 表面における吸着子の局所的な構造や電子状態に関する情報を得ることができる。ところが, イオン化された吸着子は表面からの脱離過程で表面電子系との相互作用によって高い確率で中性化され, 場合によっては再び表面に捕らえられたり, 中性粒子として脱離してきたりするため, イオン化された吸着子がイオン状態のまま脱離してくる確率Pはかなり小さくなる。このことが固体表面での電子励起の場合と気相での電子励起の場合との違いであり, 確率Pの小さな値にも, 脱離してくるイオンの運動エネルギー分布や角度分布と同様に, 表面における吸着子の局所的な構造や電子状態が強く反映されていると考えられる。そこで, ここでは遷移金属たとえばタングステン表面に原子状態で吸着している水素を例にとって, 電子励起による脱離過程のダイナミックスを中心にして, イオンの脱離断面積に含まれるescape probability, P, をミクロな立場から解析した結果について報告する。
  • 黒澤 宏, 瀧川 靖雄, 佐々木 亘
    1990 年 11 巻 5 号 p. 281-288
    発行日: 1990/06/20
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    真空紫外域における高出力コヒーレント光源である希ガスエキシマレーザーを非晶質石英と結晶石英に照射した時, 石英のバンドギャップエネルギーを越える9.8eVのフォトンエネルギーを持つアルゴンエキシマレーザーの場合には, 石英表面から多量の酸素が脱離し, シリコンの析出が見られる。一方, 石英のバンドギャップエネルギーより低い8.5eVのフォトンエネルギーしか持たないクリプトンエキシマレーザーの場合には, この様な現象は見られない。これはアルゴンエキシマレーザーによって生成される励起子が酸素脱離の基礎過程であることを示している。本稿では, 電子ビーム励起希ガスエキシマレーザーについて簡単に紹介した後, 石英における照射効果について述べる。さらに, 紫外域希ガスハライドエキシマレーザーを照射した時の石英における欠陥形成に関する研究についても述べ, 上記の結果と比較検討する。
  • 高木 隆司
    1990 年 11 巻 5 号 p. 289-294
    発行日: 1990/06/20
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    液体界面に働く界面張力は, 流体の巨視的な運動に大きな影響を与える。特に, 運動の代表的なスケールが小さい場合, 界面張力の影響は顕著である。さらに, 界面張力係数が温度や液体に溶けている溶質の濃度に依存する場合, 液体は特異な挙動を示す。例えば, 界面張力波の強い減衰, 液滴の自発的な移動, 液滴の重力による落下速度に対する補正, マランゴーニ効果と呼ばれる対流の励起, 界面の波動の励起, 液滴の自励振動などがある。本論では, まず, 界面張力に関する一般的な公式を説明し, 次に, 上記の特異な挙動について説明する。ただし, 界面張力が一定の場合にも起きる特異な現象として, 円柱状の液体が液滴の列に分断される現象も述べることにする。これらの現象は, 流体力学の基礎方程式, 界面での境界条件, および界面張力係数の変動を与える補助の式で解析される。しかし, ここでは, その数学的な手続きは省略し, 結果を定性的に述べることにする。
  • 管野 善則, 今井 久雄
    1990 年 11 巻 5 号 p. 295-301
    発行日: 1990/06/20
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    NOxの解媒を用いた除去法について簡単にふれ, オゾン層破壊やグリーンハウス効果を引き起こし, 自動車の排ガス処理用三元触媒コンバーター(TWC)内で発生するN2Oについて記した。N2OはNOの不均化反応(4NO→N2O+N2O3)によって生じることを指摘し, 種々のY型ゼオライトやアルカリ土類酸化物の触媒活性サイトの特性について説明した。さらに, NOの還元反応や吸収について不均化反応の観点から再検討した。
  • SAMデータを主として
    西守 克己, 徳高 平蔵, 石原 永伯, 渡部 靖彦, 岸田 悟
    1990 年 11 巻 5 号 p. 302-309
    発行日: 1990/06/20
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    An image processing system using a microcomputer was introduced to a scanning electron microscope (SEM) and scanning Auger electron microscope (SAM) apparatus. This system was constructed more compactly and inexpensively than using a commercial image processing system. Noise reduction and feature extraction were achieved by using this system in processing the SAM image of several small areas of Au deposited on a Cu substrate. A bird's eye view mapping was also useful for enhancing the density distribution of the Au deposits. In addition, in order to obtain the true SAM images, we developed an image subtraction method which uses the values of peak-to-peak intensities of Auger dN (E)/dE signals.
  • 吉武 道子, 吉原 一紘
    1990 年 11 巻 5 号 p. 310-315
    発行日: 1990/06/20
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    Sulfur is the most surface active segregant on the surface of Fe (100) and replaces other segregants. The mechanism of the replacement of segregant from oxygen to sulfur on the surface of Fe (100) was investigated by angle-resolved XPS.
    It was observed that the bonding between iron and segregated oxygen was ionic, on the other hand, the bonding between iron and segregated sulfur was covalent. When only oxygen segregated, the binding energy of O 1 s was 529.8 eV. As sulfur segregated, the XPS spectrum of O 1 s had two peaks ; one of them was at 529.8 eV described above, the other was at about 531 eV. The peak at about 531 eV corresponded to oxygen of non-ionic bonding state and had the strongest intensity at the lowest exit angle. The binding energy of S 2 p was the same whether oxygen existed or not. It suggests that the binding state of sulfur to iron was not affected by the existence of oxygen. Therefore, the bond between oxygen and iron was broken by sulfur segregation and sulfur segregation caused the disappearance of oxygen from the surface.
  • 原 民夫
    1990 年 11 巻 5 号 p. 316-319
    発行日: 1990/06/20
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    短パルス大出力レーザーの進歩と共に, レーザー生成プラズマを用いたX線レーザーの研究において急速な進展が見られる。X線レーザーの実用化のためには, 励起の効率を大幅に改善して, 少なくとも普通の実験室に納まるほど小型の軟X線レーザー装置を開発することが重要である。現在研究されている主な反転分布生成法は, 電子衝突励起法と再結合プラズマ法の2つである。電子衝突励起法に比べ, 再結合プラズマ法はより少ない入力エネルギーで済むだけでなく, プラズマの電子温度を効果的に冷却することにより, X線レーザーの効率を飛躍的に向上出来ることが期待される。理化学研究所は, 再結合プラズマ法を用いてテーブルトップレーザーによる励起の下で軟X線の自然光増幅実験に成功した。光子と物質との相互作用がきわめて強い軟X線の良質なレーザーが実現されれば, 多くの新しい応用が期待される。
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