表面科学
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11 巻, 7 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 吉田 郷弘
    1990 年 11 巻 7 号 p. 390-397
    発行日: 1990/08/20
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    石油化学工業で主要な触媒の一つであるアルミノシリケートの固体酸性質についての分子軌道法による研究の現状を紹介した。まず固体表面をクラスター分子でモデル化することの妥当性について述べ, 分子軌道計算を行うに当っての問題点を概説した後, 表面酸点はSiとAl原子を架橋しているOH基であり, その局所構造はシリカ中のSi原子をAlで同型置換したものでなく, Al-O結合はSi-O結合よりかなり長いことを示した。次に, この架橋OH基が強酸性を示す原因について, これまで提案されている説を紹介し, その中で電子移行相互作用が本質であるとの説を詳しく述べた。この説に従うと, 3配位のSiの存在が許されれば超強酸を生じる可能性があるが, この3配位のSiの安定性について考察した。最後に, 炭化水素変換反応の中間体とされているカルベニウムイオンの実在性に疑問を投げかけた研究を紹介した。
  • 相澤 俊
    1990 年 11 巻 7 号 p. 398-405
    発行日: 1990/08/20
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    これまで, Ni等の遷移金属上にある条件で単原子層のグラファイトを形成することができることは比較的よく知られていた。しかし, その性質についてバルクグラファイトときちんと対応させて検討した研究は非常に少なかった。最近, 高分解能電子エネルギー損失分光法を用いて単原子層グラファイトのフォノン分散を測定することが可能になり, この超薄膜グラファイトの, バルクグラファイトからの違いが明らかになってきた。単原子層グラファイトにおいては, π結合が関与していると思われる力定数が著しく弱くなっており, これはおそらく下地からの電荷移動によるものだと考えられる。本解説ではこのフォノン分散についての結果を中心に, 単原子層グラファイトの応用の可能性についても述べる。
  • 渡辺 徹
    1990 年 11 巻 7 号 p. 406-411
    発行日: 1990/08/20
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    めっき膜の結晶学的構造はめっきをするたびに変化し, 再現性に乏しく, 構造を制御することは極めて困難であると考えられてきた。しかし, 最近著者はめっき膜の断面構造を透過型電子顕微鏡によって観察しているが, それによるとめっき膜はめっき中に様々な理由で組成が変化し, それに伴なって構造が変化し, 厚さ方向に層構造を形成していることが明らかとなった。このような層構造をとっているにもかかわらず, めっき膜の構造解析のために表面に垂直方向にビームを入射させてX線回折し, 膜構造を同定しようとすれば, 情報は混乱するのは当然である。膜の構造を正確に知るには, 膜の断面構造を透過電子顕微鏡によって観察および分析することが不可欠であると考える。
    本解説では種々のめっき膜の断面構造の実際の写真を紹介するとともに, その構造の形成原因について考察し, さらに断面構造の観察方法についても言及する。
  • 稲葉 章, 千原 秀昭
    1990 年 11 巻 7 号 p. 412-417
    発行日: 1990/08/20
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    簡単な分子がグラファイト表面に物理吸着してつくる単分子膜の, 熱力学的性質を調べる目的で熱容量測定を行った。用いた実験手法の詳細に加え, 得られた結果をいくつか示す。クリプトンについては, 吸着膜の格子振動についての知見が得られた。窒素については, 熱力学の第3法則の検証を行った。一酸化炭素では, 固体でみられなかった新しい相転移が見いだされた。メタンについては, 吸着分子の量子力学的トンネル回転に伴うエネルギー準位が決定できた。
  • 大岩 烈, 田中 彰博, 岩井 秀夫
    1990 年 11 巻 7 号 p. 418-425
    発行日: 1990/08/20
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    最近のAES, XPSによる表面の分析評価技術の進歩は著しく, 得られる情報の信頼度も高い。一方, これらの表面分析技術は薄膜を評価する目的で, スパッタイオン銃と組み合わせて, 元素の深さ方向分析法として一般的に利用され, 膜厚や界面における情報が得られる。しかし, イオンと試料表面における相互作用は複雑で得られる情報の信頼度は表面を評価する場合ほどは高くない。
    最近, 深さ方向分析の信頼性を向上する目的でいくつかの改善が試みられている。ここではそのような例を紹介する。
  • 梶田 勉
    1990 年 11 巻 7 号 p. 426-431
    発行日: 1990/08/20
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    Calcium tripolyphosphate films have been formed on steel electrodes by polarizing them slightly cathodically in a dilute aqueous solution containing Ca (NO3) 2 and Na5P3O10.
    When the solutions were adjusted to pH near the point where calcium tripolyphosphate was precipitated, they were supersaturated with calcium tripolyphosphate. Supersaturation was maintained during the film formation. It was found that the electrodeposition rate of calcium tripolyphosphate were determined by the degree of supersaturation and current density.
    The degree of supersaturation which depends on the concentration of the reagents, pH and the temperature, influence on the electrodeposition rate to a greater extent than current density. The film thus can be formed from dilute aqueous solutions and at the very low current density.
  • 林 泰夫, 佐藤 一夫, 松本 潔
    1990 年 11 巻 7 号 p. 432-435
    発行日: 1990/08/20
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    Transparent conductive F doped SnO2 films used for the electrode of amorphous Si solar cells were investigated in regard to their durability against hydrogen plasma. In general, both transparency and conductivity of SnO2 films are deteriorated with exposure to hydrogen plasma. However, it was found that the conductivity can be improved at the initial stage of the exposure mainly due to the change in electron mobility. The increase in mobility is explained in terms of reduction of the barrier potential due to termination of the dangling bonds with hydrogen atoms at the grain boundaries. The results obtained from SIMS, XPS, Auger microprobe analyses are described in detail.
  • 徳高 平蔵, 石原 永伯, 西守 克己, 岸田 悟, 高淵 拓栄
    1990 年 11 巻 7 号 p. 436-441
    発行日: 1990/08/20
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    Three background curves based on, (a) linear, (b) the Shirley's and (c) the Tougaard's methods were examined. The Tougaard method generates the best background curve, resulting in the nicely extracted XPS peaks.
  • 石塚 和彦
    1990 年 11 巻 7 号 p. 442-448
    発行日: 1990/08/20
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    かつて, FEMで観察された銅フタロシアニンの四つ葉状の明るいスポットが分子の形を映すものとして注目され, BaやCsの吸着のさいに見える円形のスポットが原子像であると考えられたが, 決定的な証拠がなく論争の的となっていた。しかし, 間もなくイオン顕微鏡が華々しく登場してこの論争が立ち消えになっていた。
    最近, われわれは, Tiの吸着で生じたRe (1010) 面やW (112) 面上の明るいスポットを観察し, 個々のスポットがこの結晶面の構造 (一つ置きに原子列の畝と溝が並んでいる) を反映して, 溝に沿う方向に運動しながらこれを横切って直線状のクラスターになることを見いだした。特に, Re (1010) 面では1個のスポットの移動が観察され, 典型的な一次元の酔歩運動であることが分かった。このようなスポットの動的な挙動はFEMで初めて観察されたもので, FIMの観測結果と驚くほど類似し, スポットの実体が原子であることを端的に示している。
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